ファイナンシャルスター

ハイレベル金融サイト(投信・債券・REIT・税制など)

ソフトバンクグループ・ハイブリッド社債(公募劣後特約付社債)についての分析

投稿日:2016年12月29日 更新日:

【参考記事】2016/12/27日経朝刊

社債5割増、新株6割減 低金利、資金調達に変化  資本増強も起債で

上場企業が社債を使った資金調達を増やしている。低金利で調達コストが大きく下がり、発行額は前年比5割増の10兆5千億円と7年ぶりの大台に乗せた。大型の起債にとどまらず、資本増強効果が得られる特殊な社債が急増したのも追い風となった。半面、一株あたり利益の低下につながりかねない新株発行は6割減った。

 社債発行額が10兆円を超えるのは2009年(約11兆3900億円)以来だ。今年は日銀のマイナス金利政策の影響で指標となる国債利回りが下がり、9月にはパナソニックの4千億円、ソニーの2千億円など大型の起債が相次いだ。

短い年限の社債は発行時の金利がゼロに迫る。トヨタファイナンスが出した3年債の利回りは0.0003%と過去最低を記録した。

発行額を押し上げたもう一つの要因は「ハイブリッド社債」と呼ばれ、一定の資本増強効果が得られる社債の広がりだ。16年は過去最高の3兆6600億円強と、前年の2.7倍に膨らみ、社債全体の発行額の3割強を占めた。

ハイブリッド債は普通社債より債権者への弁済順位が低い代わりに利回りは高く設定する。「負債」として扱われるが格付け会社が一定部分を資本とみなすので、発行企業にとっては資本増強に似た効果を得られる利点がある。

ソフトバンクグループは3兆3千億円を投じた英半導体設計大手アーム・ホールディングス買収後の資金を手当てするため、計4700億円強のハイブリッド社債を発行した。「(1株利益を)希薄化させたくない」(孫正義社長)という理由から増資ではなく、年3%の利率で調達できるハイブリッド債を選んだ。

ハイブリッド債の人気は運用難に苦慮する機関投資家の需要も影響している。三井住友アセットマネジメントの深代潤氏は「国債よりも利回りが高い社債や劣後債を選好する」と話す。

一方で新株発行による資金調達(公募増資と新株予約権付社債の合計)は約7850億円と前年の3分の1強の規模に縮んだ。7月に日米市場に新規上場したLINEが1300億円強を調達したほかは、日本水産の公募増資138億円など小粒な案件が多かった。

上場企業は100兆円を超える潤沢な手元資金を蓄えており、資本増強の必要がなければ新株発行に動く要因は働きにくい。増資によって株式数が増えると一株あたりの利益は薄まる。利益水準が変わらなければ資本効率を示す自己資本利益率(ROE)などの指標も下がる。企業統治指針の導入を機に企業は資本効率を重視するようになった。

野村証券の海津政信シニア・リサーチ・フェローは「安易な増資は株主の利益を損なうとの認識が企業の間に広がってきた」と指摘する。

企業にとって低い調達コストが追い風になってきた社債発行市場も、11月の米大統領選を境に環境が変わりつつある。財政拡張策を掲げるトランプ氏の当選後は米国の金利上昇が日本にも波及し、長期金利に上昇圧力がかかっている。日銀は長期金利をゼロ%程度に誘導する目標を堅持しているものの、市場では「企業が金利の先高観から前倒しで資金調達に動く可能性がある」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の諏訪一氏)との声が出ている。

参考記事の内容について(低金利下で社債発行は増加、新株発行の増資は減少)

低金利下での社債発行増加は当たり前ですが、もう少しスプレッドは大きくすべきだと思います。

2016年に発行された社債の利回りは期間5年~10年のもので、ほぼ全て1%を下回るもので0.5%を上回るものすらほとんどありませんでした。

ベース金利が低いのは仕方ありませんが、リスクに見合ったスプレッドをもう少し上乗せすべきだと感じます。

従来から日本は米国などと比べて信用リスクに対するスプレッドが低い傾向があり、発行体にとってはプラスになりますが、投資家は本来得られるリターンを享受できていません。(それでも買う投資家がいるから仕方ありませんが。。。)

新株発行の増資についてはIPO(新規公開)での資金調達は良いと思いますが、日本株全体で見た場合、資金が大きく滞留している為、どちらかと言えば自社株買いをして発行済み株式数を減らすべきです。

リーマンショック後、銀行をはじめ多くの企業が増資をしましたので、今度は米国並みの自社株買いで株式数を減らしEPSを増加させてほしいものです。

記事にも紹介されていますが、2016年の特徴なディールとしてソフトバンクが発行した最長25年のハイブリッド社債(公募劣後特約付社債)がありますので、こちらを分析します。

ソフトバンク・バイブリット社債(公募劣後特約付社債)の商品概要

機関投資家向けと個人投資家向けのものが起債されましたが、今回は個人投資家向けの債券について分析します。

  • 発行総額:4000億円
  • 期間:25年(NC5:ノンコール5年)
  • クーポン:①当初5年3.0%、②5年後以降6ヶ月円Libor+3.16%、③20年以降6ヶ月円Libor+3.36%
  • 劣後条項:一般債務・既存劣後債に対して劣後する/優先株式と同順位
  • 資本性:JCRは50% (5年後25%、15年後O%)、S&Pは50% (5年後0%)

当債券がハイブリッド社債と言われる理由は, JCRとS&Pから当初5年は50%の資本性が認められており、発行体から見ると一部、株式と同様の効果があるからとなります。

年限は25年の債券ですが、5年後以降、発行体の裁量で償還が可能となっています。

ソフトバンクの信用力に大きな変化がなければ5年後に繰上償還する前提で発行されています。

その理由は5年後以降は格付け会社からの資本性認定が減少するからです。

上記の通りJCRは5年以降25%/15年以降0%、S&Pは5年以降0%としています。

資本性が認められないのにLibor+3.16%という高金利で資金を調達しておく理由がないからです。

ただし5年後のソフトバンクの信用力が低下して、一般社債を発行するのに3.16%を大きく上回るスプレッドが必要な場合は償還されない可能性が高くなります。

ちなみにこのハイブリッド社債の条件決定日(2016/9/9)におけるソフトバンクの一般社債(SB)のスプレッド5年債で1.7%程度7年債で2%程度となっています。

ハイブリッド社債の5年後以降はLiborベースの変動金利ですので、5年債/7年債のスプレッドと完全な比較はできませんが、現在1%台後半のスプレッド(上乗せ金利)が3.16%を大きく上回り、4%台などになった場合は償還されないリスクが発生することになります。

さらに細かく説明すると、5年後の金利環境(金利水準、長短金利差)や5年後の時点でソフトバンクが将来的に再度ハイブリッド社債を発行したいと考えているか否かも償還するか否かの判断に影響を与えます。

特に再度ハイブリッド社債を発行したいと考えている場合は多少スプレッドが高くても、投資家の期待に応えるため償還させる可能性が高くなります。
(繰上償還しないと、再度同様の債券を発行することは厳しくなると考えられます)

<スプレッドの解説や過去のソフトバンクのスプレッドについてはこちらを参照してください:社債のスプレッドとデュレーションについて

<劣後債の期限前償還見送りについてはこちらを参照してください:劣後債の期限前償還見送りについて考える(スタンダードチャータード銀行劣後債)

5年後に繰上償還されないケースは極端な信用危機の場合

リーマンショックのようなマーケット全体に影響を及ぼす信用危機の場合ソフトバンク個別の要因で信用力が極端に低下した場合に償還されないリスクが高まります。

通常、日本の債券市場ではハイイールド債市場と呼べるものはなく、格付けの高い企業しか起債できません。

スプレッドが4%以上なるということはかなりのクレジット危機と言え、おそらく起債自体ができない可能性も高くなります。

マーケット全体の問題で起債ができないのであれば、マーケットが回復するまで待ち、起債ができる環境になれば償還されます

逆にソフトバンク個別の問題の場合、そのままデフォルトまで行く可能性もゼロではありません。

有利子負債14兆円に対し、アリババをはじめとする保有有価証券の時価は12兆円あります。

現在のソフトバンクは企業として2000年前後とは大きく変化しており、特に国内の携帯電話事業だけで安定的に5,000億円以上の営業利益が出るようになっており、キャッシュフロー創出力は極めて高くなっています。

事業ポートフォリオも、安定した国内携帯電話事業に加えて、業績が回復してきている米国携帯電話事業(スプリント)、今回買収した半導体のARMと分散が図られてきました。

またこれまでもボーダフォンやスプリントを買収し成功した実績もあるため、極端なリスクはないと思われます。

それでも今後、更なる巨額買収で有利子負債を増やす可能性もありますし、保有株式が下落する可能性もあります。

JCRの格付けはBBBですが、国内格付け会社でBBBということはもしS&P,ムーディーズが格付けするとBB格ということになります。

実際、発行している外貨建て社債はS&PがBB+、ムーディーズがBa1と投資適格の水準ではありません。
(逆にいうとS&P、ムーディーズのBB格はハイイールド債やジャンク債などと言われますがイメージほど信用力が低いわけでもないと言えます)

<ハイイールド債の格付けやセールストークに関してはこちらを参照してください:フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド/米国ハイイールド債の投資環境

最後は孫社長をどこまで信じるかということになると思います。

円建て社債でソフトバンク以外に高い利回りが出る銘柄は非常に少ないので、これくらい大きなロット(4,000億円)で発行してくれることは投資家にとってはありがたいと言えます。

PC記事下2つ

PC記事下2つ

関連コンテンツ



-知識・ノウハウ(債券)

Copyright© ファイナンシャルスター , 2017 AllRights Reserved Powered by AFFINGER4.