こちらのページは夏季オリンピック開催が株価に与える影響について検証しています。
具体的には「オリンピック開催決定~開催まで」と「開催後」の株価がどのように推移したのかをチャートで分かりやすく表示しています。
イメージでは「オリンピック開催決定~開催まで」はインフラ投資などが積極的に行われることで株価が上昇しそうですが、必ずしもそうではないようです。
逆に「開催後」の株価は堅調に推移することが多くなっています。
詳細は下記をご覧ください。
五輪開催で景気や株価は好転するか
オリンピック開催が決まると会場・宿泊施設の建設や道路・交通網の整備など大規模なインフラ投資が行われます。
特に夏季オリンピックは規模も大きくオリンピック開催による経済効果は非常に大きなものになります。
しかし、景気にプラスの作用がある点については疑いの余地はありませんが、好景気になったり、株価が大きく上昇するほどの影響があるのか疑問に感じましたので、過去の大会ではどうだったかを確認してみました。
それでは過去のオリンピック開催と景気・株価の関連性を検証します。
オリンピック開催国の景気と株価を検証
1996年のアトランタ五輪(米国)から2016年のリオデジャネイロ五輪(ブラジル)までの6大会で、開催国の実質GDP成長率と株式市場がどのような推移になったかを確認します。
通常、夏季オリンピックの場合、開催の6年~7年前に開催国が決定します。
よって、開催される10年前から開催後3年の合計13年間のデータを掲載します。
アトランタ五輪(米国)
アトランタ五輪(米国)は1990年9月に開催が決定、1996年7月に開催されました。
このころの米国経済は1990年8月から1991年3月にかけて景気後退期に突入し、一時的にマイナス成長となりました。
しかし、非常に短期間でGDP成長率が回復していることから、オリンピックの開催が決定したことによるプラス効果があった可能性があります。
- 米国株の長期チャートはこちらを参照:米国株(S&P500)長期推移(チャート・変動要因) / 30%以上の暴落は過去8回
シドニー五輪(オーストラリア)
シドニー五輪(オーストラリア)は1993年9月に開催が決定、2000年9月に開催されました。
開催決定の時点で実質GDP成長率は4%台と高い水準で、そのまま2000年9月の開催まで比較的高い水準をキープしました。
開催決定から開催日まで多くの期間で実質GDP成長率が3%~5%といった高水準を維持できたのはオリンピック開催決定によるプラス効果があった可能性が考えられます。
しかし、シドニー五輪(オーストラリア)で特徴的なのはオリンピック開催後に実質GDP成長率が急落している点です。
2000年から2001年にかけて景気が悪化し、実質GDP成長率が1%前後まで低下しました。
これは世界的に景気が悪化したことに加えて、オーストラリア国内ではオリンピック効果の反動があったことが原因と言われています。
ちなみにこの時期は豪ドルも大きく下落しました。
- 豪ドル長期チャートについてはこちら:豪ドル為替レート(円/豪ドル,ドル/豪ドル)長期推移(チャート・変動要因)
アテネ五輪(ギリシャ)
アテネ五輪(ギリシャ)は1997年9月に開催が決定、2004年8月に開催されました。
アテネ五輪(ギリシャ)の特徴は開催決定後にGDP成長率が大きく上昇し、開催後に大きく低下しています。
共にオリンピック開催の効果による影響が大きいと考えられます。
株価(アテネ総合指数)の推移はギリシャ固有の要因よりグローバル株式市場の影響を大きく受けていると考えられます。
北京五輪(中国)
北京五輪(中国)は2001年7月に開催が決定、2008年8月に開催されました。
ちょうどこの期間は中国をはじめとする新興国の経済成長が加速した時期です。
グローバル経済も好調であったことから、オリンピックによる効果がどこまであったかを評価することは難しいですが、中国の実質GDP成長率は10%超と極めて高い成長であったことから、オリンピック開催決定による効果もある程度はあったものと推測されます。
2007年までは株価も大きく上昇しました。
2008年はサブプライムローン問題が世界の金融市場を混乱させ、北京オリンピックが閉幕した直後の2008年9月にはリーマンブラザーズが破綻したことで、中国だけではなく世界の国々が景気後退に陥りました。
よって、北京オリンピック後の反動によるマイナス効果がどれくらいあったのか判断することは難しいと思われます。
ロンドン五輪(英国)
ロンドン五輪(英国)は2005年7月に開催が決定、2012年7月に開催されました。
成熟した先進国の開催であることから、オリンピック開催が景気に与える影響は限定的であったと考えられます。
実質GDP成長率が上下しているのはオリンピック開催によるものではなく、グローバル経済の動向によるものと思われます。
その為、オリンピック終了後の反動によるマイナス効果もなかったことが見て取れます。
リオデジャネイロ五輪(ブラジル)
リオデジャネイロ五輪(ブラジル)は2009年10月に開催が決定、2016年8月に開催されました。
開催決定時はリーマンショック(2008年9月にリーマンブラザーズが破たん)からの回復期であることから、開催決定後に実質GDP成長率が大きく上昇していますが、これは前年の下落の反動による部分が大きいと考えられます。
リオデジャネイロ五輪(ブラジル)の特徴は開催が近づくにつれて、期待とは裏腹に実質GDP成長率が低下していった点です。
開催時に最も景気が悪化しており、実質GDP成長率は−5%前後と非常に悪いタイミングとなりました。
新興国での開催のため、インフラ整備などで景気にプラスになる経済効果は大きかったと予想されますが、それ以上にオリンピック以外の要因が大きく、オリンピック開催によるプラス効果を実感できない形となりました。
2016年のブラジルを取り巻く環境は下記の通りでした。
- 資源価格の下落(原油価格が2016年3月に1バレル=25ドル前後まで下落)
- インフレ率が10%超まで上昇し、インフレ抑制のため政策金利を引き上げたことで景気がより悪化した(スタグフレーション)
- ルセフ大統領の汚職問題で政策が混乱(予定していたオリンピックの開会式等出席できず、閉幕直後に失職)
2016年はブラジルレアルも大きく下落しました。
- ブラジルレアルの長期推移についてはこちら:ブラジルレアル為替レート(円/レアル,レアル/ドル)長期推移(チャート・変動要因)
オリンピック決定後は必ずしも株価上昇とはならないが開催後は株価が上昇
オリンピック開催による経済効果は間違いなく存在します。
しかし、オリンピック開催決定だけで景気が良くなり株価が上昇するまでのインパクトはないようです。
リオデジャネイロオリンピック時のブラジルのように、五輪開催時に景気が最も悪くなるケースもあります。
よって、「開催決定後~開催」までの間は必ずしも株価は上昇するとは言えません。
しかし、オリンピック開催後は概ね株価が上昇しています。
これは参考になるかもしれません。
また、上記では触れていませんが、オリンピックイヤーは米国の大統領選挙が行われる年でもあります。
そして、大統領選挙は民主党・共和党が共に1期目の大統領を目指す場合と、どちらかが2期目の再選を目指す選挙の場合があり、この違いで選挙前の政策運営が大きく変わってきます。(2期目の再選を目指す場合は景気や株価に配慮した政策運営となります)
金融マーケットにおいて米国大統領選挙は最重要イベントであることから、オリンピック前後はその影響も受けている可能性があります。
- 米国の大統領選挙と株価の関係はこちらを参照してください:米大統領1期目は株価の大幅下落は起こりにくい【アノマリー発見】