こちらのページでは日本企業が発行した債券の中でデフォルトした事例について忘備録として記録しています。
日本の社債市場はBB格以下のハイイールド債がほとんど存在せず、ほぼ全ての債券がBBB以上の投資適格社債であることもあり、米国と比較してデフォルトの発生は少なくなっています。
一方、デフォルトが発生した際の弁済率(回収率)は極めて低いと言われています。
下記ではデフォルトした社債の「債務金額」や「弁済率(回収率)」も併せて掲載していますので参考にしてください。
日本企業の社債デフォルト一覧
日本における社債のデフォルト一覧です。(転換社債は含んでいません)
日本における戦後初の社債デフォルトは1998年日本国土開発(CBを含めると1997年ヤオハンジャパン)
1998年12月の日本国土開発が無担保公募普通社債で戦後初のデフォルト事例となっています。
ちなみに、転換社債(CB)も含めると1997年9月にデフォルトしたヤオハンジャパンの転換社債(CB)約374億円が日本の公募無担保債として初のデフォルト事例となります。(弁済率は11.6%)
- 転換社債の仕組みについてはこちらを参照:転換社債(CB)の仕組み・ポイント・発行事例を分かりやすく解説
よって、日本における戦後初のデフォルトといった場合「日本国土開発の社債」を指すケースと「ヤオハンジャパンの転換社債(CB)」を指すケースがあります。
- 社債における戦後初のデフォルト:日本国土開発(1998年12月)
- 債券(CB含む)における戦後初のデフォルト:ヤオハンジャパン(1997年9月)
日本ではデフォルト時の弁済率(回収率)は低水準
上記の社債デフォルト一覧をみると、一部例外はあるものの、日本において社債がデフォルトした場合はかなり低い弁済率(回収率)になると考えた方が良さそうです。
上記で触れた転換社債(CB)で初のデフォルトとなったヤオハンジャパンの転換社債(CB)の弁済率(回収率)も11.6%とかなり低い数値でした。
日本の債券市場全体でみると、デフォルト時の弁済率(回収率)は10%~20%が多いようです。
一方、2008年10月にデフォルトしたニューシティーレジデンス投資法人の弁済率(回収率)は100%となっています。
しかし、これは発行体が一般の企業ではなく、J-REITであることが大きな要因です。。
J-REITは開発行為を行うことはできず、純粋に不動産を保有しているだけの箱(ビーグル)になります
ニューシティーレジデンス投資法人は突発的な要因でデフォルトとなりましたが、保有不動産が無価値になった訳ではありません。
その為、通常、企業が破綻すると株式価値はゼロとなり、債券も一部毀損することになりますが、ニューシティーレジデンス投資法人の場合は、株式価値は大きく下落しましたが、ゼロにはなっていません。
その結果、債券も毀損することがありませんでした。
- ニューシティーレジデンス投資法人の破綻についてはこちらを参照:J-REITの破綻(ニューシティ・レジデンス)、J-REITの実質破綻(日本レジデンシャル)
マイカルのデフォルトは過去最大のインパクト
過去のデフォルトの中で最もインパクトがったのはマイカルのデフォルトです。(2001年9月)
マイカルの債務金額3,430億円の内、900億円が「個人向け社債」でした。
マイカルは「個人向け社債」における唯一のデフォルト事例です。
デフォルト債務の金額も過去最大で、数万人規模の投資家が保有していました。
更にマイカルの社債を保有していた明治ドレスナーアセットマネジメントのMMFが元本割れとなったことも大きなニュースとなりました。
厳密にはマイカルの社債を裏付けとしたリパッケージ債(仕組債の一種)に投資しており、最終的にはこのリパッケージ債への投資が適切でなかったとして運用会社である明治ドレスナーアセットマネジメントがMMFの元本割れに対して損失補填を行いました。
- MMFの元本割れ事例についてはこちらを参照:MMFの元本割れ事例を紹介(外貨建て・円建て共に元本割れ実績あり)
- リパッケージ債についてはこちらを参照:リパッケージ債【仕組み・メリット・デメリット】
マイカルの社債の弁済率(回収率)は個人向けが30%となり、法人向けと比較して個人が優遇された形となりました。
ちなみにマイカルの個人向け社債の発行条件と発行時の格付はこちらです。
2本発行され、共に4年債ですが、格下げの影響により2000年10月に発行された社債の方が高い利回りとなっています。
それでもJCR(日本格付研究所)・R&I(格付投資情報センター)共にBBB格の投資適格社債となっていました。
その後、1年も経たずデフォルトとなりました。
米国企業のデフォルト時の弁済率(回収率)は日本より高い傾向
米国は日本と比較してデフォルトの発生頻度が高くなっています。
日本企業のようにギリギリまで頑張ってなんとは自力再建を目指すのではなく、傷が浅いうちに早めのチャプター11(日本でいう民事再生法)を申請し、デフォルトするケースが多くあります。
そのため、弁済率(回収率)は日本のデフォルト事例よりも高くなります。
米国企業が発行する社債のデフォルト時の弁済率(回収率)は長期平均では40%前後と言われています。
- 米国ハイイールド債のデフォルト率・回収率はこちらを参照:フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド/米国ハイイールド債の投資環境