ETFや投資信託で高配当株に投資するものが多く設定されています。
通常のインデックスより高配当株の方がパフォーマンスが良いのか疑問に思ったのでここで検証してみました。
米国株と日本株の代表的な高配当株ETFを取り上げて一般的な指数であるS&P500やTOPIXと比較しています。
結論から申し上げると、必ずしも高配当株の方がパフォーマンスが良いとは言えないようです。
マーケット環境により高配当株(バリュー株)が優位になったり、グロース株が優位になったりします。
- 金利環境によるバリュー株とグロース株の変化はこちらを参照:金利の上下によるバリュー株・グロース株の理論株価の変化
詳細は下記をご覧ください。
米国の高配当株(バリュー株)ETFのパフォーマンス比較
米国株の高配当株(バリュー株)ETFとして「iシェアーズ好配当株式ETF(DVY)」を取り上げます。
「iシェアーズ好配当株式ETF(DVY)」のトラックレコードは2002年からありますが、ここではより長期の比較を行うために「iシェアーズ好配当株式ETF(DVY)」の参考インデックスである「Dow Jones U.S. Select Dividend Index」を活用してS&P500と比較します。
下記は1992年からの「ダウ・ジョーンズセレクト配当込指数(Dow Jones U.S. Select Dividend Index)」【高配当株】と「S&P500指数(トータルリターン)」【米国株全体】の比較チャートです。
1992年1月~2018年2月の長期チャートでは高配当株(バリュー株)がS&P500を大きく上回っています。
1992年1月を100とすると2018年2月には高配当株(バリュー株)が1900、S&P500が1128です。
26年間という長期ですが約19倍と約11倍ですのでかなり大きな差となっています。
これを見る限り、高配当株(バリュー)のパフォーマンスは良いと言えそうです。
では次に2009年1月からの比較チャートを掲載します。
2009年1月からではほぼ同じようなパフォーマンスとなっています。
若干、S&P500の方が上回っています。
これを見ると高配当株(バリュー)のパフォーマンスは必ずしも良いとは言えなさそうです。
2000年代は米国の長期金利が高水準で高配当株(バリュー)優位のマーケット環境であり、2010年代は米国の長期金利が低下傾向でグロース株優位のマーケット環境であったことが上記の主な要因です。
また、高配当株のパフォーマンスが良かったことで、その事実が広がり、高配当株投資を行う人が増えたことが足元のパフォーマンス悪化を招いている面もあります。
日本の高配当株(バリュー株)ETFのパフォーマンス比較
次に日本株の高配当株(バリュー株)を確認してみます。
日本株の高配当株(バリュー株)ETFとして「iシェアーズMSCIジャパン高配当利回りETF(1478)」を取り上げます。
「iシェアーズMSCIジャパン高配当利回りETF (1478)」のトラックレコードは2015年からと短いため、「iシェアーズMSCIジャパン高配当利回りETF(1478)」の参考インデックスである「MSCIジャパン高配当利回りインデックス」を活用します。
下記は1992年からの「MSCIジャパン高配当利回りインデックス」【高配当株】とTOPIX(トータルリターン)【日本株全体】の比較チャートです。
こちらも上記の米国高配当株(バリュー株)と同様に1992年1月~2018年2月の長期チャートでは高配当株(バリュー株)がTOPIXを大きく上回っています。
1992年1月を100とすると、2018年2月には高配当株(バリュー株)が331、S&P500が155です。
次に直近の比較です。
上記の米国株は2009年1月からのデータで比較しましたが、日本株は過去5年で比較しました。
(2009年1月からでは分かり易いデータにならなかったので5年で比較してみました)
過去5年の比較ではかなり同じような推移となっています。
さらに僅かですがTOPIXの方が高いリターンとなっています。
上記の米国株と同じパターンです。
日本株の高配当株(好配当株)も米国株と同様に長期では高配当株(好配当株)のパフォーマンスが良いが、直近では優位性はないといった結果となりました。
配当貴族指数についての分析
連続増配企業の株式で構成される「配当貴族指数」というインデックスがあります。
米国株のS&P500配当貴族指数は25年以上連続増益、日本株のS&P/JPX配当貴族指数は10年以上連続増益または安定した配当を維持しているの銘柄が対象銘柄となります。
高配当株(好配当株)とは少し性格が異なりますが、「配当」というキーワードで繋がっていることから念のため確認したところ、パフォーマンスの特性は高配当株(好配当株)と同じような形となりました。
長期では大きくアウトパフォームしているが直近では優位性がなくなっています。(上記と同じようなチャートになるので掲載しません)
高配当株(好配当株)のパフォーマンスについてのまとめ
長期のパフォーマンスでは高配当株(バリュー株)の優位性がみられましたが、直近数年の比較では優位性はなく、S&P500やTOPIXとほとんど同じ動きになりました。
日米ともにITバブル時の2000年前後に高配当株(バリュー株)のパフォーマンスが悪化しており、成長株が優位なマーケットでは高配当株(バリュー株)が劣後することが分かります。
また、2010年代に入ってからも高配当株(バリュー株)の優位性がなくなっていますが、これは長期金利が低下傾向で成長株優位のマーケット環境であったことに加えて、高配当株(バリュー株)のETFやファンドが増加していることも要因の1つと考えられます。
今後、高配当株(バリュー株)の優位性がなくなっていることが周知となり、ETFやファンドが減少すれば、再度、高いパフォーマンスになる可能性もあります。
また、金利が長期的に上昇していくような環境が来た場合も、成長株よりバリュー株が選好され、高配当株(バリュー株)のパフォーマンスが回復すると思われます。
最後に、高配当株(バリュー株)などのパフォーマンスをチェックする際は、長期の比較のみだと紛れてしまうことが多いので、必ず足元のパフォーマンスも確認しましょう。