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知識・ノウハウ(リート)

地方銀行が私募REITを積極購入する理由(本業をあきらめたのか?)

2016年9月14日

こちらのページでは地方銀行が私募REITを積極的に購入していることについて、警笛の意味も込めて掲載しています。

(私募REITの商品性が悪いと言っている訳ではなく、地銀が買いすぎることが問題だと思っています)

私募REITはリーマンショック時にJ-REITが大幅下落したことを受けて、機関投資家の要望から2010年以降設立されました。

地方銀行にとって私募REITはボラティリティが低く、業務純益を嵩上げするには最適な金融商品です。

しかし、流動性には制限があり、不動産マーケットのリスクもあります。

銀行は信用創造を提供することをあきらめ、投資会社になろうとしているのでしょうか?

収益をかさ上げしたい地方銀行が私募REITを購入

地銀は業務純益にカウントされるREITを好む

日本は長期に渡って低金利が続いています。

地銀は従来、預金で資金を調達し、長期債を購入すれば一定のスプレッドは確保できましたが、近年はそのような状況ではありません。

貸出(融資)は伸びず、債券運用だけでは十分な収益を確保できません。

日本株はリスクも大きく、売買益が業務純益にもカウントされないことから積極的に投資する対象とはなりません。持ち合い解消もあり、どちらかというと縮小方向です。

その中で、J-REIT(上場REIT)に関しては売買益も業務純益にカウントされることから、これまでも一部の地銀が積極的に保有しておりJ-REIT市場で一定の存在感があります。

J-REITはボラティリティが高くVar管理には向かない

J-REITは上場されており流動性がある為、使い勝手の良い投資商品ですが、ボラティリティ(変動率)が大きいことが欠点となります。

特に下落時にボラティリティが大きくなる傾向にあります。

これは株式と比較して時価総額が小さいことが大きく影響しています。

多くの地方銀行はポートフォリオをVAR(バリュー・アット・リスク)というリスク管理手法で管理しています。

これが諸悪の根源です。

これはボラティリティが高くなるとリスクポジションを減少させなければならなくなる手法であるため、J-REITのように下落時にボラティリティが大きくなると売りが売りを呼ぶ現象が起きます。

実際、リーマンショックの際は地銀の投げ売りもありJ-REITの下落率は株式を上回りました。(リーマンショック時のJ-REITの下落率は最大で70%を超えました)

J-REITに投資していた金融機関は減損を余儀なくされ、大きな損失が発生しました。

私募REITは鑑定価格ベースで低いボラティリティ

私募REITはリーマンショックの経験を経て、2010年以降に設立されました。

リーマンショックを経験した地銀が積極的に私募REITを購入しています。

私募REITは名前の通り、上場しているJ-REITとは異なり、上場していないREITです。

上場していない為、J-REITのようにマーケットプライスはなく、価格評価は年1〜2回の鑑定価格ベースとなります。

価格変動が鑑定価格ベースですのでボラティリティはかなり低くなります。

例えばリーマンショックの際、J-REITは2600ポイントから700ポイントまで70%以上下落しましたが、不動産の鑑定価格の下落率はある程度の優良物件であれば大きくても概ね20%以内でした。

地銀の運用担当者としてはボラティリティが低く、減損リスクが小さく、それで4%程度の利回りが確保できる私募REITはありがたい商品と言えます。

地銀は私募REITのリスクには目をつぶって投資?

しかし、私募REITは当たり前ですが流動性は極めて低い商品ですので売りたいときに売却できないリスクがあります。(私募REITはほとんど実物不動産を保有しているのと同じイメージです)

一般的に私募REITには一定の解約機能がついていますが、一度に解約できる金額には制限があります。

マーケット環境が悪化しはじめたタイミングで解約しようとしても、思うように資金化できない可能性が高いと思われます。

今後、不動産市況が悪化すると、不動産融資が増えているという点に加えて、金融機関が直接、不動産関連商品を保有している割合が増えている為、金融不安につながりやすくなっており、注意が必要です。

銀行の本来の存在意義は融資によって信用創造を行うことです。

今のままでは単なる投資会社になってしまいます。

また、不動産投資について特段ノウハウがあるわけではありません。

金融庁はこの辺をしっかり規制するとともに、合併による再編を早く進めて欲しいものです。

日銀がJ-REITを購入している中では言い出しにくいかもしれませんが。



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