もはや半導体がないと世の中が成り立たないと言っても過言ではありません。
投資の世界でも5G、AI、IOT、クラウドなど様々なテーマの中心に半導体があります。
しかし、半導体について説明を求められても中々難しいと思う方が大半ではないでしょうか。
こちらのページでは「半導体」及び「半導体の製造工程」について最低限必要の知識を分かりやすく解説しています。
また、主要な半導体製造装置の世界シェアも掲載しています。
投資において非常に役立つ情報ですので、是非ご覧ください。
半導体について分かりやすく説明
「半導体」とは電気を通す「導体」と電気を通さない「絶縁体」の中間の性質を備えた物質です。
低温時ではほとんど電気を通しませんが、温度が上昇するにつれて電気が通りやすくなる特徴があります。
半導体はパソコン・スマホはもちろん、テレビ・冷蔵庫などの家電、自動車・電車の交通インフラなど生活のほぼ全てに活用されています。
一般の方が半導体を理解するためにはパソコン(PC)を例に考えると分かりやすいと思います。
PCを分解すると分かるのですが、PCには大きく分けて3種類の半導体が使われています。
- ハードディスクドライブ(HDD)⇒ 最近はNANDフラッシュを使ったソリッドステートドライブ(SSD)が使われる
- メモリ(DRAM)
- プロセッサー(CPU)
PC関連の半導体といった場合、この3つをおさえておけばよいでしょう。
HDD・SSDはPCの電源を切っても消えない「長期記憶」が特徴です。
一方、DRAMは電源を切ると記憶が消えてしまいますが、高速に読み出し書き込み動作ができる「短期記憶」が特徴です。
プロセッサー(CPU)は人間で言うと物事を考える「頭脳」のような役割です。
私たちがPCにキーボードで入力すると、そのデータをDRAMが記憶し、CPUとやり取りすることでエクセルやワードなどが使えることになります。
このように生活に欠かすことのできない半導体ですが、どのように製造されているかを理解している人はそれほど多くありません。
また、半導体の製造に関連する上場企業は非常に多く、マーケットでもたびたび話題になります。
製造過程を理解することで半導体製造装置銘柄への投資の成功確率も高まります。
順番に受注が始まりますので、最初の方の工程の企業の受注状況を確認することで、その後の工程に関連する半導体製造装置企業の業績が予想できます。
株式投資においても、かなり役に立つので一度理解しておくと良いでしょう。
下記に半導体の製造工程をなるべく分かりやすく図解します。
半導体の製造工程(前工程・後工程)を図で解説【半導体製造装置の世界シェア】
半導体ができるまでの工程は大きく「前工程」と「後工程」に分けられます。
そして、各工程の中で具体的にどのような作業があるのかを下記においてできるだけ分かりやすく解説します。
まず「前工程」からです。
半導体の製造工程【前工程】
まず最初に前工程の流れを把握しやすくするため、イメージ図を掲載します。
下記に工程ごとの説明を掲載します。
シェアが掲載されている部分は当該工程に使用する半導体製造装置の世界シェア(2021年)です。
①ウエハー洗浄
【シリコンウエハーの汚れやゴミを除去し清浄にする】
②成膜
【配線やトランジスタ等になる薄膜層をウェーハ上に形成】
プラズマCVDシェア
- アプライドマテリアルズ:51%
- ラムリサーチ:32%
③フォトレジスト塗布(コータ)
【薄膜上に感光剤(フォトレジスト)を塗布】
※通常③コータと⑤デベロッパは一体化した製造装置となっていますので合わせて掲載します
コータ・デベロッパシェア
- 東京エレクトロン:89%
- セメス:7%
- SCREENホールディングス:3%
④露光
【回路を描いたフォトマスクを装置した露光装置を使用してUV光を当て、回路パターンを転写する】
もともと半導体露光装置メーカーは二コン、キヤノン、ASMLの3社しかありませんでした。
1990年頃は二コンとキヤノンで世界シェアの90%を握っていましたが、その後ASMLが躍進し、2005年頃にはASMLが世界シェア50%を握るまでになりました。
その後もシェアを拡大し、2010年代後半には90%前後のシェアとなりました。
さらに次世代技術であるEUV露光(Extreme Ultra-Violet:極端紫外線)の技術開発を二コンとキヤノンはあきらめており、全てEUV露光にシフトするとASMLが100%のシェアとなります。
EUV露光装置シェア
- ASML:100%
⑤現像(デベロッパ)
【露光した部分のフォトレジストを溶かし、露光されていない部分のフォトレジストのパターンを残す】
※シェアは上記③コータを参照してください
⑥エッチング
【腐食作用のある化学薬品などで膜を除去する】
ドライエッチング装置シェア
- ラムリサーチ:46%
- 東京エレクトロン:29%
- アプライドマテリアルズ:16%
- セメス:3%
- 日立ハイテクノロジーズ:2%
⑦レジスト剥離・洗浄
【不要になったフォトレジストを除去し、洗浄装置でウエハー上に残る不純物を除去する】
⑧プローブ検査
【ウエハー上のICチップの良・不良を電気的に検査する】
ウェハプローバシェア
- 東京エレクトロン:47%
- 東京精密:42%
次に「後工程」です。
半導体の製造工程【後工程】
こちらも、まず最初に後工程の流れを把握しやすくするため、イメージ図を掲載します。
下記に工程ごとの説明を掲載します。
シェアが掲載されている部分は当該工程に使用する半導体製造装置の世界シェア(2021年)です。
①ウエハーのダイシング(切り離し)
【ウエハー上に形成されたICチップを砥石(ダイサ)で1個ずつに切り離す】
ダイサシェア
- ディスコ:80%
②ワイヤーボンディング(配線)
【金線などでチップ側とフレーム側とを配線する】
③封入(モールド)
【ボンディングが終了したICチップを、機械的・化学的に保護するため、モールド樹脂(封止材)で密封する】
④仕上げ
【モールドが終了したICを最終製品に仕上げる工程】
⑤検査→完成
【完成後に電気的特性などを検査】
メモリテスタシェア
- アドバンテスト:51%
- テラダイン:40%
【参考】ムーアの法則が崩れると半導体業界・半導体製造装置業界はピンチ?
ムーアの法則は1965年にインテル共同創業者のゴードン・ムーア氏が唱えた「半導体の集積率が18ヶ月で2倍になる」という経験則です。
18ヶ月(1.5年)で2倍ということは3年で4倍、6年で16倍、9年で64倍、12年で256倍、15年で1024倍です。
若干のズレはありますが、50年以上もこの法則通りに半導体の性能が向上してきたことは本当に凄いと言えます。
しかし、業界ではムーアの法則が限界にきて崩れるのではないかと言われています。
元々は米国半導体工業会(SIA)が2015年に出した「2015年の半導体国際ロードマップ」というレポートで5年後の2021年にムーアの法則が崩れると掲載したことがきっかけですが、今後どうなるか注目です。
ムーアの法則は2000年代など、これまでも何度か限界が来ると言われましたが、それを技術革新で乗り越えてきた歴史があります。
半導体の性能向上がスローダウンするとさすがに半導体関連・半導体製造装置関連の銘柄にはマイナスインパクトになると思われます。
半導体関連株で構成されるSOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)はこれまで長期的に大きく上昇してきました。
- SOX指数の長期チャートはこちらを参照①:SOX指数の長期チャートと構成銘柄の変遷
- SOX指数の長期チャートはこちらを参照②:半導体株はまだ上昇するのか!SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)の水準をチェック
今後はどのような技術革新が生まれるかも含めて半導体の進化に注目です。