よくマーケット関連ニュースで「今週はSQを控えており、荒れる展開も予想されます」というような報道を目にします。
しかし、かなり長くマーケットを見ていますが、少なくとも2000年代以降にSQで株式マーケットが荒れたと感じたことがありません。
こちらのページでは「SQについての仕組み」はもちろん、「なぜSQが必要なのか?」という疑問についても分かりやすく解説しています。
また、「幻のSQ」については実際のデータを使って検証しておりますのでそちらも参考にしてください。
SQとは? / メジャーSQとは?
SQの概要(先物・オプションの未決済ポジションが自動清算される)
「SQ」(エス・キュー)とは「Special Quotation」(スペシャル・クォーテーション)の略で、日本語では「特別清算指数」を意味します。
具体的には、日経平均やTOPIXなどの株価指数先物と株価指数オプションの清算に使われる値のことです。
SQ算出日(SQ日)は「先物・オプションの取引限月の取引最終日の翌日」となります。(ちなみに限月は「げんげつ」と読みます)
各取引限月の取引最終日は取引限月の第2木曜日ですので、SQ算出日(SQ日)は翌日の第2金曜日となります。
SQ算出日(SQ日)である第2金曜日の始値(寄り付き値)が先物やオプションを清算するSQ値となります。
日経225先物の例では225銘柄が全て寄り付いた時点でSQ値が算出されます。
日経平均は2017年5月から5秒間隔で算出されていますので、日経平均の始値(寄り付き地)は9時00分05秒の価格となりますが、SQ値は225銘柄全てが寄り付いた時点で225銘柄の始値(寄り付き値)を元に算出されます。
SQ日前日の最終取引日までに決済していないポジションはSQ値で自動的に決済されることになります。
例えば2020年12月限の日経225先物カレンダーはこのようになります。
- 限月:2020年12月限
- 最終取引日:2020年12月10日(木)
- SQ日:2020年12月11日(金)
- SQ値:225各銘柄の始値(寄り付き値)で算出
また、先物のSQとオプションのSQはスケジュールが異なり、下記の通りとなります。
先物のSQ
先物の取引限月は3月、6月、9月、12月の年4回です。
よって、3月・6月・9月・12月の第2金曜日の始値(寄り付き値)で清算されます。
オプションのSQ
オプションは毎月取引限月があります。
よって、毎月第2金曜日の始値(寄り付き値)で清算されます。
メジャーSQとマイナーSQ(ミニSQ)
先物とオプションのSQが重なる3月、6月、9月、12月のSQは「メジャーSQ」と呼ばれています。
一方、3月、6月、9月、12月以外のオプションのみのSQは「マイナーSQ(ミニSQ)」と呼ばれます。
SQの存在意義(現物と先物が一致するので裁定取引解消で重宝される)
こちらでは「なぜ、SQが存在するのか?」という疑問について解説します。
国内の先物やオプションのマーケットで最も取引が活発なのが「日経平均」を対象としたものです。
先物やオプションは現物に対し概ね理論値通りに動きますが、短期的に割高になったり割安になったりします。
例えば日経平均先物が割高な時に、先物をショート(売り建て)して現物を構成比率どおりに225銘柄を買うことで裁定取引ができます。
いわゆる「裁定買い」のポジションです。
- 裁定買い=先物売り+現物買い
理論的には無リスクで収益を得ることができます。
ただし、ここで重要なのはこの「裁定買い」のポジションを形成できても、上手く解消しないと利益は確定できません。
ポジション解消時に先物と現物の価格が乖離してしまうと全て水の泡となります。
ここで便利なのがSQです。
裁定買いポジションを解消する為、3月、6月、9月、12月の第2金曜日の寄付きで現物のポジションを全て成り行きで売却します。
そうすると当たり前ですが、現物は全銘柄が始値(寄り付き値)で売却されます。
同時にショートしている(売り建てている)先物は自動的にSQ値で決済されます。
- 裁定買いの解消:先物は自動決済+現物は成り行きで売却
これがSQの最大の役割とも言えます。
つまり、SQで現物と先物の価格が確実に一致する点がポイントになります。
この手法であれば裁定取引の利益は確実に確定することができます。
このように裁定取引においてSQは非常に重要な役割を果たします。
「SQでマーケットが荒れる」という人は裁定買い残をSQで清算する金額が大きいことを警戒しているのか?
「SQでマーケットが荒れる」という人は、SQ前に裁定買い残が増加するとSQのタイミングで現物に大きな売り(先物はSQで決済)が出やすくなり株価が大きく下落すると言いたいのでしょう。
オプションでも同じような経済効果の取引は可能ですが、特に先物の方が取引ボリュームも大きいため、通常はメジャーSQの方が警戒されるようです。
ただし、上記を読んでいただいてお分かりになる通り、経済や企業のファンダメンタルはほぼ関係のない話です。
マーケットのトレンドを変えるようなものではありません。短期的な需給のみの話です。
日経平均は流動性が高い為、裁定解消売りの需給要因で動くとしてもせいぜい数十円です。
100円を超えて影響を与えることは考えにくいです。
よって、「今週はSOを控えており、荒れる展開も予想されます」というコメントは大きなマーケットの流れの話ではなく、「1カイ・2ヤリ」(1買い・2売り)のサヤ取りのような短期的なトレーディングの世界の人の感覚です。
このようにSQでマーケットに大きな波乱は起こりません。
また、特にメジャーSQの寄り前の気配値は普段よりもボリュームが大きく、上下どちらかに大きく振れることがよくありますが、これも寄付き時点では一定の範囲内に落ち着き、大きな波乱にはなりません。
幻のSQについての概要と過去データの検証
幻のSQとは
「幻のSQ」とはSQ日の日経平均株価がSQ値に一度もタッチしないことを言います。
一瞬、「そんなことあり得るの?」と思う方も多いのではないでしょうか。
しかし、あり得ます。
上記に掲載した通り、SQ値は225銘柄全てが寄り付いた時点で225銘柄の始値(寄り付き値)を元に算出されます。
ここでのポイントは225銘柄目が寄り付いた時点の日経平均株価ではないということです。
あくまで、225銘柄それぞれの始値(寄り付き値)を元に算出されます。
一方、日経平均株価は寄り付かない銘柄があっても気配値を元に5秒間隔で算出されます。
その為、SQ日の日経平均株価がSQ値にタッチしないことが起こりえます。
日経平均株価の上に「幻のSQ」が出る(SQ値が幻の高値の)時は相場は弱く、日経平均株価の下に「幻のSQ」が出る(SQ値が幻の安値の)時は相場は強いと見られています。
幻のSQを2019年と2020年のデータで検証
こちらでは実際に「幻のSQ」が発生した場合、その後の日経平均がどのように推移したかを過去データで確認します。
下記のポイントが成立しているかを2019年・2020年のデータで検証します。
- 日経平均株価の上に「幻のSQ」が出る(SQ値が幻の高値の)時は相場は弱い
- 日経平均株価の下に「幻のSQ」が出る(SQ値が幻の安値の)時は相場は強い
まず、2019年のデータです。
次に2020年のデータです。
2019年も2020年もそれぞれ5回、合計10回も幻のSQが発生しています。
そのうち、2019年1月のみが「下方向の幻のSQ」です。
2019年1月11日に幻のSQ(下向き)が発生し、翌営業日のザラ場で一時的にSQ値(20,290.67円)を下回りましたが、終値ベースではSQ値を上回り、その後は長期上昇相場となりました。
2019年6月4日にもSQ値(20,290.67円)とほぼ同値の20,289.64円をつけましたが、これを除くと終始上回って推移しました。
そして、2019年12月には日経平均は24,000円を上回りました。
次に2019年1月のSQ値(20,290.67円)をしっかり下回ったのは、新型コロナウイルスの影響で世界的に株価が大きく下落した2020年3月でした。
よって、2019年1月の「下向きの幻のSQ」はサポートラインとして完璧に機能したと言えます。
それ以外の9回の「上向きの幻のSQ」についてはサポートラインとして機能したケースとそうでないケースがありました。
ある程度、サポートラインとして機能したケースは2019年7月・8月・11月と2020年2月・8月です。(上記表では青色で表示)
逆に翌営業日にSQ値を突破してサポートラインとして機能しないケースも多くありました。
よって、幻のSQについては参考程度にみておくべきデータと言えそうです。
- 日経平均の長期推移はこちらを参照:日経平均株価の長期推移(チャート・変動要因)/ドル円レートとの比較チャートも