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ヘッジコストは金利差とベーシス(ドル需要)で決まる  外債投資を阻む壁 米金利上昇 ドル調達コスト急拡大~日経新聞記事~

投稿日:2016年12月2日 更新日:

2016/12/1日経朝刊

外債投資を阻む壁米金利上昇ドル調達コスト急拡大

予期せぬトランプ相場の到来で米金利が急上昇している。市場では高い利回りに目をつけて日本の投資家が外債投資を加速させるとの見方もあるが、先行きは不透明。ドルを調達するコストが過去最大の水準にあり、外債購入の障壁になる可能性があるからだ。むしろ日本国債が見直され、市場では再び金利低下の兆しが出始めている。

長期金利は米大統領選当日の1.86%から一時は2.4%台まで上昇。足元では2.3%前後で推移する。異次元緩和で日本の利回りが急低下するなか、一見すると国内投資家にとっては絶好のチャンスだ。

だがある大手生保の担当者は浮かない顔を見せる。ドルの調達コストの上昇が急過ぎるためだ。通常、ドル建て債券に投資する際には一定期間為替変動の影響を回避するヘッジ取引を組み合わせる。そのヘッジ取引にかかる手数料などドルの調達コストが、米金利急上昇で日米金利差が広がったことでリーマン・ショック以来の過去最高水準に達しているのだ。

いくら目の前の金利の絶対水準が高くても、付随するヘッジ取引のコストの変動が激しければ将来の収益性は読みづらくなる。「投資妙味は落ちる」(大手生保)

実際、財務省の11月13~19日のデータで海外の中長期債への投資が6週間ぶりに売り越しとなった。「金利急上昇(債券価格は下落)で一部の投資家が損切りを迫られた」(バークレイズ証券の押久保直也氏)だけでなく、ドルの調達コストが足かせになって外債投資に動きづらいようだ。

結果として、身動きの取りにくい資金は日本国債に向かいやすい。2年債利回りや10年債利回りは上昇が足元で一服。投資家が日本国債を買う姿勢は根強いといえる。

日本国債の需要が根強い背景には、11月17日に日銀が実施した「指し値オペ」も効いている。2年債と5年債を対象に、当日の流通利回りを上回る水準(価格は安い)で無制限に買い入れるとした。10年債など他の年限でも、米金利の上昇に連動した日本国債売りが一巡した後は「日銀がどの金利水準で指し値を入れるか不明という警戒感から、プラス利回りの国債を早めに買っておく動きがある」(国内証券)という。

もちろん日本勢が今後、ドルのヘッジコストに目をつぶり、米金利の絶対水準を優先してドル建て外債投資を拡大すれば、国内金利の上昇につながる可能性も残る。イールドカーブをコントロールしようとする日銀は方向感をつかみづらく、かじ取りが一段と難しくなりそうだ。

ヘッジコストは金利差だけでなくドル需要も影響する

記事内のチャートにあるように米ドルのヘッジコストが大幅に上昇しヘッジ付き外債投資が苦しんでいるようです。

よく「ヘッジコストは金利差で決まる」と言われますが、実はこれでは不十分で、実際にはヘッジコストは「金利差」とドルの需要により変動する「ベーシス(スプレッド)」の合計で決まります。

記事内のチャートにではドル円のヘッジコストが1.8%程度となっています。

2016年12月現在、3ヶ月ドルLIBORは約0.9%、3ヶ月円LIBORは約0.1%ですので金利差は1%です。

よって残りの0.8%がドルの需要が強いことによるベーシスのコストとなります。

2016年12月現在では米ドルの金利上昇、トランプ政権への期待、英国のEU離脱問題、ドイツ銀行の信用問題、欧州各国で住民投票を控えていることなど、米ドルの需要が高くなる材料が豊富であり、その結果「ベーシス」が上昇しているものと思われます。

為替予約と金利差、ベーシスの仕組み

金利差のみで為替予約の先物レート(理論値)を考える

為替リスクをヘッジするためには一般的に為替予約取引をおこないます。

為替予約をする際の先物レートは円で運用した場合とヘッジ付きで米ドルを運用した場合の利回りが同一になるレートとなります。

(例) 1ドル=100円、米ドル金利5%、日本の金利1%、期間1年、10,000円(100ドル)運用

  • 円で運用→10,100円
  • ヘッジ付きで米ドルを運用→ドルベースでは105ドル。これが円での運用と同じ10,100円になるには1年後の先物レートが10,100/105 = 96.19円/ドルとなる必要があります。

よって上記の例でヘッジ付き外債投資をしようとした場合、外債購入と同タイミングで「1年後に米ドルを円に両替する為替予約」を行おうとすると1ドル= 96.19円となります。

為替ヘッジコスト理論値計算

これが金利差のみを考慮した先物の理論価格となります。

また、このスポット価格と先物価格の差が金利差からくるヘッジコストという事になります。

ベーシスも考慮した先物レート

ベーシスはドルの需要により変動します。

ヘッジ取引を行う際、具体的にどのような形になるかというと、上記の例で言えば、金利差の理論値では1ドル=96.19円になる先物レートですが、ドル需要が高い場合、96.15や96.10といったレートになります。

先物レートが金利差による理論値より不利な条件となることで、これを年率の利回り換算すると0.8%のベーシス(コスト)になるということです。

金利差から導き出されるコストとベーシスコストの合計が実際のヘッジコストという事になります。

ヘッジ付き外債を保有している投資家は厳しい環境

ヘッジ付き外債投資は通常、「長期債+3ヶ月ごと為替ヘッジをロール」というポジションをとります。

2016年7月~10月までの米国10年国債は1.4%~1.8%で推移していたため、直近、10年国債をヘッジ付きで購入した投資家は、金利よりヘッジコストが上回るネガティブキャリーになっています。

今後、米国の利上げによる金利差拡大も予想されるため、更なるヘッジコストの上昇も考えられます。

また金利上昇で保有している長期債も下落しており、「債券価格下落+ネガティブキャリー」という非常に厳しい環境です。

2004年~2006年にも同じような状況が発生し、当時はFRBによる連続利上げでFF金利が2年間で1%→5.25%まで上昇し、長期債の下落(金利の上昇)とヘッジコストの急拡大でヘッジ外債を保有していた投資家は大きな損失を受けました。

FRBの利上げが予想され、かつ長期金利の水準が低い環境でヘッジ付き外債の戦略をとることはかなりリスクが高いといえます。

ヘッジ付きで投資するならクレジットリスクもとる方がベター

「長期債+3ヶ月ごと為替ヘッジをロール」の戦略ですと金利が上昇した場合に、債券価格下落+ネガティブキャリーとなりダブルパンチとなります。

金利が上昇する可能性があるのであれば、クレジットリスクはありますが、変動金利のバンクローンがベストと思われます。

金利差が拡大した場合、ヘッジコストが上昇しますが、その分バンクローンから得られる金利収入も増加するためプラスマイナスゼロとなります。

よってヘッジ付きのバンクローンはイメージとしてはバンクローンのスプレッドのみを享受する戦略と言えます。

金利上昇局面であれば、米国のマクロ環境も良好でしょうからスプレッドのタイトニングによるローン価格の上昇も期待できます。

また、ハイイールド債券の場合は固定金利であるため、金利上昇した分、債券価格の下落要因となりますが、スプレッド部分はバンクローンと同様にタイトニングによる債券価格上昇要因となりますので、高格付け債券に投資するよりはベターと思われます。

ハイイールド債のポイントやセールストークは「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド/米国ハイイールド債の投資環境」を参照してください。

  • 金利上昇局面のヘッジ付外債の優劣
    バンクローン > ハイイールド債 > 高格付け債券

ヘッジ付き外債が有効なタイミングはヘッジコストが安い時

上記の通り、ヘッジコストは「金利差」と需要動向により変動する「ベーシス(スプレッド)」で決まります。

「ベーシス(スプレッド)」については短期的にも大きく変化することもあるので予想することはやや難しくなりますが、「金利差」は簡単に計算することができます。

ヘッジ付き外債に投資すべきタイミングはこの「金利差」が小さい時ということになります。

下記に米ドルと円の短期金利の推移と金利差の推移を掲載します。

ヘッジコスト 金利差推移

青い線が米ドルの短期金利(3ヶ月ドルLIBOR)、赤い線が円の短期金利(3ヶ月円LIBOR)です。

緑色の棒グラフの部分が金利差となります。

2010年~2015年頃までは金利差が0%~0.5%程度となっています。

このような環境であればヘッジ付き外債が有効となります。

更に2011年頃は米国ハイイールド債の最終利回りが9%程度まで上昇しており、このタイミングで米国ハイイールド債に投資する投資信託の円ヘッジコースを購入すれば、為替リスクなしで信託報酬控除後でも7%前後の利回りが得られることになります。

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