「ノルウェー政府年金基金グローバル(Pension Fund Global)」は世界最大のソブリン・ウエルス・ファンド(SWF)です。
「年金」という名称が入っていますが、GPIFのような年金基金ではなく、国の収入が減少した時の為に資金を蓄えておく純粋なSWFです。
株式比率が高い積極運用が特徴で2023年末時点で運用資産は220兆円となっています。
人口530万人のノルウェーにおいて人口1人当たり4,000万円以上の貯えができていることになります。
日本は1人当たり1,000万円以上の負債を抱えていることを考えると羨ましく思います。(GPIFは純粋なSWFではないので日本にSWFはありません)
ノルウェーの年金基金は2つ【有名なのはノルウェー政府年金基金グローバル(Pension Fund Global)】
ノルウェーのSWF(ソブリン・ウェルス・ファンド)として有名な「ノルウェー政府年金基金」は世界でも最大級のSWFです。
正確には、「ノルウェー政府年金基金」は2つの基金が存在します。
- ノルウェー政府年金基金ノルウェー(Pension Fund Norway)【一般的な年金基金】
- ノルウェー政府年金基金グローバル(Pension Fund Global)【SWF】
「ノルウェー政府年金基金ノルウェー(Pension Fund Norway)」は一般的な年金基金で国民が拠出した年金原資を運用し、年金を支払う義務(年金債務)を有しています。
こちらの運用資産規模はそれ程大きくなく2兆円前後です。
一般的にノルウェーのSWFといった場合は「ノルウェー政府年金基金グローバル(Pension Fund Global)」のことを指します。
こちらは一般的な年金基金ではなく純粋なSWFです。
運用資産は2017年末に100兆円を超え、2023年には200兆円を超えました。
「ノルウェー政府年金基金グローバル(Pension Fund Global)」は財務省の管理下にあり、財務省がノルウェー中央銀行投資管理部門(ノルウェー中央銀行インベストメント・マネジメント:NBIM)に運用を委託しています。
ノルウェー政府年金基金グローバルは世界最大のSWF【SWFの残高ランキングを掲載】
少しおかしな表現になりましたが、「ノルウェー政府年金基金グローバル(Pension Fund Global)」は年金基金という名前が入っていますが、年金のためだけのファンドではなく、具体的な年金債務も負っていません。
よって、「ノルウェー政府年金基金グローバル(Pension Fund Global)」は純粋なSWF(ソブリン・ウェルス・ファンド)といえます。
逆に日本のGPIFはSWF(ソブリン・ウェルス・ファンド)と紹介されることがありますが、こちらは純粋な年金基金でありSWFではありません。
- GPIFについての詳細はこちらを参照:GPIFの役割とポートフォリオの変化
下記は世界のSWF(ソブリン・ウェルス・ファンド)の運用資産残高ランキングです。
ノルウェー政府年金基金グローバル(Pension Fund Global)が1位です。1ドル=140円換算で約220兆円となります。
ノルウェーは北海油田を中心とした原油・天然ガス等のエネルギー関連収入が潤沢です。
国の歳入として使用した残りの分を「ノルウェー政府年金基金グローバル(Pension Fund Global)」に拠出しています。
「ノルウェー政府年金基金グローバル(Pension Fund Global)」の存在目的は下記の通りです。
- 景気悪化時に国の税収が減少した場合の備え
- 原油価格(エネルギー価格)低迷時に歳入が不足した場合の備え
- 高齢化・人口減による年金財政悪化のための備え
- 将来的の原油・天然ガス等の生産減少に対する備え
分かりやすく言うと、何かあった時の調整弁としての役割です。
国の収入が減った時に補填するためや、将来的な人口減少やエネルギー生産減少に備えて未来の国民の為にお金を貯めておこうというものです。
2023年末時点で約1.6兆ドル(220兆円)の資産規模となっており、純粋なSWF(ソブリン・ウェルス・ファンド)としては世界1の規模です。
ノルウェーの人口は530万人程度です。
よって、国民1人当たりにすると4,000万円以上となります。
よく日本は1,200兆円以上の借金があり、1人当たりでは1,000万の借金と言われますが、全く正反対です。
うらやましい限りです。
ノルウェーの1人当たりGDPは世界でもトップクラスです。
これを長期的に維持していく手段として「ノルウェー政府年金基金グローバル(Pension Fund Global)」が存在します。
- 世界各国の1人当たりGDPはこちらをご覧ください:1人当たりGDPランキングの推移(1990年・2000年・2010年・直近) / 日本の地位は低下傾向
ノルウェー政府年金基金グローバルの運用【あぶく銭なので株式比率を高くできる】
サウジアラビヤ、UAE(アラブ首長国連邦)等もSWF(ソブリン・ウェルス・ファンド)を活用してオイルマネーを運用していますが、ノルウェー程上手くいっている例も珍しいといえます。
「ノルウェー政府年金基金グローバル(Pension Fund Global)」の運用は株式の比率が高いことで有名です。
ポートフォリオの内訳は「株式70%程度・債券30%程度・不動産3%程度」となっています。
投資対象はノルウェー国外の資産のみとなっています。
当たり前ですが、これだけ株式の比率が高いとそれなりにボラティリティも高くなります。
急激なマーケットのショックがあると運用資産の減少率も大きくなります。
ただし、ノルウェー国内を見るとここから大きな経済成長は期待しにくいですが、グローバルでみれば人口も増え、経済も成長していくと考えられるので長期的に見ればグローバル株式のパフォーマンスが良くなるとの考えです。(日本でもGPIFが外貨比率と株式比率を引き上げました)
仮に株式市場が下落しても、原資が税金や年金の掛け金では無く、北海油田のエネルギー収入であり、言い方は良くないかもしれませんが「あぶく銭」なので大きな問題にはならないのでしょう。(ここはGPIFと大きく異なる点です)
2017年などは世界的な株高の影響で、1年間に+13.7%のリターンで1,310億ドル(約14兆円)の利益となりました。
2016年には原油価格低迷により、政府の歳入が不足し、約500億円をファンドから拠出するなどしっかり役割を果たしています。
日本への投資は、株式は以前から保有していますし、不動産についても2017年から投資を開始しています。
2017年12月に東急不動産と共同で渋谷区・港区の商業施設5物件を1,325億円(70%ノルウェー年金、30%東急不動産)で購入しました。
日本の財政や年金は将来に「ツケ」を回して、問題を先送りにしている印象ですが、ノルウェーはしっかりと将来を考え、実際に準備しているところが凄いと思います。
なかなか出来そうでできないことだと思います。
「ノルウェー政府年金基金グローバル(Pension Fund Global)」は運用も凄いですが存在意義も素晴らしいです。