こちらのページではインドネシアルピアの長期チャートと変動要因を掲載しています。
インドネシアは中国・インド・米国に次いで人口が多く、高い経済成長率を誇り、成長ポテンシャルが大きいことから様々な面で注目されている国です。
- インドネシアの1人当たりGDPの推移はこちらを参照:1人当たりGDPランキングの推移(1990年・2000年・2010年・直近) / 日本の地位は低下傾向
通貨ルピアに関しては1997年のアジア通貨危機で大きく下落したイメージもあり、日本国内でもこれまであまり取引されていませんでした。
しかし、アジア通貨危機から20年以上が経過し、インドネシアルピアを取り巻く環境も大きく変化しています。
また、金利水準も相対的に高いこともあり今後、人気化する可能性もあります。
それではまず、円/インドネシアルピアとインドネシアルピア/ドルの長期チャートから掲載します。
変動要因は箇条書きで掲載しています。(下段の方では10年ごとに区切ったチャートを掲載し、変動要因を細かく掲載しています)
インドネシアルピア(IDR)の超長期チャート
対円は100インドネシアルピア(100IDR)当たりの価格となります。
【2019年9月30日の例】
- 1ドル=14,177インドネシアルピア(1インドネシアルピア=0.00007054ドル)
- 100インドネシアルピア=0.7669円(0.00007054ドル×108.2円/ドル×100)
インドネシアルピアの長期チャートです。
- 1997年8月までインドネシアはドルペッグ制(固定相場制)を採用していた。
- 1997年5月のタイバーツ暴落から始まったアジア通貨危機の影響により、インドネシアも1997年8月に変動相場制に移行した。(変動相場制に移行した理由の詳細は下段の「1990年代」に記載)
- 変動相場制に移行した直後、インドネシアルピアは大きく下落したが、2000年頃にはある程度安定した。
- 2000年代はITバブル崩壊とリーマンショック発生時には一時的に下落したが、それ以外では概ね安定的な推移となった。インドネシアの経常収支が黒字化した影響もあり対米ドル(IDR/USD)では概ね横ばいで推移した。対円(JPY/IDR)はドル円レートが円高に推移したこともあり緩やかな右肩下がりの推移となった。
- 2010年代は対米ドル(IDR/USD)・対円(JPY/IDR)共に緩やかな右肩下がりとなった。
- 2020年2月以降、新型コロナウイルスの影響によりインドネシアルピアは大きく下落。終値ベースでは対米ドル(IDR/USD)・対円(JPY/IDR)共にアジア通貨危機時の最安値を更新した。(日中データベースでは対ドルは1998年の安値を越えなかった)
- 過去最安値のデータ(終値ベース)
- 対米ドル(IDR/USD):2020年3月20日の1ドル=16,605インドネシアルピア
- 対円(JPY/IDR):2020年4月1日の100インドネシアルピア=0.6383円
- 過去最安値のデータ(日中データベース)
- 対米ドル(IDR/USD):1998年6月17日の1ドル=16,950インドネシアルピア
- 対円(JPY/IDR):2020年4月2日の100インドネシアルピア=0.6345円
- インドネシアルピアの分析はこちらを参照:新興国通貨の5つのチェックポイント
- インドネシアのマクロデータの推移はこちらを参照:新興国マクロデータ推移
- インドネシア経済は安定的に成長しており、アジア通貨危機直後の1998年を除くと実質GDP成長率はプラスを維持している。インドネシアの経済成長率のデータはこちらを参照:世界の実質GDP成長率(経済成長率)推移【1991年以降】
- インドネシアルピアの特徴についてはこちらを参照:主要通貨の特徴一覧【資源国通貨・新興国通貨・中国関連通貨のどれに該当するか】
インドネシアルピア(IDR)の歴史を詳細に解説【10年毎チャート】
円/ルピア・ルピア/ドルの為替チャートと変動要因【1990年代】
- 上記、対ドルのチャートを見ると分かりやすいが、1997年のアジア通貨危機前まではドルペッグ(固定相場制)であり、チャートが横向きの直線となっている
- アジア通貨危機の震源地はタイであった。1997年5月、タイバーツに売りが殺到しアジア通貨危機が始まった。(その後、マレーシア・インドネシア・韓国等周辺国にも波及した)
- 当時、タイも周辺アジア諸国と同様に通貨を一定の水準で米ドルに固定するドルペッグ制を採用していた。米ドル高が進む中、経済環境が大きく異なるタイバーツの割高感が目立つようになり、ドルペッグ維持が困難と判断したヘッジファンドなどマーケット参加者がタイバーツを一斉に売り浴びせた。
- タイの中央銀行は大幅な利上げや為替介入などで抵抗したが、2か月後の1997年7月にドルペッグ制を放棄し、変動相場制に移行した。
- その後、1997年8月にマレーシア(リンギ)やインドネシア(ルピア)も変動相場制に移行し、いずれも通貨は大きく下落した。
- インドネシアルピアは1997年6月に1ドル=2400インドネシアルピア前後であったが、1998年6月には一時、1ドル=16,950ルインドネシアピアまで下落した(上記チャートは月次データで作成しているため、1ドル=15000インドネシアルピア前後に見えるが日中データでは16,950インドネシアルピアまで下落した)
- 約1年で約1/7 (約85%の下落)となり、タイバーツやマレーシアリンギ、韓国ウォンなど周辺国の通貨と比較しても最も大きな下落率となった。(アジア通貨危機の震源地となったタイのバーツより下落率は大きくなった理由はスハルト政権の混乱による影響が大きい)
- この一連の混乱により、国内景気も悪化し、1998年の実質GDP成長率は-13.1%と大きく低迷した。これにより1998年5月、独裁者として30年以上もインドネシアを支配していたスハルト大統領が辞任することとなった。
- スハルト大統領辞任直後もインドネシアルピアの下落が続いたが、その後リバウンドし、1999年末には1ドル=7000インドネシアルピアまで回復した。
- アジア通貨危機発生時の株式・REIT・債券の下落率はこちらを参照:各資産の最大下落率(アジア通貨危機・ロシア危機)
円/ルピア・ルピア/ドルの為替チャートと変動要因【2000年代】
- 対ドルで確認すると2000年代のインドネシアルピアはITバブル崩壊後の2001年やリーマンショック後の2008年・2009年に大きく下落している。これはインドネシアルピア固有の要因というより、リスクオフによる新興国通貨からの資金流出が大きく影響している。
- これ以外では2000年代のインドネシアルピアは対ドルでは比較的安定的に推移していた。
- 1999年~2011年はインドネシアの経常収支が黒字で推移していたこともインドネシアルピアの安定的推移につながったと考えられる(これを見ると新興国通貨にとって経常収支の黒字かが重要であることが再認識できる)
- ただし、この間、対円ではドル円レートが円高になった影響で円/インドネシアルピアも円高トレンドとなった。
- 1999年12月に100インドネシアルピア=1.4円であったが、2009年12月には100インドネシアルピア=0.98円となった。(リーマンショック後の2009年1月には100インドネシアルピア=0.75円前後まで円高ルピア安が進んだ)
- しかし、2000年代のインドネシア建て1年国債利回りは6%~10%で推移しており、高い金利水準を考慮すると日本円からインドネシアルピアに投資した場合でも一定のリターンを獲得できた
円/ルピア・ルピア/ドルの為替チャートと変動要因【2010年代・2020年代】
- 対米ドルでは2013年~2018年にかけてインドネシアルピア安が進んだ
- この間のインドネシアは経常収支と財政収支が赤字となる、いわゆる双子の赤字の状態で通貨が売られやすい環境であった
- ただし、この期間は多くの新興国通貨が大幅に下落した時期であり、ある程度その影響も受けたとも考えられる。
- 2010年代以降のインドネシアは1990年代後半のアジア通貨危機の頃と比べて経済規模は大きくなり、外貨準備高も大幅に増加している。その為、インドネシアルピアは当時のイメージとは異なり、新興国通貨の中でもボラティリティが低く安定した通貨となった(インドネシアの外貨準備高の推移はこちらを参照:世界各国の外貨準備高ランキングの変化(1990年・2005年・2020年)
- 対円では2009年末の100インドネシアルピア=0.98円から2019年の最も円高・インドネシアルピア安が進んだ時で100インドネシアルピア=0.75円となった。
- 2000年代と比較すると2010年代に入り金利水準は低下しているが、それでも2010年代のインドネシアルピア建て1年国債利回りは4%~8%で推移しており、これを考慮すると2000年代と同様に2010年代も日本から投資した場合、一定のリターンが獲得できたことになる
- 2020年に入り、新型コロナウイルスの影響によりインドネシアルピアは大きく下落。2020年3月、日次・月次の終値ベースでは対米ドル・対円ともにアジア通貨危機時の最安値を更新した。
- 対米ドル(IDR/USD)では2020年3月20日に終値ベースの過去最安値1ドル=16,605インドネシアルピアまで下落した(一時、1ドル=16,901インドネシアルピアまで下落したが、1998年6月17日の1ドル=16,950インドネシアルピアを超える下落にはならなかった)
- 対円(JPY/IDR)は終値ベースだけなく、日中データベースも最安値を更新した。(終値ベースでは2020年4月1日に100インドネシアルピア=0.6383円、日中データベースでは100インドネシアルピア=0.6345円まで下落)
- 2020年4月以降は大きくリバウンドし、2021年にはコロナショック前の水準まで回復した
- 2021年~2024年のインドネシアルピアは対米ドルでは下落したが、円安ドル高の影響により対円では上昇した