中国は「国が公表するPMI」と「民間が公表するPMI」が存在する
製造業購買担当者景気指数(PMI)は当面の景気を予想する上で非常に重要な指標となります。
PMIはPurchasing Manager's Index(購買担当者景気指数)の略です。
企業の購買担当者に新規受注や生産、雇用の状況などをアンケート調査し、指数化したものです。
PMIは製造業と非製造機のデータが公表されますが、注目度が高いのは製造業PMIてす。
数値は50が判断の分かれ目で、この水準を上回る状態が続くと景気拡大、下回ると景気減速とされます。
そして、PMIはどの国でもありますが、中国では2つの製造業購買担当者景気指数(PMI)が公表されています。
1つ目が中国政府が調査・公表する「国家統計局中国製造業購買担当者景気指数(国家統計局PMI)」です。
もう1つが民間のマークイット社が調査し、中国メディア大手の財新(Caixin)がスポンサーとなって公表している「財新マークイット中国製造業購買担当者景気指数(財新マークイットPMI)」です。
2015年7月まではHSBCがスポンサーとなっており、「HSBC製造業購買担当者景気指数(HSBC中国PMI)」と呼ばれていました。
つまり、「国が公表するPMI」と「民間が公表するPMI」が存在します。
また、公表時期は「国家統計局PMI」が当月データを月末に公表、「財新マークイットPMI」が前月データを翌月の初めに公表となっており、連続して公表される形となります。
- 「国家統計局PMI」と「財新マークイットPMI」の詳細についてはこちらもご覧ください:中国の経済指標チェックリスト
データが取得できた2012年4月以降の「国家統計局PMI」と「財新マークイットPMI」の推移はこちらになります。
国家統計局PMIと財新マークイットPMIを比較すると国家統計局PMIの方が高めの数値が出る傾向があります。
特に顕著なのが財新マークイットPMIが50を下回る局面でも国家統計局PMIはギリギリ50を維持するパターンが多くなっています。
一部には、国の政策が上手くいっていることをアピールしたいので、恣意的に高く誘導しているのではと国家統計局PMIのデータを疑う向きもあります。
本当のところはどうなのか分かりませんが、中国の場合、国が公表するデータはどうしても信頼性の面で問題があります。
マーケットでは恣意的に操作されやすい国家統計局PMIより民間の財新マークイットPMIの方が信頼性が高いと言われることが多くなっています。
ただし、2つのデータの違いは調査対象が異なることが要因の可能性もあります。
財新マークイットPMIは国家統計局PMIより中小企業や輸出企業の割合が多く、景気に敏感に反応すると言われています。
それが財新マークイットPMIが50を下回る頻度が多い理由の可能性もあります。
また、近年、中国の製造業PMIは世界経済の先行きを占う先行指標としても注目されることが多くなっています。
中国のPMIと株価の推移
こちらでは中国のPMIが株式投資の指標として有効であるかを確認します。
見やすくするために「国家統計局PMI」と「財新マークイットPMI」を分けてチャートを作成しています。
まず、「国家統計局PMI」と上海総合指数の比較チャートです。
上記でも触れましたが、国家統計局PMIは50を下回ることがあまりありません。
逆説的に考えると国家統計局PMIが50を下回る場合は注意が必要と言えそうです。
次に「財新マークイットPMI」と上海総合指数の比較チャートです。
完全にリンクしている訳ではありませんが、財新マークイットPMIが50を上回っている場合は株式のパフォーマンスが良く、50を下回っている場合は株式のパフォーマンスが悪くなっています。
さらに財新マークイットPMIは株式に対して若干の先行性も確認できますので、中国株投資を行う際には確認しておいた方が良いと考えられます。
- 中国株式市場の長期推移はこちら:新興国株式市場(中国・インド・ブラジル・ロシア)の長期推移
- 中国株式市場の仕組みについてはこちら:中国株式市場の仕組みを分かり易く解説 / 香港・上海・深セン / A株・B株・H株 / ハンセン・レッドチップなど
- 米国のPMIと米国株(S&P500)の比較についてはこちら:PMIと株価を比較(ISM製造業景況感指数とS&P500指数)