こちらのページでは新興国(ブラジル・中国・インド・ロシア)の政策金利とインフレ率の比較チャートを掲載しています。
新興国はインフレ率の変動が激しく、高インフレは経済の混乱や通貨安を招くため、各国の中央銀行は政策金利を機動的に操作してコントロールしています。
- 主要国のインフレ目標はこちら:主要国のインフレターゲット(インフレ目標)の水準と採用時期の一覧
それぞれの比較チャートの下には箇条書きでポイントを掲載しています。
※データが取得できる範囲でできる限り長く期間を取っていますので、チャート期間は国ごとに異なります
ブラジルの政策金利とインフレ率の推移(ブラジルSelicターゲットレート、消費者物価指数)
- ブラジルは長年、高インフレに悩まされてきた歴史があり、ブラジル中央銀行はインフレの抑制を優先した高金利政策をとる傾向がある
- よって、インフレ率に対して相対的に政策金利が高く、実質金利が高めになる傾向にある(この点においては理論的に投資する価値がある通貨と言える)
- ブラジル中央銀行のインフレ目標は定期的に変更される(2026年:3%±1.5%)
- 2002年~2003年にかけてインフレ率と政策金利が共に大きく上昇しているが、この時は2003年のルーラ政権誕生を控え、投資家の間で債務問題に関する懸念が広がり、資本流出が拡大したことでブラジルレアル安が進み、インフレ率も大きく上昇した
- しかし、ルーラ政権誕生後は財政問題が改善し、経常収支も黒字化したことでブラジルレアル高が進み、インフレ率も中央銀行の目標レンジ内で推移した
- 2010年〜2014年まではインフレ率も安定し、ブラジルレアルも安定的に推移した。
- 2015年~2016年にかけてインフレ率と政策金利が共に大きく上昇しているが、この時は2016年のリオデジャネイロ五輪を控えている中、国内景気は低迷していたがインフレ率の抑制を優先し利上げを行った
- そのため、2015年~2016年のブラジルは高インフレ下で景気悪化となる、スタグフレーションと呼ばれる状況となった。さらに財政悪化(国債格下げ)と政局不安も加わり、最悪の状態であった。
- 利上げの効果により2017年に入りインフレ率は低下傾向となり、2017年9月にはインフレ率が過去最低の2.51%まで低下した。(同時に政局不安も改善に向かった)
- インフレが鎮静化したことでブラジル中央銀行は利下げを行い、国内景気も回復傾向となった。2019年10月には政策金利が5.0%まで低下した。
- 2020年2月以降、新型コロナウイルスの影響に対応すべく連続で利下げを行った。2020年8月にはブラジルの政策金利は2.0%まで低下した
- 2020年8月~2021年は政策金利がインフレ率を下回り(実質金利がマイナス)、ブラジルにとっては珍しい環境となった
- インフレ率上昇に対応するため、2021年3月以降、利上げ局面に入った
- 利上げの効果によりインフレ率は低下し、2023年6月にはブラジルのCPIは3.16%まで低下。2023年前半のブラジルCPIは同時期の米国・ユーロ圏・英国・日本を下回る水準となった。比較的インフレ率が落ち着いている中、政策金利は高水準で推移した。(政策金利のピークは2022年8月~2023年7月の13.75%)
- ブラジルレアルの見通し等についてはこちら:ブラジルボンドオープン / ブラジルレアルの投資環境・最新の見通し
- ブラジルレアルのチャートはこちら:ブラジルレアル為替レート(円/レアル,レアル/ドル)長期推移(チャート・変動要因)
中国の政策金利とインフレ率の推移(中国3ヶ月SHIBOR、消費者物価指数)
- 中国の政策金利は他の国と異なり「ローンプライムレート(貸出基礎金利、LPR)1年物」を政策金利としている
- マーケット金利としては上海銀行間貸出金利(SHIBOR)などがある。(政策金利とSHIBORの推移はこちら:中国の金利と債券マーケットについてポイントを解説)
- 上記比較チャートはマーケット金利である3ヶ月SHIBORを使用
- 中国のインフレ目標は3%
- インフレ率の変動は比較的大きい
- 2008年・2009年・2020年・2021年・2023年にはインフレ率がマイナスになった
- 短期金利はインフレ率を上回ることが多く、概ね実質金利はプラスで推移している
- 参考ページ:人民元為替レート(円/人民元、人民元/ドル)長期推移(チャート・変動要因)
インドの政策金利とインフレ率の推移(インド準備銀行レポレート、消費者物価指数)
- 2015年3月にインフレーション・ターゲット導入を表明、インフレ目標は4%±2% (2%~6%)
- インドは非資源国であるため、原油価格(資源価格)が上昇するとインフレ率も上昇する傾向が強い。ロシアが原油安→ロシアルーブル安→インフレ率上昇となるのとは対照的である。
- また、インドのインフレ率はボラティリティが高く、大きく変動する傾向がある
- 新型コロナウイルスの問題が表面化する前の2019年12月からインフレ率が政策金利を上回る状態が続いていたが、政府は景気回復を優先し、低金利政策を維持した。
- 2022年は世界的なインフレの中、インドも利上げを開始した。
- インドルピーの見通しはこちら:インドルピーの特徴(新興国通貨でありながら非資源国通貨)
- 参考ページ:インドルピー為替レート(円/インドルピー、インドルピー/ドル)長期推移(チャート・変動要因)
ロシアの政策金利とインフレ率の推移(ロシア政策金利、消費者物価指数)
- ロシア政策金利は2013年8月までは「Refinancing Rate」が採用されており、2013年9月から現在の「Key Rate(1週間レポレート)」が採用されている。上記チャートは合成チャートである。
- ロシアのインフレ目標は4%
- ロシアのインフレ率は不安定で2015年のように通貨安などが要因で大きく上昇するケースもある
- ロシアルーブルは原油価格との相関が高く、原油価格が下落するとルーブルも下落する傾向がある
- よって「原油安→ロシアルーブル安→インフレ率上昇」といった流れとなりやすい(インドが原油高→インフレ率上昇となるのとは対照的である)
- ちなみにロシアルーブルが完全変動相場制になったのは2014年11月からである
- 参考ページ:ロシアルーブル為替レート(円/ルーブル,ルーブル/ドル)長期推移(チャート・変動要因)