原油価格が変動すると様々な金融商品に影響が起こります。
ここでは原油安でマイナスとなる金融商品とプラスになる金融商品を整理してまとめました。
原油価格が下落すると多くの資産クラスにマイナスの影響を与える一方、プラスになる資産クラスはほとんどないようです。
また、原油ETFはロースコストの問題がある為、投資対象としては注意する必要があります。
詳細は下記をご覧ください。
- 原油価格の長期チャートはこちら:WTI原油スポット価格 長期推移(チャート、変動要因)
原油安でマイナスになる金融資産
原油価格が下落すると株式・債券・通貨など様々な金融商品にマイナスの影響が発生します。
以下は原油価格下落によりマイナスの影響を受ける資産クラスです。
MLP
MLPはREITのパイプライン版のようなイメージです。
MLPの大部分を占める「中流MLP」はパイプラインや貯蔵施設を保有し、その使用料を受け取り、配当します。
そのため、本来、MLPのキャッシュフローは原油価格の影響をほとんど受けません。
しかし、イメージ的な部分もあり、原油価格が下落するとMLPも下落します。
原油安でMLPが大きく下落した時にリバウンド狙いの買いを行うことは有効ですので覚えておきましょう。(どちらかというと短期のリバウンド狙いに適しています)
- MLPについての詳しい内容はこちらをご覧ください:米国エネルギーMLPオープン(エネルギー・ラッシュ)
ハイイールド債・バンクローン
ここでのハイイールド債・バンクローンは米国のハイイールド債・バンクローンを想定しています。
ハイイールド債・バンクローンは共に格付けがBB以下の非投資適格級の債券となります。
ハイイールド債は固定金利、バンクローンは変動金利がメインです。
また、一般的にバンクローンは担保付となっています。
よって、バンクローンはハイイールド債の担保付・変動金利版といえます。
共に、発行企業にエネルギーセクターの企業が一定割合含まれます。
そのため、原油価格が下落するとエネルギーセクターのデフォルト率上昇が懸念され、ハイイールド債・バンクローンは共に下落します。
ただし、過去のケースを見ても原油安によってデフォルト率が長期に渡り大きく上昇する訳ではないので、ハイイールド債・バンクローンが大きく下落した場合は買いと考えて良いでしょう。
- ハイイールド債についての詳しい内容はこちらをご覧ください:フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド/米国ハイイールド債の投資環境
- バンクローンについての詳しい内容はこちらをご覧ください:バンクローン・オープン/バンクローンの投資環境
ロシアルーブル
ロシアは世界有数の原油生産国であり、政府歳入に占める原油関連のウェイトが高いことから、ロシアルーブルは原油価格と高い相関性があります。
かなり同じような動きとなることから、ロシアルーブルは「金利付き原油取引」と呼ばれることもあるくらいです。
よって、原油価格が下落するとロシアルーブルも下落します。
こちらも原油安の時にエントリーするには良い投資対象です。
ただし、2022年のウクライナ侵攻によるロシアルーブル安のように地政学リスクは高くなります。
- ロシアルーブルと原油価格の比較チャートはこちらをご覧ください:ロシアルーブル為替レート(円/ルーブル,ルーブル/ドル)長期推移(チャート・変動要因)
物価連動国債
日本の物価連動国債はコアCPI(生鮮食品を除く全国消費者物価指数)を参照していますので、原油価格の影響を受けます。
米国のインフレ連動債(TIPS)も原油価格を除いていないCPI総合を参照しています。
エネルギーを除くインフレ率は日本ではコアコアCPI、米国ではコアCPIとなります。
- 日米のCPIの違いについてはこちらを参照してください:日本の消費者物価指数 / CPI、コアCPI、コアコアCPI / 定義、長期推移、使い方
よって、原油価格が下落すると日本の物価連動国債も米国のインフレ連動債も下落します。
原油安でプラスになる金融資産
過去のデータ等を色々と分析してみましたが原油安で儲かる資産クラスは基本的に存在しないことが分かりました。
下記の資産クラス別リターンを見ても原油価格が急落した2015年は他の資産クラスのパフォーマンスも低迷しています。
原油価格が大きく下落するということは、世界的に景気がスローダウンしている可能性が高く、様々な資産クラスが下落することはある程度イメージできます。
その中で、上記の表にはありませんが「米ドル」が原油価格と逆相関になるという話は有名です。
その為、日本人が原油安のリスクヘッジを行うには米ドル債を保有するしかなさそうです。
- 原油価格と米ドルの関係についてはこちらをご覧ください:米ドル高だと原油安? / 原油と通貨の不思議な関係
また、原油安による影響が低い資産クラスとしてインドルピーがあげられます。
インドルピーは新興国通貨ですが、ブラジルレアル・メキシコペソ・ロシアルーブルなど一般的な新興国通貨と異なり、非資源国通貨となります。
よって、原油安によりインフレ率は低下し、インドルピーの上昇要因となります。
ただし、他の新興国通貨が下落する影響で一定の売り圧力も発生するため、プラスマイナスゼロとなります。
結果としてインドルピーは原油価格と低い相関関係(無相関)となります。
- インドルピーと原油価格の関係や比較チャートはこちらをご覧ください:インドルピーの特徴(新興国通貨+非資源国通貨)
よく、原油安は米国において減税と同じ効果で消費にプラスとなり、株価にとってもプラスと言われることがありますが、過去のデータを見るかぎり、必ずしもそうなるとは限らないようです。(消費関連株のみであればプラスになる可能性は高い)
このように原油価格が大きく急落する局面での資産運用は難しくなります。
唯一、米ドルが逆相関となります。
米ドル建て債券を保有すると原油安のリスクヘッジになりますので、一定以上の資産がある人は資産の20%~30%位は米ドル債で保有することをお勧めします。
ただし、米ドル建て債券でも上記に掲載したハイイールド債やバンクローンの場合は、原油安で下落しますので、リスクヘッジとして保有する際は原油価格の影響を受けにくく、リスクが低い投資適格社債やハイブリッド証券等がお勧めです。
最後に、原油安のタイミングでリバウンドを狙い原油ETFに投資しようとする人がいますが、原油ETFは先物に投資していることで多くの問題点を内包しています。
イメージ通りのパフォーマンスにならないケースが多いので注意してください。
原油ETFの問題点については下記で詳しく解説していますので参考にしてください。