こちらのページでは中国経済の状況を把握する上で役に立つ「李克強指数」について紹介します。
このデータは一般的なニュースではあまり取り上げられませんが、中国の実態を把握する上で役に立ちますので参考にしてください。
- 中国政府等が公表する一般的な経済指標についてはこちら:中国の経済指標チェックリスト
- 中国の債務の推移はこちら:中国の債務対GDP比率(総債務・企業・家計・政府・銀行)
李克強指数(りこっきょうしすう)とは
「李克強指数」は中国の第7代首相である李克強(りこっきょう)氏が総理就任前の2007年に国内総生産(GDP)よりも信頼できる数値として挙げた「銀行融資残高・電力消費量・鉄道貨物輸送量」の3つをもとに作られた指数です。
2010年にイギリスのエコノミスト紙によって紹介されてから、広範に用いられています。
- 銀行融資残高:40%
- 電力消費量:40%
- 鉄道貨物輸送量:20%
上記のウェイトで指数化されています。
「チャイナ・モメンタム・インディケーター」と呼ばれることもあります。
従来より、中国政府が公表するGDPなどの一般的な経済指標はデータが操作されていると言われており、信頼性は低いと考えられています。
一方、「銀行融資残高、電力消費量、鉄道貨物輸送量」はデータを操作しにくいと考えられることから上記の李克強(りこっきょう)氏の発言になったと考えられます。
よって、李克強指数は中国経済の実態を見る上で信頼性が高く、参考になるデータと言えます。他の一般的な経済指標と併せて観察することで中国の景気動向の分析を高い精度で行うことが可能となります。
李克強指数のチャート
李克強指数のチャートを掲載します。
- 2008年:リーマンショック
- 2015年:チャイナショック
- 2020年:コロナショック
過去の推移を見ると李克強指数が5.0を下回っている時は景気が悪く、10を上回っているときは景気が良いと言えそうです。
2009年は大きく上昇していますが、これは2008年11月に公表された「4兆元(当時のレートで約57兆円)の景気刺激策」による影響です。
李克強指数の注意点として、3つの指標のうち電力消費量と鉄道貨物輸送量は製造業の動向に影響を受けやすい指標です。
中国経済は構造変化により名目GDPに占める製造業のウエイトが低下し、サービス産業のウエイトが上昇しています。
李克強氏が3指数に言及した2007年はGDPに占める産業別ウエイトで製造業がサービス産業を上回っていましたが、2010年代に入りサービス産業が製造業を逆転しています。
今後、更にこの動きが進むと李克強指数が実体経済と乖離していく可能性がありますので注意してください。
もしくは、李克強指数は製造業のモメンタムを表す製造業指数と割り切って活用するのも1つだと思います。