中国の株式市場は「上海」「深セン」「香港」の3市場があり、更にA株・B株・メインボード・GEM・科創板・創業板などがあります。
また、市場ではありませんが、H株・レッドチップと呼ばれる銘柄も存在します。
こちらのページではこれらを体系的に理解できるように解説していますので参考にしてください。
中国株式市場は「上海市場」「深セン市場」「香港市場」が存在する
中国の株式市場は大きく「本土市場(上海・深セン)」と「香港市場」に大別されます。
さらに本土市場には「上海市場」と「深セン市場」があり、それぞれに「A株」と「B株」が存在します。
「香港市場」は「メインボード」と「GEM (Growth Enterprise Market)市場」がありGEMは新興企業向けで日本で言うとマザーズのようなイメージです。
また、上海A株の「科創板」はハイテク企業向け市場で2019年7月22日にスタートしました。
深センA株の「創業板」は新興企業向け市場で「中国版ナスダック」や「ChiNext(チャイネクスト)」とも呼ばれています。
上記表にあるように銘柄数や時価総額の観点から一般的な投資対象となるのは、「香港のメインボード」「上海A株」「深センA株」となります。
元々、本土市場(上海・深セン)のA株とB株は、A株が中国国内投資家向け、B株が外国人投資家向けとなっておりました。
よって、以前は外国人が中国株に投資する場合は上海および深センのB株か香港市場に上場されている中国関連株(H株やレッドチップ)に投資するしか方法はありませんでした。
しかし、徐々に規制が緩和され、制限はありますが外国人もA株に投資できるようになってきてます。(日本の証券会社からも可能です)
そして、B株はすでに中国国内投資家に開放されています。
2014年以降、段階的に本土市場(上海・深セン)と香港市場の相互乗り入れが解禁されています。
外国人投資家が香港市場経由で本土市場(上海・深セン)のA株の売買が可能になると同時に、中国本土の国内投資家が本土市場(上海・深セン)を経由して香港市場の株式の売買が可能となっています。(ただし1日当たりの買付金額に上限が定められています)
規制が緩和されることは中国株式市場の国際化にとって重要です。
2015年に初めて本土市場(上海市場・深セン市場)の時価総額合計が10兆ドル(約1,000兆円)を超えました。
2018年6月1日から中国A株がMSCIエマージングに組み入れられています。(2018年5月31日の終値ベースで組入れ開始)
当初は大型株の234銘柄が対象となり2018年6月と2019年9月の2段階で組入れが進められました。
中国株は従来からMSCIエマージングに組入れられていましたが、それまでは香港市場のH株のみとなっていました。
「上海市場」と「深セン市場」のすみわけ
中国本土市場である「上海市場」と「深セン市場」について解説します。
2015年頃からから新規公開(IPO)市場では大企業は上海市場、ベンチャー企業は深セン市場という傾向が強まりました。
イメージとしては米国のNY市場とナスダック市場のような感じです。
深セン市場もかつては大企業の新規公開も行っていましたが、現在はほぼ行っていません。
また、深センA株市場は第1市場の「メインボード」(昔から深セン市場に上場していた大企業)と第2市場の「創業版」(新しい成長株)に分けられています。
深センは中国のシリコンバレーとも呼ばれています。
そして、上海市場も2019年7月22日に成長企業を誘致すべく、ハイテク企業向け市場である「科創板」をスタートしました。
ちなみに昔の日本の東証と大証のように2つの市場に上場することはできませんので、上海市場と深セン市場では重複銘柄は存在しません。(上海・深センと香港の重複上場はあります)
- 上海総合指数や深セン総合指数の長期推移はこちらを参照して下さい:新興国株式市場(中国・インド・ブラジル・ロシア)の長期推移
- 中国株に投資を行う際はPMIもチェックしておきましょう:中国のPMIは国家と民間で2種類存在する
「香港市場」の銘柄は「H株」「レッドチップ」「その他銘柄」に分類
香港市場の株式について解説します。
香港市場は「メインボード」と「GEM」の2つの市場がありますが、時価総額や取引の大部分は「メインボード」となります。
香港市場で取引される銘柄は「H株」「レッドチップ」「その他銘柄」の3つに分類されます。
H株(H Shares)は中国本土で登記されている純粋な中国企業で香港市場で上場している銘柄を指します。
レッドチップ(Red Chips stocks)は登記は中国国外だが中国政府系資本が30%以上を占め、主な事業資産が中国にあり、香港に上場している銘柄を指します。
レッドチップは中国の中央政府や地方政府のカラーが強い企業であるため、優良株を表すブルーチップを参考に、中国共産党のシンボルカラーである赤(レッド)からレッドチップと呼ばれるようになりました。
香港市場は時価総額ベースではH株とレッドチップが大きなウェイトを占めますが、これら以外にも多くの銘柄が存在します。
H株・レッドチップ以外の「その他銘柄」とは香港の地場企業や海外の企業で香港に上場している企業です。
ハンセン中国企業株指数(H株指数)は以前はH株のみが対象となっていましたが、2018年3月以降、レッドチップやPチップと呼ばれる銘柄も構成銘柄の対象となっています。
- Pチップ:売上高(または利益、資産)の50%以上を中国本土で得る企業でH株やレッドチップに該当しない銘柄
それに伴い、H株指数の構成銘柄数も40銘柄から50銘柄に変更となりました。
レッドチップ指数はレッドチップ銘柄のうち流動性の高い25銘柄を採用して算出されています。
ちなみに香港市場で最もメジャーな指数はハンセン指数ですが、こちらはH株とレッドチップを含む香港市場の50銘柄を採用して算出されています。
外国人投資家が純粋な中国株を購入する際はA株も徐々に解禁されていますが、現状ではまだH株(及びレッドチップ)がメインとなります。
A株市場と香港市場の重複銘柄による価格差が存在する
上記の通りA株市場と香港市場の相互乗り入れが解禁されていますので、今後は縮小していくと思われますが、両市場に重複上場している銘柄では同じ銘柄にもかかわらず価格差が存在します。
A株とH株は同一額面で議決権も同等の株式ですから本来価格が異なるのはおかしいのですが、実際には多くの銘柄でかい離があります。
ちなみに重複銘柄の時価総額はA株市場とH株市場の時価総額の合計となります。(時価総額のダブルカウントは発生しません)
下記は「広州汽車集団」の例です。
忘備録として、あえて乖離が大きかった2017年8月のデータを掲載しておきます。
A株とH株の株価を円ベースで比較するとA株が419.66円、H株が222.92円となります。
A株とH株の格差は419.66/222.92=1.88倍となります。
A株の方がH株より88%高くなっています。これをAHプレミアムと言います。
A株とH株の重複銘柄では多くがA株の方が高くなっています。
また、重複銘柄に限らず市場全体で見た場合でも、A株とH株ではA株のバリュエーションが割高になるケースが多くなっています。
A株は中国国内の投資家が中心で、H株はグローバルな機関投資家が中心と、投資家層が異なることが要因です。
こちらもA株市場と香港市場の相互乗り入れが進んでいくことで解消されていく可能性があります。
また、A株とH株は通貨も異なります。
人民元と香港ドルについては下記も参考にしてください。
「上海市場」「深セン市場」「香港市場」の取引時間
「上海市場」「深セン市場」「香港市場」の取引時間は①プレ・オープニング・セッション、②前場、③後場、④クロージング・オークション・セッションの4段階に分けられています。
「上海市場」「深セン市場」「香港市場」の取引時間の一覧です。
プレ・オープニング・セッションは初値を決めるために開かれます。日本株でいうところの寄り付き価格を決めるために通常取引の前に行われます。
一方、クロージング・オークション・セッションは終値を決めるために開かれます。
前場・後場は香港市場が「前場2.5時間・昼休み1時間・後場3時間」に対し、上海市場・深セン市場は「前場2時間・昼休み1.5時間・後場2時間」となっており、香港市場に比べて上海市場・深セン市場の取引時間は短くなっています。
ちなみに値幅制限は「上海市場」「深セン市場」が前日の終値から±10%(ストップ高+10%、ストップ安-10%)で、「香港市場」は米国と同様に値幅制限はありません。