こちらのページではトルコリラの長期チャートと変動要因を掲載します。
トルコリラは高金利通貨の代表格で高い金利が魅力ですが、「高インフレ・経常赤字・政治社会情勢不安」などの影響で為替レートは長期的に下落傾向にあります。
- トルコの分析はこちらを参照:新興国通貨の5つのチェックポイント
- トルコの経常収支の推移はこちらを参照:主要国の経常収支の推移【②新興国】
それではまず、円/トルコリラとトルコリラ/ドルの長期チャートから掲載します。変動要因は箇条書きで掲載しています。(下段の方では10年ごとに区切ったチャートを掲載し、変動要因を細かく掲載しています)
トルコリラ(TRY)為替レートの超長期推移
- トルコリラは2001年2月に変動相場制に移行した。変動相場制への移行直後は大幅なトルコリラ安となった。対円では2001年1月の1トルコリラ=170円前後から、2001年9月には80円前後まで円高トルコリラ安となった。対ドルでは上記のチャートを見るとそれほど下落していないように見えるが1ドル=0.67トルコリラから1ドル=1.6トルコリラと大きな下落となった。
- 変動相場制移行時の大幅下落以降、2000年代のトルコリラは対米ドルで比較的安定的な推移となった
- ー方、2010年以降は下降トレンドとなり大幅に下落した
- トルコはブラジルレアルなどと同様に高金利で、日本からの債券投資が一般的になった2010年以降も市中金利は概ね10%前後となっている
- よって、トルコリラに投資した場合、ある程度通貨が下落してもトータルリターンではかなり挽回できることになる
- 2018年~2024年は高インフレ時に利下げを行うなど、エルドアン大統領による介入の影響等によりトルコリラは大きく下落した(高インフレにも関わらず国民の人気を得る為に利下げを行った)
- 2024年3月、1トルコリラ=4.5円まで下落
- トルコリラのの特徴についてはこちらを参照:主要通貨の特徴一覧【資源国通貨・新興国通貨・中国関連通貨のどれに該当するか】
トルコリラ(TRY)の歴史を詳細に解説
円/トルコリラ・トルコリラ/ドルの為替チャートと変動要因【2000年代】
- トルコリラは2001/2/22から変動相場制に移行した
- 変動相場制移行前は米ドルとユーロに対して徐々に切り下げていく為替制度を採用していた
- しかし、政局の混乱が金融市場にも波及し株価と通貨が大暴落し、中央銀行の為替介入でも終息せず、最終的にトルコリラは変動相場制に移行することとなった
- 事実上の通貨切り下げで、変動相場制移行直後は大幅に下落した。対円では1トルコリラ=170円前後から80円前後へ下落。対ドルでは1ドル=0.67トルコリラから1.6トルコリラまで下落した。
- 2002年以降は安定した動きとなり、2002年から2008年のリーマンショック前までは対米ドルでは緩やかに上昇して2008年8月には1ドル=1.14トルコリラまで上昇した。この間は主要貿易先である欧州を始めとする世界的な好景気の影響を受け、トルコも実質GDP成長率は平均7%前後の成長を達成した。
- その後、2008年にリーマンショックが発生し世界的なリスクオフムードの中、他の高金利通貨とともにトルコリラも売られ、1ドル= 1.2トルコリラから1ドル=1.7トルコリラまで短期的に下落した。その後、2009年から2010年にかけてはややリバウンドし、1ドル=1.5トルコリラ前後で安定的に推移した。
円/トルコリラ・トルコリラ/ドルの為替チャートと変動要因【2010年代・2020年代】
※2020年以降のデータも当面こちらに追加していきます
- 2010年以降、トルコリラは対米ドルで下落トレンドとなった。
- 2010年初めの1ドル=1.5トルコリラから2017年12月には1ドル=4.0トルコリラまで大幅に下落した。
- トルコリラの一般的な下落要因
- 2010年以降はギリシャ、アイルランド、ポルトガル等を中心とした欧州債務危機の影響で欧州経済が低迷
- 2003年以降経常赤字が続いていること、対外債務の規模が大きいこと、インフレ率が高くなりやすいこと、地政学リスクなどが恒常的にトルコリラ安が継続している要因となっている
- そして、2018年に入りトルコリラは一段安となった。2018年8月には1ドル=7.0トルコリラまで下落した。対円では1トルコリラ=15円台をつけた。(上記チャートは月次データのためそこまで下落しているように見えないが、日次ではそこまで下落している)
- 2018年の大幅下落は①米国との対立激化、②エルドアン大統領による中央銀行への介入、③米国の利上げ、④高インフレなどが要因
- 特に2018年9月〜2019年1月にかけてはインフレ率が20%を超える水準まで上昇した。インフレ抑制のため、トルコ中央銀行は景気が良くないにもかかわらず政策金利を20%超まで引き上げた。
- 2019年に入り徐々にインフレ率が低下、一時的に経常収支が黒字化し外貨準備高も増加したことでマクロ環境はやや改善した(2019年9月にはインフレ率が10%を下回った)。それに伴い2018年後半から2019年にかけて、トルコリラは安定的に推移した。
- 2020年2月以降、新型コロナウイルスの影響によりマーケットがリスクオフとなりトルコリラは下落した。
- 世界中の中央銀行が利下げを進める中、インフレ抑制・トルコリラ防衛の為、2020年9月、2%の利上げを行った(政策金利8.25%→10.25%)。更に2020年11月には政策金利を15%まで引き上げた。その効果もあり、2020年後半のトルコリラは下げ止まりの動きを見せた。
- 2021年3月エルドアン大統領は、インフレ抑制のために利上げを行っていたアーバル中央銀行総裁を更迭した。利下げ観測が高まりトルコリラは下落した。(2018年に続く大統領による中央銀行への介入)
- 2021年9月~2021年12月は高インフレ下にもかかわらず、エルドアン大統領の意向で利下げを行った結果、トルコリラは大きく下落。
- その後も多くの期間で実質金利(名目金利-インフレ率)がマイナスで推移、2022年~2024年も下落トレンドとなった。
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