こちらのページでは各種経済指標の中で、特に株式市場で注目される「米国のPMI(中でもISM製造業景況感指数)」について分かりやすく解説しています。
「米国製造業PMI(ISM製造業景況感指数)」と「米国株(S&P500)」の比較チャートも掲載していますので参考にしてください。
PMIが55を上回っている場合や、逆に45を下回っている場合は、株式投資を行う際にPMIを活用することができます。
詳細は下記をご覧ください。
まずは、米国のPMI(ISM製造業景況感指数)についての説明です。
PMIとは(米国のPMIはISM製造業景況感指数が重要)
PMIとは「Purchasing Manager's Index」の頭文字をとったもので、日本語では「購買担当者景気指数」と呼ばれます。
企業の購買担当者にアンケート調査を行い、景況感を指数化して表します。
50が分岐点で、50を超えると景気拡大、50を下回ると景気後退を示します。
PMIが各種経済指標の中で注目されやすいのは、購買担当者は今後の自社の販売動向を入念に調査した上で仕入れを行うため、PMIが今後の景気動向を占う「先行指標」となりやすいからです。
現在、世界各国でPMIが調査・公表されています。
各国の主なPMIには下記のようなものがあります。
- 米国PMI:ISM製造業景況感指数、ISM非製造業(サービス業)景況感指数
- 中国PMI①:国家統計局中国製造業購買担当者景気指数(国家統計局PMI)
- 中国PMI②:財新マークイット中国製造業購買担当者景気指数(財新マークイットPMI)
- 欧州:ユーロ圏製造業PMI、英製造業PMI
- 日本:日本製造業PMI(日経PMI)
これらの中で最も注目されるのは米国のPMIです。
米国のPMIには製造業PMIと非製造業PMIがありますが、特に重要なのが製造業PMIである「ISM製造業景況感指数」です。
「ISM製造業景況感指数」は「全米供給管理協会(ISM : Institute for Supply Management )」が公表しています。
製造業の購買担当者にアンケート調査を行い、「良くなっている」、「同じ」、「悪くなっている」の回答から指数を算出します。(アンケート調査という点では日銀短観と共通します。日銀短観は購買担当者が対象ではないのでPMIではありませんが同じような指標です。ただし、日銀短観はゼロが分岐点でプラスマイナスで表します。)
- ISM製造業景況感指数の詳しい説明はこちも参照してください:米国の経済指標チェックリスト
ちなみに米国の名目GDPベースでは非製造業(サービス業)が約90%を占め、製造業は約10%と少数派です。
それでも、PMIでは非製造業(サービス業)より製造業の指数が重要視されています。
製造業PMIが重要視される理由は下記の3点が考えられます。
- 毎月発表される米国の経済指標の中では最初の第1営業日に発表【ISM製造業景況感指数は毎月第1営業日に公表、ISM非製造業(サービス業)景況感指数は第3営業日に公表】
- アンケートに答える購買担当者は非製造業(サービス業)より製造業の方が地位(ポジション)が高い傾向にあることから、製造業PMIの方が信頼性が高いと考えられている
- 指数の歴史が製造業の方が古い【ISM製造業景況感指数は1931年から公表、ISM非製造業(サービス業)景況感指数は1998年から公表】
PMIは景気先行指数と言われており、実際、実質GDP成長率に対してはかなりきれいに先行します。
ただし、株価もマクロ景気に先行して動くと言われています。
下記ではPMIと株価がどのような関係で推移しているかを確認します。
ISM製造業景況感指数とS&P500指数の推移(PMIを投資に活用するポイント)
米国のPMI(ISM製造業景況感指数)と株価(S&P500指数)の比較チャートです。
チャートを見ても分かる通り、PMIと株価は完全に連動して動いている訳ではありません。
PMIが50を上回れば株価が上昇し、50を下回れば株価が下落するというほど単純ではありません。
しかし、いくつかの法則性は認められます。
実際の投資に活用できそうなポイントを下記に掲載しますので参考にしてください。
- PMIが45を下回るような環境では、株式も大きく下落する
- PMIが55を上回るような環境では株式のパフォーマンスは良く、下落しても一時的で長期化しない
50前後の場合は騙しもあり、見極めが難しいですが、45以下や55以上など極端な数値が出ている時は活用できそうです。
PMIが55を超えている時に株価が調整した場合は、早期にリバウンドする可能性が高いので買いのチャンスと言えます。
PMIが55を超えているということは当面の経済環境もかなり良いということで、すぐに大きなクラッシュになる可能性は低いと言えます。
逆にPMIが45を下回る場合は注意が必要となります。
株価の下落が大きくなる可能性があります。
また、2000年~2002年のITバブル崩壊時のようにPMIが底からリバウンドしても、株価のリバウンドまでは一定のタイムラグがある場合もあります。
このようにPMIが大きく下げたケースでは、PMIがリバウンドしても株価が連動しない可能性もあるので、慎重に投資を行いたい場合はPMIが50をしっかり上回るのを確認してから投資する方がリスクを軽減できます。PMIが底をつけて上向きとなっても、50を下回っているということは景気後退局面から脱していないからです。
そして、特にPMIが45を下回った場合は、株価が安いと思っても、すぐに買うのではなく、少しマーケットを見極めてからの方が良いと言えます。
米国のPMI(ISM製造業景況感指数)が45を下回るということは、想像以上に実体経済が悪化する可能性を示唆しており、株式市場も簡単にリバウンドする状況ではないと考えられます。
最初にPMIが45を下回ってから少なくとも数ヶ月間は慎重に投資をする必要があります。
【PMIが最初に45を下回ってから株価が底入れするまでの期間】
- ITバブル崩壊時(2000年前後):1年9ヶ月
- リーマンショック時(2008年):4ヶ月
このように過去のパターンではPMIが45を下回った後、少し様子を見て投資しても全く遅くないといった結果になっています。
これは投資のリスク管理をする上で、非常に役に立つ内容ですので、忘れないようにしてください。
最後にPMIが50前後で推移している場合は、それほど大きく注目する必要はありません。
実際はこのパターンが多くの期間を占めると思いますが、参考程度に見ておきましょう。
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中国の代表的なPMIは「国家統計局PMI」と「財新マークイットPMI」の2種類あります。名前のとおり国家が公表する「国家統計局PMI」と民間企業が公表する「財新マークイットPMI」です。普通に考えると国が公表する方が信頼性が高そうに感じますが、中国ということもあり「財新マークイットPMI」の方が信頼できると声もよく聞かれます。
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