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知識・ノウハウ(債券)

MSCB(転換価格が下方修正される転換社債)について / 貸株とセットで悪のプランに

こちらのページでは2004年~2007年頃にブームとなったMSCBについて忘備録として掲載しております。

MSCBとは

MSCBは「Moving Strike Convertible Bond」の略で、日本語では「修正条項付新株予約権付社債」や「下方修正条項付転換社債」と呼ばれます。

一般的な転換社債(CB: Convertible Bond)ではあらかじめ決められた転換価格で株式に転換する権利が付与されています。

そのため、対象株式の株価が転換価格を超えると利益が得られます。

反対に株価が転換価格を上回らなければ、満期時に額面が償還されます。

よって、ダウンサイド限定で大きなキャピタルゲインが期待できます。

デメリットは発行体のクレジットリスク以外では転換社債の利回りは同じ発行体の普通社債より低くなる点くらいです。

一方、MSCBの場合は株価が下落した場合、転換価格が下方修正される仕組みが付与されています。

そのため、MSCBの投資家にとっては利益を上げる可能性が飛躍的に高まります。

しかし、転換社債の発行額が決定した後に転換価格が下方修正されるということは発行される新株の数が増加することを意味します。

そのため、既存株主は希薄化(ダイリューション)により大きな被害を被る可能性がでてきます。

MSCBは2004年~2007年頃にブームとなりましたが、この時期に発行されたMSCBは、MSCBの投資家にとっては極めて有利な条件のものも多くありました。

その反面、既存株主が大きな被害を受けたケースが多くありました。

ただし、これほどまで問題がありそうなMSCBを発行するということはその時点で既に大きな問題を抱えていて株価も相当下落している場合も多く、MSCBの発行が公表されると一時的に株価が上昇する銘柄もありました。

資金難による破綻懸念があったバイオベンチャーなどがそのパターンです。(ただし、そのような企業の多くが破綻したり上場廃止になったりしています)

下記では当時のMSCBの代表的な案件となった「ライブドアのMSCB」を紹介します。

ライブドアMSCBの概要(株数の増加数・株価の推移も掲載)

まずは、2005年2月に発行された「ライブドア(4753)のMSCB」の条件です。

  • 債券の名称:転換社債型新株予約権付社債(MSCB)
  • 発行体:ライブドア(4753)
  • 引受証券会社:リーマン・ブラザーズ証券
  • 発行日:2005年2月24日
  • 償還日:2010年2月24日
  • 発行額:800億円
  • 転換価格(当初):450円(MSCBが決議された2005年2月8日の前営業日である2005年2月7日の終値と同額で設定)
  • 転換価格の修正:毎週見直し、金曜日までの3営業日のVWAPの平均値の90%の価格、下限157円

期間5年のMSCBでしたが結果として2005年4月15日までに全てのMSCB(転換社債型新株予約権付社債)が株式に転換されました。

  • 転換株式数:268,947,887株
  • 平均転換価格:297円
  • 転換前の発行済み株式数:6億4637万株
  • 転換後の発行済み株式数:9億1532万株

MSCBにより発行済み株式数は41.6%増加しました。

MSCB発行決議前日の2005年2月7日の終値ベースので時価総額は約2,900億円(450円×6億4637万株)でした。

MSCBが全て転換された2005年4月15日の株価は329円と2005年2月7日の450円から大きく値を下げましたが、時価総額は約3,000億円と若干ですが増加しています。(株数が増加したためです)

そして、ライブドアMSCBで問題なのがMSCB発行に合わせて筆頭株主である堀江貴文社長から引受証券会社であるリーマン・ブラザーズに貸株が行われていたことです。

「MSCB+貸株」という(悪の)プランです。

当時、堀江貴文社長はライブドア株式の約37%を保有していました。

このプランであればMSCBを引き受けたリーマン・ブラザーズはライブドア株を空売りをし、MSCBから転換した株で決済することが可能です。

しかも、MSCBの転換価格は「毎週金曜日を含む3営業日のVWAPの90%の価格」ですので、10%のバッファーがあり、ほぼ確実に利益が出ます。

つまり、「MSCB+貸株」のプランはリーマン・ブラザーズにとっては極めてオイシイ案件でした。

下記はライブドアMSCBが決議された2005年2月8日からすべて株式に転換された2005年4月15日前後のライブドア株の推移です。

MSCB発行時のライブドア株式推移

発行決議(2005年2月8日)の後は株式への転換による希薄化を懸念して株価が売られています。

また、この時期にリーマン・ブラザーズから大量の空売りが行われたことが大量保有報告で分かっています。

2004年~2007年にブームとなったMSCBは概ね同じような仕組みで、引受け側から見た場合、ぼぼノーリスクで大きな利益を上げられる案件でした。

ライブドアはそれなりに時価総額が大きい企業でしたが、赤字が続いていて資金難のバイオベンチャーなどかなり信用力の低い企業でもMSCBであれば発行することができました。

ちなみにライブドアも1:100の株式分割で株価を引き上げ、大きくなった時価総額を生かしM&Aを行うなど、錬金術を駆使して時価総額を拡大していたことから、MSCBの発行時点で既に事業の将来性を疑問視する人も多くいました。

そして、半分偶然ですがライブドアはMSCB発行の翌年である2006年4月14日に証券取引法違反(粉飾決算)で上場廃止となりました。

また、こちらも偶然ですがライブドアMSCBを引き受けて大きな利益を上げたリーマン・ブラザーズ証券は2008年に破綻しています。【リーマンショック】

さらに、当時日本でMSCBの引受けに積極的であったメリルリンチも2008年に実質破綻状態となり、バンク・オブ・アメリカに買収されました。(MSCBの祟りかもしれません)

MSCBは批判も多かったことやいくつかの規制が設けられたことで、ライブドアのような極端な条件のものはなくなっています。

ただし、完全になくなったわけではないので、転換価格が調整される転換社債が出てきたときは注目してみてください



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