こちらのページは「米国エネルギーMLPオープン(エネルギー・ラッシュ)」を例に「MLP」のポイントやリスクを掲載しています。
大部分はMLP全般に共通する内容ですので、MLPの見通しを分析する上で活用いただけます。
MLPのポイントをまとめると下記の通りです。
- MLPは保有するパイプラインや貯蔵施設から得られる収益を利益の源泉とする
- 商品性はREITと同様の仕組みで、導管制の要件を満たせば法人税がかからず利益の大半を投資家に還元できる
- 高い利回りでインフレにも強い
- 中流MLP(貯蔵・輸送)の業績は原油価格の影響を受けにくく、安定性が高い
- ただし、原油価格が下落するとイメージからMLPも売られやすく、その場合は買いのチャンス
詳細は下記をご覧ください。データや内容は随時、更新しています。
まず最初に米国エネルギーMLPオープン(エネルギー・ラッシュ)の商品概要から紹介します。
米国エネルギーMLPオープン(エネルギー・ラッシュ)の商品概要
実質的な運用会社
- ニューバーガーバーマン(委託会社:三菱UFJ国際投信)
投資対象
- エネルギーや天然資源に関連するMLP
商品組成上の特徴
- 為替ヘッジありと為替ヘッジなしの2コース
信託報酬
- 2.108%
MLPのポイント・メリット
MLP(マスター・リミテッド・パートナーシップ)とは
- REITと同じような仕組みで、天然資源のパイプラインや貯蔵施設を保有し、そこから得られた収益を投資家に還元する。
- MLPの要件(総所得の90%以上を天然資源の探査・採掘・精製・運搬・備蓄等から獲得)を満たせば、法人税がかからず収益の大半を投資家に還元できる点でREITと類似している。
- MLPの市場規模は約50兆円超と比較的大きなマーケット。
MLPの安定した収益(特に中流MLPは安定したキャッシュフロー)
- 探査・開発(上流)や精製・販売(下流)ではなく、貯蔵・輸送(中流)がMLPの80%以上を占めている
- 貯蔵・輸送(中流)はパイプライン等の利用料であり、エネルギー価格変動の影響を受けにくく、キャッシュフローは安定している
- 利用料は大手企業相手の長期契約が一般的で、物価指数に連動する契約になっていることも多く、インフレリスクにも対応している
- 安定したキャッシュフローによりMLPの年間配当は対前年比でITバブル崩壊時やリーマンショック時も増配となった
エネルギー生産量は中長期的に増加
- 原油生産量(シェールオイル含む)と天然ガス生産量(シェールガス含む)は中長期的には増加していく見通し
- 原油や天然ガスの生産量が増えればパイプラインを通る量が増えるためMLPの収入は増加する
MLPの高い利回り
- MLPの利回りは米国REITよりも高く、米国ハイイールド債と同レベルかそれ以上であるケースが多い
原油価格は中長期的に安定へ
- 中東各国の原油の生産コストは多くの国が20ドル以下と低コストで生産が可能と言われている。
- しかし、各国は原油の販売収入をあてにした財政計画を立てており、財政赤字にならないための原油価格は50ドル~80ドル前後と高い水準
- 長期間の財政赤字は大きな問題になる為、原油価格の上昇は必要不可欠であり、各国は合理的な判断をしていくものと考えられる。
- 主要産油国の財政均衡価格はこちらを参照:原油価格を供給コストから分析(産油国の生産コスト・財政収支均衡コスト・経常収支均衡コスト)
原油価格の影響でMLPが下落した場合はチャンス
- 上記のとおり、MLPの業績は原油価格にそれほど影響されないにもかかわらず、これまでも原油価格の下落局面でイメージから下落するケースが何度かあった。
- このような場合には、市場が落ち着けばリバウンドする可能性は高いため購入するチャンスと言える。
- 原油価格の推移はこちらを参照:WTI原油スポット価格 長期推移(チャート、変動要因)
- MLPと原油価格の関係性は下記のチャートを参照
- MLP(トータルリターン)と原油価格の推移は下記を参照
- 例えば2007年と2020年を比較すると、インデックスは2007年の方が高い水準であるが、トータルリターンでは2020年の方が大きく上昇していることが確認できる。これはMLPの高い配当利回りによる効果である。
金利上昇・インフレに強いMLP
- MLPが所有するパイプラインのリース契約には通常、インフレ調整条項が付与されており、インフレ率が上昇するとMLPが受け取るパイプラインのリース料も上昇する形になってる。
- それとは逆に負債側の資金調達では長期固定金利で借入を行っている部分が多く、金利が上昇してもすぐに利払いが増えるわけではない。
- その結果、MLPはインフレ率や金利が上昇する局面には強い資産クラスといえる
MLPの銘柄例
- エンタープライズ・プロダクツ・パートナーズ
- 天然ガス、天然ガス液、原油の集積、輸送、精製などを手掛ける大手MLP
- テキサス州のバーネット・シェール田や米北東部のマーセラス・シェール田など多くの地域で事業の運営や、新規事業の計画をしている
- エナジー・トランスファー・パートナーズ
- MLPの大手エナジー・トランスファー・グループに属するMLP
- 主に天然ガスや天然ガス液の集積、処理、輸送、貯蔵などの中流事業を手掛ける。
- スペクトラ・エナジー
- 天然ガスの輸送、貯蔵、卸売り事業などを手掛ける天然ガスの企業
- グループ内のMLPであるスペクトラ・エナジー・パートナーズに出資
- 米国の北東部やカナダを主要な事業地域としている
エネルギー・ラッシュの実質的な運用会社
- ニューバーガーバーマン・LLC
- 1939年創業の独立系大手運用会社。米国、英国、香港、上海等に拠点を持ち、株式・債券・オルタナティブ等幅広い資産クラスの運用を行っている。
- MLP投資は2000年から行っている。
MLPのリスク・デメリット
MLPと原油価格は一定の相関がある
- エネルギー価格との相関性は高くないといわれているが、原油価格等が大きく下落する局面では、同様に下落する傾向にある
MLPは比較的ボラティリティが高い
- 2014/8~2016/2は大幅に下落(原油に連れ安したパターン)
- MLPの主要インデックスであるAlerian MLP Indexは2014/8の約540から2016/2の約200まで60%以上下落した。(この間、原油価格は1バレル=100ドルから26ドルまで下落した)
投資対象が同じ投信(類似ファンド)
- インデックスファンドMLP(日興アセット)
- ETFとETNを活用し、信託報酬0.81%と低コスト
- GS MLPインフラ関連証券ファンド(愛称:ザ・シェール)(ゴールドマンサックス・セット)
- MLP関連証券ファンド(三井住友トラスト・アセットマネジメント)
関連ページ
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MLP投資を行うベストなタイミング
MLPの業績(キャッシュフロー等)は原油価格が下落してもそれ程影響は受けません。
しかし、原油価格が下落するとイメージから売られて連れ安する傾向があります。
その後、原油価格が落ち着くとMLPもリバウンドします。
よって、キャッシュフローが右肩上がりのため長期投資をしても悪くはありませんが、最も効果的なのは、原油価格下落により連れ安したタイミングでエントリーし、ある程度リバウンドが取れたら売却するといった投資が良いと思います。