米国において貿易赤字は長年の問題となっています。
現在、米国の貿易赤字のうち、中国・日本・メキシコの3ヶ国に対する赤字でほぼ大半を占めている状況です。
こちらのページでは米国の貿易赤字の推移に加えて、その内訳として中国・日本・メキシコに対する貿易赤字の推移も掲載しています。
対日貿易赤字が問題となった1980年代~1990年代前半は、米国の貿易赤字のうち60%以上が日本向けでしたが、現在は70%以上が中国向けとなっています。
時代とともに内訳が大きく変化しています。
詳細は下記をご覧ください。
米国の貿易赤字は拡大傾向【国別では中国のウェイトが大きく日本は低下】
下記チャートは「米国の貿易収支」と「米国の貿易赤字額トップ3か国(中国・日本・メキシコ)に対する国別の貿易収支」です。
米国の貿易赤字の内、中国・日本・メキシコの3ヶ国で全体の90%前後を占めています。
- チャートの貿易赤字額の単位:百万ドル(1ヶ月当たり)
- データは季節調整済み
まず、全体感として米国の貿易赤字は長期的に拡大傾向です。(上記、青色のチャートです)
2006年8月のピーク時は678億ドル/月まで貿易赤字が拡大しました。
リーマンショック後に貿易赤字は一時的に縮小しましたが、再度拡大傾向となりました。
そしてもう1つ大きな傾向として表れているのは、対中国の貿易赤字が大幅に拡大している点です。
2019年頃には米国の貿易赤字に占める対中貿易赤字の割合が70%以上となりました。
中国が製造拠点としての地位を高め、米国の活発な消費で赤字が悪大している構図となっています。
上記チャートでも一部確認できますが、1980年代後半~1990年代前半は米国の対日貿易赤字が大きな問題となりました。
今の中国のように米国の貿易赤字の内、60%以上が日本向けのものとなっていました。
1985年のプラザ合意をはじめとして貿易不均衡を解消する施策が多く行われ、ドル円レートは1995年に1ドル=80円割れまで円高が進みました。
現在、米国の貿易赤字に占める日本の割合は10%前後まで低下しています。
日本企業が1995年や2011年等の円高局面で製造拠点を海外にシフトしたことや相対的に日本の製造業の影響力が低下したことが要因と考えられます。
現在、米国の貿易摩擦問題の第一の当事者は中国となっています。
トランプ政権誕生以降、米中貿易摩擦が大きな問題として金融市場の混乱要因となっていますが、このような状況が背景としてあります。
そして、米国の対中貿易赤字が高水準である理由として人民元が意図的に安くコントロールされていると言われることもあります。
確かに高度成長期に大幅に切りあがった日本円(JPY)ほど上昇していません。
- 人民元の長期推移についてはこちらを参照:人民元為替レート(円/人民元、人民元/ドル)長期推移(チャート・変動要因)
さらに上記チャートをみると、対メキシコの貿易赤字が拡大傾向であることも分かります。
これはメキシコが米国向けの製造拠点としての地位を高めた結果です。
2000年代に入り、世界中のメーカーがメキシコに製造工場を建設しています。
日本の自動車会社などもメキシコで米国向けの製品を製造しています。
月によっては赤字額で日本を上回る状況となっています。
また、上記3ヶ国以外ではベトナムに対する米国の貿易赤字が増加傾向となっています。
次に米国の輸入・輸出とその差額である貿易収支の推移を掲載します。
米国の貿易収支・輸入・輸出の推移
- こちらのチャートでは貿易収支(貿易赤字)を逆にして表示
- 青い棒グラフが上に行くほど貿易赤字が拡大
米国の経済規模が拡大していることもあり、米国の輸出と輸入は共に長期的に増加傾向です。
輸出と輸入の差額が貿易収支となりますが、上段でも説明した通り米国の貿易収支は旺盛な個人消費の影響もあり基本的に赤字です。
輸出と輸入は共に増加傾向ですが、輸入の伸びの方が若干大きい為、貿易赤字は拡大傾向となっています。
次に名目GDP対比の貿易収支の推移を掲載します。
米国の貿易赤字対名目GDP比(貿易赤字/名目GDP)推移
上記に掲載した通り、米国の輸出・輸入は右肩上がりで増加しており、特に輸入の伸びが大きいことから、貿易赤字額は長期的に増加傾向です。
ただし、米国の経済規模(名目GDP)自体も拡大していることから、名目GDP対比の貿易赤字はそれほど大きく拡大しているわけではありません。
最上段に掲載した貿易赤字額のチャートを見ると、2009年〜2019年で貿易赤字が大きく拡大しているように感じますが、名目GDP対比では2009年〜2019年もほぼ横ばいで実質的には悪化していない事が分かります。
米国の貿易赤字と米ドルの相関性を検証【貿易赤字が大きいときはドル安に注意】
上記は米国の貿易赤字額とドルインデックスの推移です。
ドルインデックスは複数の主要国通貨に対する米ドルの強弱を表す指数で、数字が大きくなると米ドルが強くなることを表しています。
上記チャートを見る限り、米国の貿易赤字の規模と米ドルは完全に連動している訳ではなさそうです。
ただし、判断が難しいですが、貿易赤字が一定水準を超えるとドル安圧力がかかっているようにも見えます。
よって、米国の貿易赤字が大きく増加した場合は、ドル安にシフトする可能性があると考えて良さそうです。(あくまで参考程度ですが)
- ドル円レートの予想・分析については「為替レートの予想・分析は実質金利差・購買力平価を活用」をご覧ください!
- ドル円レートの長期推移は「ドル円レート長期推移1971~(チャート・変動要因)」をご覧ください!
- 日本の国際収支の推移は「日本の国際収支の推移/内訳を分かりやすく解説」をご覧ください!