こちらのページでは2009年~2011年にかけて発生した「欧州債務危機」の際、各種債券・株式・REITがピークからピークまでどれくらい下落したかを掲載しています。
ショック時の最大損失を把握しておくことは、投資を行う上で非常に有益ですので参考にしてください。
「欧州債務危機」は「リーマンショック」や「ITバブル崩壊」ほど大きな混乱にはなりませんでした。
最初に、欧州債務危機の原因から解説します。
欧州債務危機の経緯
- 2009年10月、ギリシャの政権交代を機にギリシャの財政の決算が粉飾されていたことが判明。2009年の財政赤字見通しがGDP比3.7%から13.6%へと大幅修正。
- ギリシャ国債は格付けが引き下げられ、国債価格は大幅に下落した。
- ギリシャの債務不履行懸念から、ユーロは売られ、世界各国の株式市場も大幅に下落した。
- 当初はギリシャのみの問題で「ギリシャショック」と呼ばれていたが、その後アイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリアも財政に問題があるとの見方が広がり、これらの国の国債が大幅に下落するとともに、世界の金融市場に大きな悪影響を与える事態となった。
- これにより「欧州債務危機」と呼ばれるようになった。
- 結果的にEUとIMFがギリシャ、アイルランド、ポルトガルに金融支援を行い、ECB(欧州中央銀行)はギリシャ、アイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリアの国債購入を行い支援した。
欧州債務危機が発生した原因
- ユーロ圏内はドイツ、フランスのような工業も発展した先進国からギリシャ、ポルトガルといった産業基盤の弱い小国まで様々な国が存在する。
- 通貨が同じということは短期金利(政策金利)も同じということになる。
- また、ユーロの場合、通貨は統一されているが財政は各国の裁量となっている。よって、長期金利(国債利回り)は各国の信用リスクに応じてバラバラとなる。
- これらユーロ導入当初から言われていた制度的な欠陥は、経済が好調な時は問題化しなかったが、リーマンショック後の景気低迷の余波を受け表面化してきた。
- 特に1999年のユーロ発足から2008年のリーマンショック前までは、ユーロ圏の短期金利の目線がドイツの経済環境をベースにしており、ギリシャやスペイン等の国からみるとやや低すぎる水準であった。
- これによりギリシャやスペインではバブルが発生、財政規律の緩みも発生し、これが欧州債務危機につながったと考えられる。
各資産の最大下落率(欧州債務危機)【債券】
- 各資産クラスごとに最大下落率となった期間を掲載(よって、資産クラスごとに期間が異なる)
- インデックスは原則、米ドルベース
- 米ドルベースの最大下落率と円ベースの最大下落率を掲載
インデックス
- 世界債券:Citi Debt Capacity World Government Bond Index
- 投資適格社債:iBoxx USD Liquid Investment Grade Index
- 金融機関ハイブリッド証券:ウェルズファーゴ・ハイブリッド&優先証券指数
- 米ドル建て新興国国債:JP Morgan EMBI Global Total Return Index
- バンクローン:S&P/LSTA Leveraged Loan Total Return Index
- ハイイールド債券:The BofA Merrill Lynch US High Yield Constrained Index
ポイント
- 相対的に金融機関ハイブリッド証券の下落率が大きいが、これは金融機関ハイブリッド証券の場合、約半分近くが欧州の銀行・保険会社が発行体となっており、欧州債務危機の際は影響が大きくなった。
- この時期の欧州銀行ハイブリッド証券はいわゆるCoCo債ではなく、バーゼル2対応のハイブリッド証券であった。
各資産の最大下落率(欧州債務危機)【株式/リート】
- 各資産クラスごとに最大下落率となった期間を掲載(よって、資産クラスごとに期間が異なる)
- インデックスは原則、米ドルベース(米ドル以外の場合は下記「インデックス」に赤字で記載)
- 米ドルベース(現地通貨ベース)の最大下落率と円ベースの最大下落率を掲載
インデックス
- 米国株式:S&P500
- 米国リート:FTSE/NAREIT オールエクイティREIT TR指数
- 新興国株式:MSCIエマージングマーケット・インデックス
- 日本株式:TOPIX(円ベース)
- J-REIT:東証REIT指数(円ベース)
- 豪州REIT:ASX200REIT指数(豪ドルベース)
ポイント
- 米国株の下落率は20%未満であり、それ程大きな下落にはなっていない。
- あくまで欧州での混乱であったことと、リーマンショック後の金融緩和・景気回復局面であり、米国の実体経済にまで影響が及ばなかったことが要因。
- 日本株の下落率が比較的大きいのは、当時、円高が大きく進んでいたことと、2011年3月11日に発生した東日本大地震の影響が重なったことによる。
関連ページ
「欧州債務危機」以外のマーケットイベントにおける各資産クラスの最大下落率は下記を参照。