こちらのページは「ブラジルボンドオープン」を例に「ブラジルレアル」のポイントやリスクを掲載しています。
大部分はブラジルレアル全般に共通する内容ですので、ブラジルレアルの見通しを分析する上で活用いただけます。
ブラジルレアルのポイントをまとめると下記の通りです。
- 高い金利水準
- 中央銀行がインフレ抑制を重視する為、実質金利も高い
- 長期的には高金利が通貨安を補う形となっており、トータルリターンでは見た目よりも悪くない
- リスク要因としてポイントになるのは「インフレ」「景気低迷」「財政再建」「政情不安」
詳細は下記をご覧ください。データや内容は随時、更新しています。
まず最初に「ブラジルボンドオープン」の商品概要から紹介します。
ブラジルボンドオープンの商品概要
実質的な運用会社
- イタウアセットマネジメント(委託会社:大和投信)
投資対象
- ブラジルレアル建て債券(ブラジル国債等)
- 最新のポートフォリオ利回りは月次レポートを参照:大和投信/ブラジルボンドオープン
商品組成上の特徴
- 毎月分配型に加え、分配金を出さない年1回決算型もあり
信託報酬
- 1.474%
ブラジルレアルに投資する上でのポイント・メリット
大きく下落したブラジルレアル
- ブラジルレアルは2015年~2016年頃にかけてインフレ率の上昇、財政収支悪化に伴う格下げ、国内景気の低迷、米国の利上げに係る資金シフトなど悪材料が重なり通貨は大幅に下落
- 円/レアルはリーマンショク前の2008年8月に1レアル=約70円の最高値を付けた後、リーマンショク後の2008年12月には約36円まで下落、その後40〜55円で推移していたが、2015年に入ってから大きく下落し、2016年2月に1レアル=27円台まで下落した後回復トレンドとなった
- 2018年3月以降、再度下落トレンド入りし、2020年には1レアル=18円台まで下落した
- ブラジルレアル(対円、対米ドル)の長期チャートはこちらを参照:ブラジルレアル為替レート(円/レアル,レアル/ドル)長期推移(チャート・変動要因)
ブラジルの高い利回り
- ブラジルレアルは主要使の中で相対的に高い利回りとなっている
- 組み入れ債券に物価連動国債が含まれているケースがある。物価連動国債の利回りにはインフレ分は含まれないで表示されるため、見た目の利回りは低めに表示されており、実際はより高い利回りとなる。(実際に物価が上昇すればインフレ分のリターンも享受できる)
高い金利収入は円高ブラジルレアル安を吸収してしまう
- 利回り8%で3年保有した場合、レアルベースでは約25%増えるため、その分、レアル安が進んでも損失を吸収できる。
- 仮に1レアル=25円で投資した場合、3年後の損益分岐点は1レアル=25円÷1.25=20円まで低下する
- 長期で保有すればするほど、円高レアル安に対する抵抗力がアップしてリスクが減少する
- 例えば、リーマンショック前のブラジルレアルが最高値であった2008年7月、1レアル=70円で投資し、2019年12月の1レアル=26.5円まで保有した場合でもプラスとなっていた
- 円/ブラジルレアルレートは70円から26.5円と半分以下になっているが、平均10%前後の金利収入があった為、債券や投信に投資していた場合でも十分プラスとなった
- 分かりやすい例として2008年7月17日に設定された「UBSブラジルレアル債券投信」は1レアル=68円の時に設定されているが、2019年12月に1レアル=26.5円でも設定来の騰落率は約+12%(分配金を出さない年2回決算型)となっていた。これはまさに高金利のメリットを表現していると言える。
- 外貨投資の円高抵抗力についてはこちらを参照してください:円高抵抗力でリスクを軽減/米ドル10年債「5%・120円」と「2.5%・100円」はどちらが有利?
投信を活用することでブラジルレアルを実質的に安い為替コストで両替できる
- 為替コストについて、日本の証券会社でレアル債を購入すると片道1円~2円の為替手数料がかかることが一般的。(1億円以上などの大口の場合は優遇もあります)
- 仮に手数料1円でも、1レアル=25円で計算すると、片道4%、往復で8%のコストとなる。
- 投資信託の場合は運用会社が機関投資家としてまとまった資金の取引をするため、ファンドの中での為替コストはかなり低い手数料率で行われている。ブラジルレアルでもおそらく0.5%以下と思われる。
- これはブラジルレアルだけでなくすべての通貨に言えることで、実質的な為替コストの軽減は投信の隠れたメリットといえる。
ブラジルレアルの高い実質金利
- ブラジルレアルは実質金利が高い通貨としても知られる。
- これはブラジル政府や中央銀行が過去のハイパーインフレの反省から、インフレ鎮静化を最重要視しており、多くの期間でインフレ率を大幅に上回る政策金利を適用している。
- 実質金利(政策金利-インフレ率)がマイナスの国も多いが、その場合、実質的に資産が目減りしていることになる。よって、実質金利が高いということはそれだけ投資するに値する通貨ともいえる。
- ブラジルの政策金利とインフレ率の比較チャートはこちら:金利とインフレ率推移(チャート・変動要因)【③新興国】
ブラジルのインフレ率低下はレアルにプラス
- インフレ率の低位安定はブラジルレアルにとってプラスに作用する
- 2015年11月~2016年2月は消費者物価指数(CPI)が10%を超える水準まで上昇した。これは2015年に入ってから電力、ガソリン、水道料金等の政府規制価格商品が大幅に値上げされたことが大きく影響していた。
- 2016/3月の消費者物価指数(CPI)が5か月ぶりに10%を下回り、その後も改善傾向となった
- 2017年1月以降、約2年ぶりにインフレ率が政府の目標値(4.5%±1.5%)の範囲内に収まってきた
- 2021年以降、世界的なインフレもあり、再度インフレ率が上昇
- ブラジルのインフレ率の最新チャートはこちら:金利とインフレ率推移(チャート・変動要因)【③新興国】
ブラジルのマクロデータ
- ブラジルを取り巻く環境は2003年頃と比較すると大幅に変化しており、経済規模(名目GDP)は世界のトップ10入りを果たしている
- その他では外貨準備高の増加、格付けの改善等、通貨の安全性に関する指標は2003年時とは大きく異なり、安定性は格段に増している
- 2003年からのマクロデータはこちら: 新興国マクロデータ推移
- 外貨準備高の推移はこちら:世界の外貨準備高の変化(1990年・2005年・2016年)
- ブラジルのソブリン格付けはこちら:世界の国債格付け(ソブリン格付け)一覧
ブラジルの資本収支は直接投資が中心で安定性は高い
- ブラジルの経常収支は恒常的に赤字であり、それを資本収支の黒字でカバーしている。
- 資本収支は直接投資と証券投資に分けられるが、ブラジルは直接投資の比率が高くなっている。
- 直接投資(不動産の取得、企業への出資)は証券投資(通常の株式や債券の取引)と比較して期間が長い投資であり、資金の動きが安定的になる。
- 同じ新興国の高金利通貨で人気のトルコ(トルコリラ)の場合は、経常赤字を資本収支の黒字が穴埋めする構図はブラジルと同じであるが、証券投資がメインであり、金融情勢が悪化すると資金の逆流が起こりやすく通貨としての安定性は低くなる。
ブラジルボンドオープンは条件が良い国内債を組み入れ
- 一般的にブラジル債券は「国内債」と「グローバル債」に分類される
- 国内債はブラジル国内の政策金利をベースに利回りが決定される
- グローバル債は日本をはじめとするブラジル国外で販売される債券で投資家の需要も加味されて利回りが決定するため、需要が高いときは利回りが低くなる。多くの場合、クローバル債は国内債と比較して利回りは低い傾向
- 日本の証券会社で販売されるブラジルレアル建て債券の多くはグローバル債である(一部国内債を販売している証券会社もある)
- 当ファンドは国内債が投資対象であることから、信託報酬等コストを考慮してもグローバル債を購入するより高い利回りとなるケースも多い
- 国内債にはグローバル債では少ない物価連動国債も多く発行され、投資対象の多様化が図れる
ブラジルレアルのリスク・デメリット
ブラジルレアルのリスクは主に下記の4つ。
2015年~2016年頃はこの4つのリスクが同時に発生していた。
インフレ率の高止まり
- ブラジルは歴史的にインフレ率が上昇しやすく、中央銀行はインフレ抑制を政策の中心としている。
- 過去、インフレ率が高止まりした局面ではブラジルレアルは大きく下落した
景気低迷(実質GDPマイナス成長)
- 特にインフレ率が高止まりしながら景気が悪化する「スタグフレーション」が発生するとブラジルレアルにとって大きなマイナスとなる
財政状況の悪化(格下げ)
- 年金改革などを実行できるかがカギ
政情不安
- 歴代の大統領により汚職が繰り返されてきた。
投資対象が同じ投信(類似ファンド)
- ブラデスコ ブラジル債券ファンド(分配重視型)(三菱UFJ国際投信)
- 新光ブラジル債券ファンド(アセットマネジメントOne)
関連ページ
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