こちらのページでは「ロシアルーブル」の長期チャートと変動要因の解説を掲載しています。
ロシアルーブルは長い間、「管理フロート制(管理された変動為替相場制)」を採用してきました。
ロシアルーブルが「完全変動相場制」に移行したのは意外と新しく2014年11月です。
ロシアは政府の歳入や輸出に占めるエネルギー関連の比率が高いことから、ロシアルーブルの特徴として原油価格との相関性が高くなっています。(このページの一番下に「ロシアルーブルと原油の比較チャート」を掲載していますので参考にしてください)
下記ではまず、円/ルーブルとルーブル/ドルの長期チャートから掲載します。変動要因は箇条書きで掲載しています。
下段の方では10年ごとに区切ったチャートを掲載し、変動要因を細かく掲載しています。
それではまず最初にロシアルーブルの長期チャートからご覧ください。
ロシアルーブル(RUB)の超長期チャート(円/ルーブル・ルーブル/ドル)
- ロシアルーブルは長い間、管理された変動為替相場制(管理フロート制)を採用してきたが2014年11月に完全変動相場制に移行した
- ロシアは輸出に占めるエネルギー・資源の比率が高く、ロシア経済はエネルギー価格の影響を受けやすい
- 過去の推移をみるとロシアルーブルと原油価格は一定の相関がみられる(最下段のロシアルーブルと原油の比較チャートを参照)
- ロシアルーブルの特徴についてはこちらを参照:主要通貨の特徴一覧【資源国通貨・新興国通貨・中国関連通貨のどれに該当するか】
ロシアルーブル(RUB)の歴史を詳細に解説【10年毎チャート】
円/ルーブル・ルーブル/ドルの為替チャートと変動要因【1990年代】
- 1991年12月、ソビエト連邦が崩壊
- 1992年7月1日よりルーブルの中央銀行公表レートを発表。変動相場制ではなく「管理された変動為替相場制(管理フロート制)」を採用した。初日のレートは1ドル= 125.26ルーブル(現在の基準では0.12526ルーブル)であった。
- その後の激しいインフレによりルーブルは大きく減価し、1993年12月末に1ドル=1247ルーブル(現在の基準では1.247ルーブル)まで下落、1997年12月末には1ド=5958ルーブル(現在の基準では5.958ルーブル)まで下落
- 1998年初めに1/1000のデノミを行い、現在の基準となり1ドル=6.2ルーブルでスタートした
- 1998年8月にロシア危機発生(ロシア国債のデフォルト)によりルーブルは大きく下落し1ドル=6.2ルーブルから1999年3月には1ドル=25ルーブル前後まで急落した
- ロシア危機後の1999年は原油価格の急上昇と切り下がったロシアルーブルの効果により、ロシア経済は復活した【WTI原油価格のチャートはこのページの一番下のリンクから参照してください】
円/ルーブル・ルーブル/ドルの為替チャートと変動要因【2000年代】
- 2000年、プーチン政権が誕生
- 2000年以降、リーマンショックが発生した2008年9月まで管理された変動為替相場制(管理フロート制)の下でロシアルーブルは堅調に推移した
- 特に2003年以降は世界的に景気が回復したことと原油価格が大幅に上昇したことでロシアに追い風となり、2002年12月の1ドル=32ルーブルから2008年3月には1ドル=22ルーブルまで上昇した。
- 原油価格は2001年12月の1バレル=20ドルから2008年9月には1バレル=147ドルまで大幅に上昇した
- 2008年のリーマンショック後は世界的にリスクオフとなり多くの高金利通貨が売られる中、ロシアルーブルも1ドル=23ルーブルから1ドル=36ルーブルまで下落した
円/ルーブル・ルーブル/ドルの為替チャートと変動要因【2010年代・2020年代】
※2020年以降のデータも当面こちらに追加していきます
- 2010年~2013年は対米ドルで安定的に推移した。
- 2014年に入り下落を始め2016年1月頃まで大きく下落した
- 2014年初めの1ドル=33ルーブルから2016年1月には1ドル=86ルーブルまで下落した
- この間、原油価格が1バレル=100ドル超から1バレル=25ドルまで大幅に下落したことや、ウクライナ問題に端を発した地政学リスク、ロシアの景気低迷などの影響がありロシアルーブルに売り圧力が強まる中、ロシア中央銀行は為替介入や利上げによりルーブルの安定を試みたが、2014年8月頃から実質的にコントロール不能となっていた。
- 2014年11月10日にこれまで行ってきた「管理された変動為替相場制(管理フロート制)」から「完全変動相場制」への移行を発表した
- 完全変動相場制移行を発表した2014年11月10日は1ドル=45ルーブル前後で、一時的にルーブル安は止まったが、11月下旬から再度下落を始め、2014年12月には1ドル=78ルーブルまで下落した(上記チャートは月次データのため1ドル70ルーブル前後までの下落に見えるが、日時データでは78ドルまで下落した)
- 2014年12月、ロシア中央銀行は政策金利を9.5%から17%に引き上げた
- その後、ロシアルーブルは一時リバウンドしたものの原油価格低迷の影響から再度下落し、2016年1月の1ドル=86ルーブルまで下落した(上記チャートは月次データのため1ドル75ルーブル前後までの下落に見えるが、日時データでは86ドルまで下落した)
- 2016年以降は原油価格の上昇に伴ってロシアルーブルも反発した
- 2018年〜2019年は多くの新興国通貨が大きく下落する中、原油価格が堅調に推移したこともあり、ロシアルーブルは相対的に堅調な推移となった
- 2000年代~2010年代はロシアの外貨準備高が大幅に増加した:世界各国の外貨準備高ランキングの変化(1990年・2005年・2020年)
- 2020年2月、新型コロナウイルスの影響による世界的な景気低迷・原油需要減少懸念から原油価格が下落。さらに、2020年3月にOPECプラスの協調減産協議が決裂し、サウジアラビアとロシアが共に増産を表明したことで原油価格は更に急落。2020年4月にはWTI原油先物価格は一時マイナスとなった。これに連動する形でロシアルーブルも大幅に下落した。
- この間、ロシアの政策金利は大きく引き下げられ2020年7月には4.25%まで低下した
- 2020年5月以降、原油価格はリバウンドし、2021年7月には1バレル=70ドル台まで回復した。この間、ロシアルーブルは緩やかに回復した。
- 2022年2月、ウクライナ情勢の緊迫化によりロシアルーブルは1ドル=100ルーブルを超える水準まで下落した。
- その後、ウクライナ情勢に進展がない中、ロシアルーブルは反発した。原油価格大幅上昇の影響もあり2022年6月には2014年の完全変動相場制移行後の最高値水準となる1ドル=50ルーブル台まで上昇した。
ロシアルーブルと原油価格の比較チャート
- ロシアは世界有数の原油生産国であり、かつ政府歳入に占める原油関連のウェイトが大きいことから、ロシアルーブルと原油価格には高い相関性がある
- ロシアルーブルは「金利付き原油取引」と呼ばれることもある。(原油に投資してもインカム収入はないが、ロシアルーブルは原油と同じような動きをしながら高い金利も受取れる)
- 原油に投資しようと考える場合、一見、原油ETFが最もシンプルであるが、先物のロールコストが大きいことから実はあまり機能しない。そのため、原油への代替投資としてロシアルーブルの活用は有効と考えられる。【原油ETFの問題点についてはこちらを参照:原油(コモディティ)ETFは先物のロールがあるので注意が必要】
- ただし、注意点として2021年~2022年に発生したウクライナ情勢の緊迫など地政学リスクの顕在化により原油価格との相関性が低下することもある
関連ページ
ロシアルーブルと原油価格の関係性についてはこちらも参照してください!
ロシアの政策金利とインフレ率の推移はこちらを参照してください!
ロシアのソブリン格付けはこちら!
ロシアルーブルの分析はこちらを参照してください!
原油価格の長期推移と変動要因の解説はこちらを参照してください!