こちらのページでは法人が投資信託を保有する際、貸借対照表(B/S)のどの項目に掲載すべきかを解説しています。
投資信託の商品性(MMF等又は一般的な追加型株式投信)により2つのパターンがあります。
詳細は下記を参考にしてください。
法人が購入した投資信託の勘定科目は2パターン
一般的に法人が投資信託を保有する場合、大きく下記の2つの商品群に分けることができます。
①銀行預金の代替として基本的に元本割れがないMMF等
②債券・外債・株式・REIT等でリスクを取りながら高いリターンを目指す公募投信
もう少し正確に説明すると下記のとおりです。
①はMMFやCMF、FFFなどの呼び名で販売されている日々決算型の公社債投信
②は一般的に個人も購入している追加型株式投信
B/S上の勘定科目はそれぞれ異なり2パターンとなります。
ちなみに、上場企業でも投信を保有している会社は多いのでEDINETや企業サイトから有価証券報告書を見れば参考になります。
2008年頃までは有価証券報告書に保有している投信の銘柄が付属明細表という形で一部公開されていましたが、2009年頃から開示されなくなっていますので、2008年以前の有価証券報告書を見た方がイメージしやすいかと思います。
B/S上の勘定科目は一般的に下記のようになります。
①日々決算型の公社債投信(MMF等)は「流動資産」⇒「有価証券」⇒「その他有価証券」
②公募株式投信は「固定資産」⇒「投資有価証券」⇒「その他有価証券」(長期保有目的の株式等と同じ)
同じ「その他有価証券」でも流動資産の部と固定資産の部で全く異なるので注意してください。
まれに公募株式投信を①の【「流動資産」⇒「有価証券」⇒「その他有価証券」】に計上している場合もあります。
これは投資を本業もしくはそれに準ずる形で行っているケースです。(売買により利益を得る目的で投資信託を購入するケースです)
この場合は毎期の決算で損益をPL(損益計算書)にヒットさせて時価会計をします。ただし、この会計処理は例外的で一般的には上記に記載の①②のパターンです。
法人が保有する投資信託の決算期末の会計処理
①日々決算型の公社債投信(MMF等)
日々決算型の公社債投信(MMF等)は基本的に預金と同様です。
1億円購入した場合、決算時点のB/S(貸借対照表)に計上される金額も1億円のままです。
保有期間中の分配金は預金利息と同様に益金として計上されます。
⓶公募株式投信
公募株式投信は決算日の基準価格で時価評価されます。
基準価格10,000円の投信を1億円購入して、決算日に基準価格が15,000円になっていた場合、B/S(貸借対照表)に計上される金額は1.5億円となります。
ただし、「固定資産」の「投資有価証券」に計上されている投資信託の損益については、P/L(損益計算書)には反映されません。B/S(貸借対照表)の資本勘定で損益が反映されます。
よって、B/S(貸借対照表)の評価は時価評価ですが、P/L(損益計算書)上は含み損益のままとなります。
ただし、50%以上のマイナスとなった場合は、強制減損となりP/L(損益計算書)にも損失を計上する必要がでてきます。
また、30%以上のマイナスの場合で、一定期間に回復する蓋然性が低い場合も減損となりますが、一定期間に回復する蓋然性については解釈の仕方で変化するためグレーゾーンです。
感覚的には30%のマイナスで減損している法人は少ないように感じます。
ちなみに上記は一般的な原則であり、法人ごとに会計士の承認のもとで異なる会計処理をしているケースもあります。
散見されるケースとして、毎期P/L(損益計算書)にも損益を反映させるパターンと、逆にB/Sには全て簿価で計上し、一切時価評価しないパターンがあります。
そして、米ドル建てなど外国通貨建ての投信(外国籍投信)の場合については、基本的な取り扱いは円建ての公募投信と同じですが、為替レートの変動は毎期P/L(損益計算書)に反映させる形で時価評価するのが、原則的な方法です。
ただし、これも会計士の承認のもとで異なる会計処理をしているケースが多くあるようです。
継続性を担保していれば原則からはずれる処理でも認められるケースが多いようです。
参考:有価証券の保有目的による区分と期末処理
有価証券の保有目的による区分
売買目的有価証券:時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券
満期保有目的の債券:満期まで保有する意図をもって保有する社債その他の債券
その他有価証券:売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式および関連会株式以外の有価証券【一般的な余剰資金の運用は大部分がこちら】
子会社株式および関連会株式:子会社株式および関連会株式
保有目的区分に応じた有価証券の期末処理
売買目的有価証券:時価評価、当期の損益に反映
満期保有目的の債券:取得価格または償却原価で評価
その他有価証券:時価評価し評価差額は純資産(資本)の部に計上(時価が簿価を下回る場合のみPLにも計上する手法もあり)【一般的な余剰資金の運用は大部分がこちら】
子会社株式および関連会株式:取得原価で評価
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