こちらのページでは「ブラジルレアル」為替レートの長期チャートと変動要因を掲載しています。
ブラジルレアルの歴史が全て分かります。
ブラジルレアルは金利が高いことから日本でも人気の通貨です。金利が高い分、多少レアルが下落しても金利でカバーできます。そういった意味では長期投資に向いている投資対象とも言えます。
また、ブラジルレアルの特徴として「新興国通貨」としての側面と「資源国通貨」としての側面があります。
また、近年は「中国関連通貨」としての側面も現れてきています。
- ブラジルレアルの特徴についてはこちらを参照:主要通貨の特徴一覧【資源国通貨・新興国通貨・中国関連通貨のどれに該当するか】
それではまず、円/レアルとレアル/ドルの長期チャートから掲載します。変動要因は箇条書きで掲載しています。(下段の方では10年ごとに区切ったチャートを掲載し、変動要因を細かく掲載しています)
ブラジルレアル(BRL)の超長期チャート(円/レアル、レアル/ドル)
- ブラジルは1960年代〜1970年代にブラジルの奇跡と呼ばれる経済発展を遂げた
- しかし、1980年代〜1993年まで、債務危機をきっかけとした高インフレに悩まされていた。1993年の財政赤字は対GDPで60%、インフレ率は2500%、名目金利は7000%という異常な事態となっていた。
- その後、1994年に実施された「レアル・プラン」により安定化に向かった
- ブラジルレアルは1999年1月より変動相場制に移行した。それまでは対米ドルでペッグされていた。
- 上記のチャートで対円では大きく下落しているが、トータルリターンで見た場合、金利収入が大きく、見た目よりも投資パフォーマンスは良い
- 【トータルリターンの例】例えば、リーマンショック前の高値である2008年8月に1レアル=70円でレアル債(レアル債投信)を購入し、1レアル=26円となった2019年9月まで保有した場合、為替差損は60%以上の損失となっているが、金利収入も含めたトータルリターンはプラス(約10%前後)となる。(高金利と長期投資の威力と言える)
- 参考:ブラジルボンドオープン / ブラジルレアルの投資環境・最新の見通し
- ブラジルレアルを分析する際のポイントとして「インフレ率」「財政問題」「政局不安」「資源価格(中国景気)」「米ドル金利」があげられる
ブラジルレアルの詳細な推移は下記をご覧ください。
ブラジルレアル(BRL)の歴史を詳細に解説【10年毎チャート】
円/レアル・レアル/ドルの為替チャートと変動要因【1990年代】
- 1994年7月1日、「レアル・プラン」により米ドルにリンクした新通貨レアルが導入された(それまでの通貨はクルゼイロ・レアル)
- これにより長年の懸案であったハイパーインフレは収束したが貿易赤字が拡大した
- 1997年のアジア通貨危機・1998年のロシア危機の影響で新興国市場からの資金逃避が発生した。ブラジル中銀はレアルの防衛に努めたが支えきれず、1999年1月に変動相場制に移行した。同時にインフレターゲットを導入し、当初のインフレ目標は8%±2%に設定された。
- 1999年1月の変動相場制への移行後、レアルは1ドル=1.2レアルから1ドル=2レアルまで大きく下落した
円/レアル・レアル/ドルの為替チャートと変動要因【2000年代】
- 2001年1月から2002年10月にかけて1ドル=2.0レアルから1ドル=4.0レアルまで大きく下落した(チャートは月次ベースのため4.0レアルまで下落していないように見えるが2002年10月に約4.0レアルまで下落した)
- 2001年1月から2002年10月にここまで大きく下落したのは下記の要因が複合的に発生したことによる
- インフレ率が急騰しピーク時17%前後まで上昇
- 2001年12月、アルゼンチンのデフォルト発生
- ITバブル崩壊による世界的な景気悪化
- 2003年のルーラ政権誕生を控え、投資家の間では債務問題に関する懸念が広がり、資本流出が拡大した(ルーラ政権は結果的に成功したが、当初は懸念が強かった)
- 2003年1月のルーラ政権誕生以降、財政と国際収支を健全化する政策を推進したことや、世界的な好景気の影響で輸出が拡大し経常収支が黒字化したことなどの影響でレアルは大きく上昇した。
- 2002年10月の1ドル=4.0レアルからリーマンショック前の2008年8月には1ドル= 1.5レアル前後まで上昇した。
- リーマンショックによる世界的なリスクオフムードのなか、新興国通貨全体が売られた影響でブラジルレアルは2008年9月から2009年1月にかけて1ドル=1.5レアルから1ドル=2.5レアルまで急落した
- 対円では1レアル=70円から1レアル=35円まで下落した(上記チャートは月次ベースのため1レアル=40円前後までの下落になっているが、日時ベースでは1レアル=35円まで下落)
- これは上記の通り対米ドルが1ドル= 1.5レアルから2.5レアルに下落したことに加え、円/ドルレートが1ドル= 110円から1ドル=90円前後まで円高になったことが要因である。
円/レアル・レアル/ドルの為替チャートと変動要因【2010年代・2020年代】
※2020年以降のデータも当面こちらに追加していきます
- 2010年~2011年8月頃まではレアルは堅調に推移し、1ドル= 1.5レアル前後まで上昇した。ブラジル経済への期待から海外より資金流入が活発化した。
- この間、ブラジル政府はレアル高による景気悪化を懸念し、レアル高抑制の為、ドル買い・レアル売りの為替介入を行うと共に、金融取引税(IOF)を段階的に導入した。
- 金融取引税(IOF)は外国人が米ドルなどの外貨をブラジルレアルに両替して本土のブラジルレアル建て株式や債券を購入する際に税金を課すもので、最も高いときではレアル建て債券を購入する際、6%の金融取引税(IOF)が課されていた。(つまり、レアル債を買うのに6%の税金を支払う必要があった。それくらい海外からの投資意欲が強かった時期である。)
- その後、レアルは下落トレンドとなり、2016年1月頃まで長期低迷した
- 2015年9月には1ドル=4.24レアルまで下落した
- レアルが大きく下落した要因は下記の悪材料が同時に重なったためと考えられる
- 米国の利上げ観測
- ブラジルのインフレ率が上昇(一時10%以上まで上昇)
- 景気悪化(ブラジルの実質GDP成長率がマイナスとなった)
- 財政悪化による国債の格下げ
- 政局不安(リオオリンピック直後の2016年8月31日、ルセフ大統領は弾劾裁判の結果、失職した)
- 資源価格の下落(原油価格は1バレル=100ドル超から25ドル前後まで大幅に下落)
- 2016年に入り高金利政策の効果から、インフレ率が低下、それに伴いレアルもリバウンドした
- 2016年5月、テメル大統領が就任。ブラジルにとって最重要問題である年金改革に取組み、年金改革法案が承認・成立したが、テメル大統領自身の汚職問題などの影響で2018年、法案は棚上げされた。(ブラジルの年金は50代から受給できる上に給付水準も高いなど極めて優遇されており、財政赤字の最大の要因となっていた)
- 2018年は米国の金利上昇やブラジル大統領選挙による政局不安、更には上記の年金改革が進まなかった事が嫌気されレアルは下落した。
- 2019年は米中貿易戦争による世界的な景気悪化が懸念され新興国通貨は下落基調となった
- 2019年1月、ボルソナロ大統領が就任。2019年10月、年金改革関連法案が成立した。(年金支払廃止年齢を男性65歳・女性62歳に変更)
- これにより、ブラジルレアルは反転すると思われたが、同時期に隣国アルゼンチンのデフォルト危機が発生し、足を引っ張られる形となった。ブラジルレアルは低位で安定推移となった。(ちなみにアルゼンチンは過去何度もデフォルトを経験しており、直近では2001円12月にもデフォルトを経験した。上記2000年代のコメントを参照。)
- 2019年12月11日、政策金利を当時では過去最低水準の4.50%に引き下げ
- 2019年12月11日、S&Pはブラジル国債の見通しを安定的からポジティブに引き上げ、2年以内の格上げの可能性を示唆した【2000年代~2010年代にかけてブラジルの外貨準備高は大幅に増加した:世界各国の外貨準備高ランキングの変化(1990年・2005年・2020年)】
- 2020年2月以降、新型コロナウイルスの影響によるリスクオフで新興国通貨が下落。ブラジルレアルは2020年10月に1ドル=5.75レアルまで大きく下落した。
- この間、2020年2月~8月にかけて政策金利を段階的に引き下げ、2020年8月には2%まで低下。また、ブラジルの新型コロナウイルス感染者数が世界的にも高水準で推移したことでブラジルレアルが大きく下落した。
- 2021年4月以降、新型コロナウイルスの新規感染者数がピークアウトの兆しを見せてきたことや利上げの効果でブラジルレアルは下げ止まりをみせた
- 2021年~2022年にかけて利上げを行い、政策金利は2022円8月に13.75%まで上昇した。この間、ブラジルレアルは堅調に推移した。
- 2023年8月、インフレ率の低下に伴い、利下げを開始した。(0.5%の利下げを行い政策金利は13.25%)
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