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債券・仕組債

デュアルカレンシー債(順デュアル )【仕組み・メリット・デメリット】

こちらのページでは「デュアルカレンシー債(順デュアル )」について事例を交えながらポイントを詳細に解説しています。

一般的にデュアルカレンシー債(2重通貨債)は、「払込み」「償還」「利払い(クーポン)」が異なる2種類の通貨で行われる債券のことを言います。

その中で「払込み」と「利払い(クーポン)」が円建て、「償還」が外貨建てのものをデュアルカレンシー債(順デュアル)(そのままの名前ですが)と呼んでいます。

こちらのページではこの順デュアルについて解説しています。

今回例として挙げた「デュアルカレンシー債(順デュアル)」は償還時に一定までの円高水準であれば円建てで償還し、一定以上の円高になった場合にのみ米ドルで償還するタイプの商品です。

ドル償還の時は為替の含み損を抱えることになり、円償還の場合は円100%で償還され相対的に高い利回りの運用となります。

一方、「払込み」と「償還」が円建て、「利払い(クーポン)」が外貨建てのものをリバースデュアルカレンシー債(逆デュアル)と呼んでいます。

また、リバースデュアルカレンシー債の発展型としてレバレッジを活用したパワーリバース・デュアルカレンシー債(PRDC債)という仕組債もあります。

デュアルカレンシー債のまとめ

下記では「デュアルカレンシー債(順デュアル)」について発行事例を使ってポイントを解説しています。

デュアルカレンシー債(順デュアル)の発行事例

債券タイプ

  • 仕組債

通貨

  • 円(額面100円)

対象アセット(インデックス)

  • 米ドル

条件

  • 期間:1年
  • クーポン:3.0%
  • 償還時参照レート:spot-10円(100円)
  • 米ドルスポットレート:110円
  • 償還時に1ドル=100円/ドルより円高にならなければ3%のクーポン、額面100円で償還されます。
  • 償還時に1ドル=100円より円高になった場合は米ドルで償還されます。この際の為替レートは110円でドル転となるため、円高による損失が急に表面化することになります。

デュアルカレンシー債組成フロー

  • 組成する際、対象通貨の金利水準が高く、為替レートのボラティリティ(変動率)が高いと条件が良くなります。
  • デュアルカレンシー債の組成では、「償還時の参照レートをどこまで円高水準に設定するか」と「クーポン水準」を総合的に判断して組成します。他の多くの仕組債でも同様ですが、5億円以上など大口の場合はオーダーメイドで好みの条件の組成が可能です。

デュアルカレンシー債(順デュアル)の良い点・メリット

若干の円高はOK

  • 極端な円高にはならないと思うが、多少の円高の可能性は否定できないと思われている方にマッチする商品です。
  • 円安・円高共に大きく動かないだろうという考えをお持ちの方にもマッチする商品です。それに加えて、長期的には円安ドル高の見通しを持っている方がベストとなります。
  • 10円までの円高リスクを排除しながら3%の利回りを享受できます。
  • 仕組債の中では6ヶ月や1年など比較的短い期間でも組成できることが多い商品です。
  • 為替のボラティリティが高い時に組成すると良い条件になります。
  • 期間中、一時的に10円を超える円高になっても償還前の判定時に10円以内の円高まで戻っていれば額面100円で償還されます。(ノックイン型の場合は一度でも10円を超える円高になるとドル償還となります)
  • 万が一、大きく円高に振れて米ドルで償還されても、最終的には円安になるという長期的な見通しを持っていれば、償還後、米ドルで保有し、円安を待つことができます。通常、円と比較して米ドルは金利水準が高いため、円安を待つまでの間は相対的に高い利回りで運用することができます。

商品性はシンプル

  • デュアルカレンシー債(順デュアル )は仕組債の中では商品性がシンプルです。
  • リスクも為替リスクに限定されます(発行体のクレジットリスクは除く)ので、一般の投資家でも判断がしやすいと思います。

デュアルカレンシー債(順デュアル)のリスク・デメリット

一定以上の円高でリスク(含み損)が表面化

  • 上記の発行事例では10円以上円高になった場合、突然10円の損失が表面化してしまいます。
  • 為替の判定日は満期日近辺であるため、その後償還された米ドルは含み損を抱えている可能性が高くなります。
  • よって、米ドルで償還される可能性を考えると、長期的には米ドル高のマーケット見通しを持っていないとデュアルカレンシー債(2重通貨債 )の投資には向かないということになります。

円安時のリターンを享受できない

  • 一定の為替リスクを負う商品ですが、円安による為替差益のメリットをすべて放棄した商品設計となっています。
  • 円安メリットを放棄する分、上記の例であれば10円までの円高リスクは抑制されることになります。
  • 悪い言い方をするとリターン限定・リスク無限大の投資となります。このパターンの商品は継続的に投資を行なっているとトータルでは損をする可能性が高くなります。為替レートの水準などを分析して、タイミングをみながら投資することが大切です。

デュアルカレンシー債は米ドル以外の通貨でも可能

  • 豪ドルやブラジルレアルなどのデュアルカレンシー債(2重通貨債 )も販売されています。
  • 金利水準が高く、ボラティリティが高い通貨はデュアルカレンシー債(2重通貨債 )を組成した場合、見た目の条件は良くなります。特に金利水準が高いと組成する際の条件面の幅が広がります。ただし、高金利通貨は一般的な債券自体の金利水準も高い事から、それとの比較感を持った判断が必要です。

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