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主要国の経常収支(対GDP比)の推移【①先進国】

こちらのページでは「主要先進国の経常収支(対GDP比)の推移」を掲載しています。

金融マーケットにおいて、特に為替レートを説明する際に経常収支に触れることが多くあります。

一般的には経常赤字の国の通貨は弱くなりやすいと言われています。

何となく理解していましたが、実際にはどうなのか確認したいと思い調べてみました。

イメージと違うケースもあり、一度見ておく価値はあると思います。

最初に「経常収支」の内訳について解説します。

経常収支の内訳

経常収支の内訳は①貿易収支、②サービス収支、③第一次所得収支、④第二次所得収支です。

  • 貿易収支:輸出と輸入の差額
  • サービス収支:モノ以外のサービス貿易の収支(特許料、海外旅行)
  • 第一所得収支:2013年までは所得収支と呼ばれており、海外に保有する資産から生じる利子・配当の収支
  • 第二所得収支:2013年までは経常移転収支と呼ばれており、海外への援助等

経常収支の内訳についての詳細はこちらも参照してください。(特に国際収支の内訳について分かりやすく記載しています)

2014年に国際収支の内訳が大幅に変更となっています。

ちなみに余談ですが、経常収支が恒常的に赤字の国は、国際収支上、その裏側である金融収支がプラスになります。つまり海外から直接投資や証券投資などを呼び込んで経常収支のマイナスを埋めることになります。

それでは下記に先進国の経常収支(対GDP比)の推移とポイントを掲載します。(ポイントは箇条書きで記載しています)

米国・イギリス・スイスの経常収支(対GDP比)の推移

経常収支対GDP比(米国・イギリス・スイス)

  • 米国イギリスは恒常的に経常収支が赤字となっている
  • 両国は特徴が似ており、サービス収支と第一次所得収支はプラスであるが、貿易収支が大きくマイナスとなっていることから経常収支が赤字となっている
  • また、上記のチャートにはないが1980年代半ばに経常黒字であった事も共通している。当時も貿易収支は赤字であったが、海外資産がもたらす所得(第一次所得収支)で埋め合わせができていた事で黒字となっていた。近年はそれができなくなっている。
  • 1980年代~1990年代は米国の対日貿易赤字が大きな問題となり、プラザ合意による円高誘導などが行われたが、現在では米国の貿易赤字の大半は対中国によるもので、対日貿易赤字は全体の10%程度まで低下している。米国の貿易赤字の推移はこちらを参照:米国の貿易赤字 長期推移(対中国・対日本・対メキシコ)
  • スイスは恒常的に経常収支がプラスとなっている。貿易収支は90年代は赤字が続いていたが、2000年頃に黒字転換し、その後右肩上がりで黒字額が増加しており、高水準の経常黒字を維持する要因となっている。

ユーロ圈主要国【ドイツ・フランス・イタリア・スペイン】の経常収支(対GDP比)の推移

経常収支対GDP比(ドイツ・フランス・イタリア・スペイン)

  • ドイツは2001年以降、恒常的に大幅な経常黒字が続いている。
  • 現在では一人勝ちとも言われるドイツも1990年の東西ドイツ統一後は大きく混乱し、財政悪化・高インフレ・高失業率により生産性や国際競争力が低下した。経常収支も1990年代前半〜2000年までは赤字が続いた。
  • 1999年の単一通貨ユーロ導入が転機になり、ユーロ圏への輸出拡大から経常収支は黒字化した。国内経済も安定し2000年代・2010年代の高成長につながった。
  • フランスは1992年〜2004年までは経常黒字であったが、2005年以降、経常赤字が続いている。(バラつきは少ないが、若干の経常赤字が継続している)
  • イタリアスペインは経常赤字が長く続いていたが近年黒字化した
  • イタリアは2010年代前半に財政再建のための景気抑制策を行ったことで輸入が減少。これにより貿易収支が改善したことが経常黒字に転換した大きな要因である。
  • スペインの経常収支の内訳をみると恒常的にサービス収支は大幅な黒字で、それ以外は赤字となっているが近年は貿易赤字が縮小したことで、経常収支が黒字化している。
  • ただし、スペインの貿易赤字が縮小したのはイタリアのような輸入減少ではなく、輸出が増加したことが要因となっている。構造改革による輸出競争力の改善が効果を表してきた。

日本・韓国・オーストラリアの経常収支(対GDP比)の推移

経常収支対GDP比(日本・韓国・オーストラリア)

  • 日本韓国は恒常的に経常黒字が続いている
  • 日本の貿易黒字は以前ほど大きくなく、貿易赤字になる年もある。一方、海外に保有する資産からの利子・配当が増加し、第一次所得収支の黒字が非常に大きくなっており、これが経常黒字の要因となっている。日本の国際収支の内訳についてはこちら:日本の国際収支推移
  • また、日本のサービス収支は長期間にわたり大幅な赤字となっていたが、訪日外国人旅行者の増加によって赤字幅が縮小、2019年上期(1月〜6月)には半期ベースで黒字化した。
  • 韓国は半導体・自動車・電子部品・通信機器などの輸出が好調で、高水準の貿易黒字が続いており、これが経常黒字の要因となっている。
  • 豪ドルは通貨として弱いイメージはないがオーストラリアは恒常的に経常収支が赤字となっている
  • オーストラリアの貿易収支は黒字になったり赤字になったりであるが、第一次所得収支が常に大きな赤字になってることが経常赤字の要因である。第一次所得収支は海外に保有する資産から生じる利子・配当金の収支を表しており、海外に資産を多く持つ日本などは大きな黒字となっている。オーストラリアは日本の逆で国外からオーストラリアへの投資の方が圧倒的に多いことから第一次所得収支がマイナスとなっている。



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