こちらのページでは「野村PIMCO・世界インカム戦略ファンド」を例に債券型バランスファンドのポイントについて掲載しています。
「野村PIMCO・世界インカム戦略ファンド」のマザーファンドは「PIMCO Income Fund」で同一戦略ファンドが国内でも多く販売されています。
下記では投資対象となっている様々な債券の概要についても解説していますので参考にしてください。
野村PIMCO・世界インカム戦略ファンドの商品概要
実質的な運用会社
- ピムコ(委託会社:野村アセット)
投資対象
- 世界の債券
商品組成上の特徴
- 4コース
- Aコース:年2回分配+為替ヘッジあり
- コース:年2回分配+為替ヘッジなし
- Cコース:毎月分配+為替ヘッジあり
- Dコース:毎月分配+為替ヘッジなし
信託報酬
- 1.8114%
PIMCOインカム戦略のポイント
債券のみのバランスファンド / マーケット環境に合わせてアロケーションを変更
- 米国債、先進国債券、投資適格債、モーゲージ証券(政府系・非政府系)、ハイイールド債券、バンクローン、新興国債券など様々なクレジットの債券に分散投資
- クレジット環境や金利環境を分析し機動的にアロケーションを変更していく。
- ただし、仮にピムコのマーケット見通しが外れても、株式や為替は組み入れていないため影響はそれほど大きくならない。
- 下記の図をみると、リーマンショック後の混乱時は米国債の比率を40%まで高めてリスク回避している。その後、景気が回復するタイミングで徐々に米国債を減らし2011年にはポジションをゼロまで落とした。
ダウンサイドに強く、リターンも高水準
- マザーファンドは2007年3月から運用を開始。
- リーマンショック後の2008年~2009年にかけてハイイールド債やバンクローンが30%前後の下落、投資適格債でも15%程度下落している中、ほぼ横ばいで切り抜けており、抜群のダウンサイドリスクマネジメントを発揮。さらにその後の景気回復時も着実にリターンを獲得した。
<参考データ:各資産の最大下落率(リーマンショック)> - 設定来の年率リターンはコスト控除前で9%台後半であり信託報酬控除後でも8%程度となっている。それに対しリスク(標準偏差、バラツキ)は5%と低く、抜群のシャープレシオとなっている。
- ダウンサイドに強く、安定的な値動きとなっており、期待リターンも高いことから、為替ヘッジあり(Aコース、Cコース)でヘッジコストを負担してもある程度の利回りが得られる。
- 円ヘッジコストが低い時は円債代替の商品としても最適。また、ヘッジ無しは富裕層のコア商品としても最適な商品。
金利リスクをコントロール
- 米国の金利が上昇しそうな局面では米ドル債のデュレーションを短期化することに加え、金利が上昇しない他の通貨に金利リスクを分散する
- また、バンクローン、非政府系モーゲージ債などの変動金利型の債券にシフトすることで金利上昇リスクに対応する
- デュレーションについての解説はこちら: 債券のデュレーションについて分かりやすく解説
分散されたクレジットリスク
- ハイイールド債、バンクローン、モーゲージ債、新興国国債など幅広いジャンルのクレジット関連に分散投資
- 企業向けの債券だけでなく新興国の国債や個人向けローンであるモーゲージ等、性格の異なるクレジットに投資することでリスクが軽減される
- 例えば日本の投資家にとってなじみのあるハイイールド債やバンクローンなどの企業向け債権のみに投資した場合、2015年~2016年は原油価格の大幅下落によるエネルギーセクターに対する懸念で10%以上下落したが、モーゲージ債や新興国国債は直接的に影響がないため下落しなかった。その結果、当ファンドは安定した基準価格の推移となった。
ピムコが運用
- ピムコは債券専門の運用会社。
- 債券のアクティブ運用残高は約150兆円で圧倒的世界No1。
- マクロ経済予測と高い分析力に定評あり
- 1987年~2006年までFRB議長を務めたアラン・グリーンスパンが2007年~2012年にかけてピムコと経済分野のコンサルティング契約を結びアドバイザーを務めた
- 同様に、2006年~2014年までFRB議長を務めたベン・バーナンキが2015年にピムコのアドバイザーに就任した
- バーナンキ以外では英国元首相・元財務大臣のゴードンブラウン、欧州中央銀行(ECB)前総裁のジャンクロード・トリシェもアドバイザリーボードに名を連ねており米国・英国・欧州という主要債券マーケットのキーマンの情報を運用に活用している
同じマザーファンドを使った別商品が国内に複数あり
- 三井住友・ピムコ・ストラテジック・インカムファンド
- 新光ピムコ・ストラテジック・インカム・ファンド
- PIMCOインカム戦略ファンド
投資対象債券について
米国債(米国政府関連債)
- 信用力が高く、安全性が高い。
- マーケット環境が悪化した局面でポートフォリオのリスクを低下させるために使われることが多い。
- リーマンショック後はポートの約40%までウエイトを高めた。その後の回復局面で徐々にウエイトを減らした。
先進国債券
- 先進国の政府や政府機関、企業が発行する債券。
- 信用力は高いが利回りはやや低めになる。
投資適格債社債
- 企業が発行する債券でBBB格以上のもの。
- 信用力は高いが利回りはやや低めになる。
米国政府系モーゲージ証券
- 政府系機関が発行する住宅ローン担保証券。
- ファニー・メイ(連邦住宅抵当金庫)、フレディ・マック(連邦住宅金融抵当金庫)、ジニーメイ(連邦政府抵当金庫)の3機関の証券がある。
- 信用力は政府系金融機関である為、米国国債と同等のAAA。
- 証券の市場規模が大きく流動性が高い
- ファニー・メイ、フレディ・マック、ジニーメイについてはこちらをご覧ください:ジニーメイ、ファニーメイ、フレディマックについての分かりやすい説明
新興国債券
- 新興国の政府や政府機関、企業が発行する債券。
- 先進国の債券と比べると信用力は低いが利回りは高くなる。
ハイイールド債
- 企業が発行する債券でBB格以下のもの。
- 信用力が低い分、利回りは高い。
バンクローン【変動金利】
- 銀行がBB格以下の企業に対して貸し出すローン。(ハイイールド債と同レベル)
- 担保付である為、デフォルトが起こっても高い回収率を誇る。(平均70%の回収率)
- 変動金利で設定される。
- よってハイイールド債券の担保付で変動金利版の証券。
米国非政府系モーゲージ証券【変動金利】
- 非政府系機関が発行する住宅ローン担保証券。
- 政府系と比べて信用力が低い分、利回りは高い。
- 変動金利で設定される。
- 多くはリーマンショック前に組成されたもので、当初AAA等で発行されたが予想以上のデフォルトで債券が毀損しているため、格付けは低下している。(B格やC格)
- しかし、それ以上に債券価格が下落しているため当ファンドでは多くの期間で組入上位となっている。
- PIMCOが投資する非政府系モーゲージ証券のイメージとしては、リーマンショック後に住宅ローンプールのデフォルトが多く発生したため、既に理論的な額面が80まで低下しているが、債券価格はさらに低く60程度で推移しており、理論値よりも大幅に割安な状態となっているもの
PIMCOインカム戦略のリスク・デメリット
- 新興国債券やハイイールド債、バンクローンなど低格付けの債券も多く組み入れるため、クレジット環境が悪化した場合は影響を受ける可能性あり
- ピムコのマーケット見通しが外れた場合、影響を受ける可能性あり
- マスターファンドは2007年3月の設定来で平均年率10%弱のトラックレコードとなっているが、この期間は世界的に金利低下局面(債券価格上昇局面)であり、今後も同じ水準のパフォーマンスを上げることができるかは分からない面がある
- 円ヘッジのコースは日米金利差か拡大するとヘッジコストが上昇する為、パフォーマンスが低下する(ヘッジコストについての詳しい説明はこちら:ヘッジコストは金利差とベーシス(ドル需要)で決まる 外債投資を阻む壁 米金利上昇 ドル調達コスト急拡大~日経新聞記事~)
- マザーファンドの運用資産残高が増加したことでリーマンショック時のような小回りが利かない可能性がある。よって、今後のマーケット混乱局面では以前より下落率が大きくなる可能性がある。
関連ページ
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