こちらのページでは中東のシリコンバレーと呼ばれるイスラエルの概要と株式市場・債券市場・為替市場のポイントについて掲載しています。
国土の半分以上が砂漠で人口も少ないイスラエルは隣国との争いを勝ち抜くためにテクノロジーを進化させてきました。
その技術をベースにした多くのスタートアップが誕生して、大きく成長しています。
また、国内の金融マーケットは株式が先進国、債券・為替が新興国の扱いとなっています。
詳細は下記をご覧ください。
まずは中東のシリコンバレーと呼ばれるイスラエルの概要から始めます。
イスラエルは中東のシリコンバレー
- 人口:882万人(日本の大阪府と同程度)
- 面積:2.2万平方キロメートル(日本の四国と同程度)
- 首都:エルサレム
- 1人当たりGDP:41,644ドル(2018年、世界23位)
イスラエルは中東のシリコンバレーと呼ばれています。
イスラエルは国土の半分以上が砂漠であり、隣国との争いは常に緊張感が高まった状態です。
生きていくために農業技術、軍事技術、サイバーセキュリティー技術等を高めていく必要があり、研究開発に対する取り組みの本気度は一般の国とはレベルが違います。
その技術をベースにした多くのスタートアップ企業が生まれ、世界的にも注目を集めています。
イスラエルは国民の教育水準が高く、軍事技術やサイバーセキュリティ技術を国策として国が支援しています。
小学生の頃から授業でプログラミングを学び、徴兵制度により18歳頃から2年~3年間、男女全員が軍に所属します。
ここで得たサイバーセキュリティ等のノウハウをベースに将来の起業に繋げるケースが多くなっています。
特に精鋭集団と言われる「8200部隊」の出身者はイスラエル・スタートアップ企業の中心になっていると言われています。
また、最も古くから進出しているインテルをはじめ、アップル・グーグル・マイクロソフト・フェイスブックなど多くのハイテク企業がイスラエルに研究開発拠点を置いています。
そのような環境もプラスに作用し、多くのイノベーティブな技術が生まれています。
イスラエル・スタートアップ企業で、テルアビブ証券取引所・米ナスダックに上場する企業や大手企業に買収(M&A)される企業が増えています。
また、イスラエル・スタートアップ企業の特徴としてIPOよりも買収(M&A)によりイグジット(出口)するケースが多くなっています。
さらにはテルアビブ大学・ヘブライ大学・テクニオン-イスラエル工科大学等、ハイレベルな大学が多く存在することもスタートアップを後押ししています。
近年、イスラエルの注目度が高まったことで、資金の出し手となるベンチャーキャピタルなどの投資家も豊富です。
このようにスタートアップ企業が成長できる環境が整備されている点がイスラエルの強みと言えます。
また、イスラエル経済は比較的安定性が高く、リーマンショック後の2009年は多くの国でマイナス成長となりましたが、イスラエルの実質GDP成長率は+1.0%とプラスを維持しました。
人口も安定的に増加しており、2000年以降、年間1.5%~2.0%の増加率を維持しています。
それでは次にイスラエルの金融市場について解説します。
イスラエルの株式市場・債券市場・為替市場(先進国?新興国?)
まず、イスラエルは先進国か新興国かどちらだと思いますか?
国のイメージからすると新興国のような気もしますが、1人当たりGDPは先進国並みの41,644ドルです。日本より上位となっています。
金融の世界においては株式市場では先進国、債券市場・為替市場では新興国と別々の扱いを受けています。
株式マーケットの代表的な指数であるMSCIは2010年5月からイスラエルをそれまでの新興国から先進国に引上げました。
債券マーケットの代表的な指数であるブルームバーク・バークレイズの指数では、新興国債券の現地通貨建て指数に組み入れられています。
ただし、新興国通貨では珍しく、経常黒字で低金利となっています。
イスラエルの株式市場
イスラエルの株式取引所は1953年に設立されたテルアビブ証券取引所がメインです。
その他、イスラエル企業は米国のナスダックに上場するケースも多くなっています。
米国以外からナスダックに上場している銘柄の数は中国に次いで2番目に多くなっています。
下記にテルアビブ35種指数の推移を掲載します。
現在、イスラエル株式に投資するETFは日本から投資できるものはありません。
現状ではこちらの投信が数少ない投資手段となります。
- ASIイスラエル株式ファンド(大和投信)
イスラエルの債券市場
上記の通り、イスラエル債券は新興国債券の指数である「ブルームバーク・バークレイズ・EMローカル・カレンシー・ガバメント・ダイバーシファイド指数」に組み入れられています。
上記指数については、同指数をベンチマークとするETF「SPDRブルームバーグ・バークレイズ 新興国債券(現地通貨建て) ETF (EBND US)」を参照してください。
イスラエルの国債格付けはS&PでAA−(2021年9月時点)と高い格付けとなっています。
その要因としては経常収支が黒字(下記「経常収支推移」チャート参照)であることや政府債務が少ないことがあげられます。
- 世界各国の国債格付けはこちらを参照:世界の国債格付け(ソブリン格付け)一覧
下記に参考としてイスラエルの政策金利の推移を掲載します。
1990年代は比較的高金利でしたが、現在は低金利となっています。
イスラエルの為替市場
通貨はイスラエルシェケルです。
まず対米ドルの推移です。
対米ドルのチャートではチャートが上に行くとイスラエルシェケルが安くなることを表します。
次に対円の推移です。
対円のチャートではチャートが上に行くとイスラエルシェケルが高くなることを表します。
イスラエルシェケルは2003年以降、対米ドル、対円共に堅調な推移となっています。
下記の通り、このころから経常収支がプラスで推移していることもイスラエルシェケルにとってプラスに作用していると思われます。
上記の通り、債券市場・為替市場では新興国として扱われていますが、経常黒字かつ低金利(低インフレ)であるため、通貨イスラエルシェケルは安定した通貨となっています。
【参考】イスラエル軍のエリート集団「8200部隊」
イスラエルでは兵役があり、18歳から全国民が2〜3年間、軍に属することとなります。
その中でも上位1%未満のみ(1万人に1人とも言われる)が採用される「8200部隊」はエリート集団として有名です。
8200部隊に所属する場合は2〜3年より長期になるケースもあるようです。
8200部隊はイスラエル国防軍のサイバー諜報部隊の位置付けで、世界トップクラスの諜報能力を有すると言われています。
ここでサイバーセキュリティ技術などを習得し、それを基に起業する出身者も増えています。
近年、8200部隊出身ということがブランドにもなっており、特にサイバーセキュリティ分野では8200部隊出身者の影響力が大きくなっています。