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知識・ノウハウ(コモディティ)

原油価格の見通し(特に供給サイドのコストから考える)

2016年8月5日

原油価格には株式のPERやPBRのようなバリュエーション指標がなく、適正価格を定めることは難しくなります。

こちらのページでは原油価格に関連する様々な知識の解説を掲載しています。

特に中段の「供給面から今後の原油価格を考える」では産油国の生産コスト・財政収支ベースのコスト・経常収支ベースのコストを掲載しており、これは原油価格の適正価格を考える上で最もベースとなりますので頭の中に入れておいて損はないと思います。

原油価格の推移

近年、原油価格の変動が大きくなっています。

  • 2014年6月:100ドル~110ドル
  • 2016年2月:26ドル
  • 2018年10月:76ドル
  • 2018年12月:42ドル
  • 2019年4月:64ドル
  • 2020年3月:20ドル(WTI原油先物価格は一時マイナスとなった)

原油価格の長期推移はこちらをご覧ください。

過去に遡ると原油価格は90年代はほぼ1バレル=20ドル前後で推移していました。

2000年代に入ると、中国やインドをはじめとする新興国の成長による需要拡大から価格が上昇し始め、2008年7月に1バレル=147ドル台をつけました。

その後、2008年9月のリーマンショックによる世界経済の低迷から、原油価格も下落を始め、2008年12月には1バレル=32ドルまで下落しました。

その後、原油価格は再度上昇し、2010年~2014年は80ドル~110ドルで推移していました。

2014年以降の推移は上記の通りです。

原油価格の下落要因

原油価格が下落する要因はいくつかありますが、長期的トレンドで重要なのは下記の2つです。

  • 世界経済の減速による需要減
  • シェールオイルの増産による供給増

2016年の大幅下落(1バレル= 110ドル→26ドル)は上記2つの要因が同時に発生したことで大きな下落となりました。

特にシェールオイルは従来、「生産コストが高く、急激な生産増はない」とみられていましたが、技術革新により生産コストは大幅に低下し、2020年時点で1バレル=40ドル以下でも採算の合うものも出てきているようです。

供給面から今後の原油価格を考える(財政収支ベースコスト・経常収支ベースコスト)

では、今後の原油価格はどうなるのでしょうか?

数年前のように1バレル=100ドルを超えて推移するのでしょうか?

90年代のように20ドル前後で推移するのでしょうか?

中長期で見れば全世界のエネルギー需要は拡大していくものと予想されます。

もちろん、太陽光など再生エネルギーが原油の需要を代替していくことが予想されますが、原油も一定の需要を維持するものと考えられています。

しかし、シェールオイルの開発が進み、供給が増加することも予想されます。

ただ、原油の供給サイドとしては、赤字になる価格では生産する意味はありません。

下記にあるように中東産油国の生産コストは非常に低く、1バレル=20ドル程度での十分採算が合います。

しかし、90年代と異なるのは、産油国はどの国も原油関連の収入を織り込んで国家予算(財政予算)を組んでいる点です。

下記にあるようにサウジアラビアを例に見てみると生産コストは1バレル=7ドルですが、90ドル以上でないと財政赤字になってしまいます。

また、60ドル以上でないと経常収支も赤字になってしまします。

一時的であれば問題ありませんが、長期間の財政赤字や経常収支赤字は許容できません。

oilprice_cost

他の産油国のデータも総合すると、産油国の財政収支(国家予算)ベースのコストでみた場合、1バレル=80ドル~100ドル程度でないと生産するインセンティブが働きません。

同様に経常収支ベースのコストでみた場合は1バレル=50~60ドルは必要ということになります。

もちろん、中東の産油国が減産等を行い価格調整を行っても、シェールオイルの技術革新が予想以上に進むことや、世界経済が予想以上に減速して需要が大幅に減少する可能性もあります。

特にシェールオイルの生産コストは劇的に低下していますので、原油価格が以前のように1バレル=100ドルまで再上昇するかというとそれは難しいと言わざるを得ません。

原油価格は目安となるバリュエーション(株式でのPER、PBR、配当利回り)がなく適正価格を予想することは難しい投資対象ですが、今回は生産再度のコストから考察してみました。

原油関連の投資商品

 原油価格に連動するETFは要注意

原油価格に連動する商品としてはETFがまず最初に思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。

ただし、原油ETFの場合は裏付け資産が現物ではなく先物になります。

その結果、ニュースなどで報道される原油価格と原油ETFの価格は大きく乖離することが多く、投資対象としては機能しません。

先物での運用の場合、必ず限月交代(先物のロール)の問題が発生します。

先物をロールする際に、同じ価格で乗り換えられれば問題ないのですが、多くの場合、期先(決済時期が後)の先物価格の方が高いので乗り換えるとロスが発生します。

特に原油価格に先高観がある場合はその傾向が強くなります。

原油に連動するETFや投信を購入して、原油価格が上昇したのに、思ったほど儲かっていないなと感じるときは、大半はこれが原因です。

原油価格が下落した際に、リバウンドを狙い原油ETFへの投資が増えますが、その後、原油価格がリバウンドしてもETFはあまり儲からないといったことがよく発生します。

詳しくは「ETFについて」の最下段【コモディティ関連の問題点について】に掲載しておりますので、そちらで確認してください。

エネルギー株に投資する投信

エネルギー株は原油関連の投資対象ですが、やはり値動きは原油よりも世界の株式市場に近い推移となってしまします。

よって、中長期的に原油価格が上昇したとしてもエネルギー株の動きは必ずしも同様とは限りません。

MLPに投資する投信

MLPの80%を占める中流MLPはパイプラインや貯蔵施設の利用料が収益源であり、エネルギー価格に直接連動しているわけではありません。

よって、原油価格が下落してもMLPの業績にそれ程悪影響はありません。

しかし、イメージ的な部分もあり、原油価格が下落する過程では原油価格に足を引っ張られてMLPのパフォーマンスが悪化することがあります。

このようにMLPが連れ安した局面でMLPのリバウンドを狙うことは有効です。

ただし、あくまで短中期の投資にしておいた方が良いでしょう。

ロシアルーブルは金利付き原油投資

ロシアの歳入は原油に依存している比率が高いこともあり、下記のチャートの通り、ロシアルーブルは原油価格に比較的近い動きとなっています。

短期的には乖離する場合もありますが、数年スパンでは概ね同様の動きとなっています。

また、原油に投資した場合はインカム収益はありませんがロシアルーブルに投資する場合は金利が付与されます。

2005年以降、ロシアルーブルの短期金利は多くの期間で4%~7%程度で推移しましたが、原油価格が下落した2014年~2015年は10%以上の高い水準となりました。

原油価格が下落するとルーブルが売られ、インフレ率が上昇し金利も上がる仕組みです。

そのため通貨が下落しても一定割合はカバーすることができます。

ロシアルーブル投資は言い換えると「金利付き原油投資」といえます。

具体的な投資対象としてはロシアルーブル建ての債券に投資する投資信託が良いと思われます。(商品例:短期ロシアルーブル債オープン、DWSロシアルーブル債券投信)

上記から、短期的には原油価格とかい離する可能性はありますが、ロールコストがなく、金利も付くロシアルーブルが原油投資のベストな選択と思われます。



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