こちらのページでは日本のインフレ率(CPI)上昇によるメリットとインフレ率上昇で儲かる商品について紹介しています。
ちなみに物価連動国債は夢のインフレヘッジ商品ではないので注意が必要です。
日本のインフレ率の推移(コアCPI推移)
日銀のインフレ目標(2%)にも使われる「コアCPI(消費者物価指数 生鮮食品除く)」の推移です。
- 日本のCPIの最新データはこちらを参照:日本の消費者物価指数 / CPI、コアCPI、コアコアCPI / 定義、長期推移、使い方
上記のチャートはコアコアCPI(消費者物価指数除食品・エネルギー)ではないので原油価格などエネルギー価格の影響を受けます。
チャートでは2000年以降、2度大きな上昇がありますが、これは本当の意味のインフレ率上昇ではありません。
- 2008年:WTI原油価格が1バレル=147ドルまで上昇したことで、ガソリンをはじめとするエネルギー価格上昇によるもの
- 2014年:消費税が5%→8%に増税されたことが要因
少なくとも2000年以降(実際には1995年以降)はデフレ経済であったことが確認できます。
ここから脱却するべく、2013年に日銀がインフレ目標(2%)を導入し、金融緩和等を積極的に行っていますが、2010年代は大きな効果が出ませんでした。
- 主要国のインフレターゲット(インフレ目標)はこちら:主要国のインフレターゲット(インフレ目標)の水準と採用時期の一覧
ただし、2014年後半~2016年2月まで原油価格の大暴落が起こったことを考慮すると、その間のCPIは過去と比較して、それほど悪い数字ではなかったと考えられます。
2014年の前半に1バレル=100ドル以上であったWTI原油価格は、2016年2月には1バレル=25ドルまで下落しました。
CPIは対前年比で計算されますので、2017年2月以降は原油価格下落の影響は完全になくなっています。
その結果、2017年~2018年はコアCPIが1%前後まで上昇しました。
- 日本のCPIの最新データはこちらを参照:日本の消費者物価指数 / CPI、コアCPI、コアコアCPI / 定義、長期推移、使い方
インフレ率上昇による日本のメリット【円高防止・財政再建・景気拡大】
まず、日銀や政府が期待しているのは『円高トレンドの防止』と『財政再建』です。
こちらについての詳細は下記のリンク先を参照してください。
また、適度なインフレは消費活動を活発にし『景気拡大』に寄与します。
企業の行動でもデフレ経済では現金を持っているのが正解でしたが、インフレになると借り入れをしてお金を使う(設備投資等を行う)ことが合理的な行動となります。
多くの大企業が現金を溜め込んでいることが問題であるとよくニュースになりますが、インフレになれば自動的に解決します。
ここだけ見てもデフレとインフレでは景気に与える影響が全く異なります。
特に日本はデフレが20年以上続いており、インフレ経済に戻った際のインパクトは非常に大きくなると考えられます。
もちろん個人ベースでは、所得が伸びないと実質的に生活環境が悪化することになりますが、程良いインフレ率が数年続けば、所得も増加するようなバイアスがかかってくると考えられます。
また、株式や不動産等の資産価格も上昇するため、資産効果も期待できます。(米国はこれが大きいです)
インフレで儲かる商品(インフレヘッジになる商品)
下記ではインフレで儲かる商品・インフレヘッジになる商品を紹介しています。
日本株
上記の通り、インフレになると景気が良くなるため日本株は上昇すると予想されます。
特に不動産業や不動産を多く所有している企業(鉄道会社等)はメリットが大きです。
また、銀行も融資が増え、金利水準が上がれば利ザヤも稼ぎやすくなるので利益が大きく増えることが予想されます。
逆に安さを売りにデフレ経済で成長してきた小売り企業の一部などは厳しいと考えられます。
また、インフレにより円高になりにくい環境になることも日本株にとってプラスになります。
- 詳細はこちらを参照してください:日銀はなぜ2%のインフレを目標とするのか?理由は円高トレンド是正と財政再建
J-REIT
インフレにより金利が上昇すると調達コストも上がりマイナスに作用しますが、逆に賃料や不動産価格が上昇することで中長期的にはプラスになります。
米国リートでもよく見られますが、長期金利が急騰するとそのタイミングで一旦、米国リートは下落しますが、金利が上がるということはマクロ経済も好調で賃料や不動産価格も徐々に上昇することから、少し遅れて米国リートは上昇し始めます。
トータルでは日本のインフレはJ-REITにプラスに働くと考えられます。
外貨
インフレになると為替が円高になりにくくなります。
詳しくは、「為替レートの予想・分析は実質金利差・購買力平価を活用」を参照していただければ詳しく説明しています。
ポイントだけ上げるとインフレは実質金利を低下させ、購買力平価の円高シフトをストップさせます。
よって、一定の振れはありますが、長期での円高トレントになりにくなるため、外貨投資にとってプラスとなります。
また、インフレと言っても現在想定している良いインフレでなく、日本の財政問題などに注目が集まり、日本国債が売られて、さらに円まで売られることで大幅な円安になり、その結果としてインフレになるような、俗に言われる「悪いインフレ」の可能性まで考えた場合でも外貨投資はリスクヘッジとして有効となります。
債券ベアファンド・CFDのショートポジション・債券ETFの空売り
インフレ率が上昇すれば、長期金利の上昇が予想されます。
その際には「債券ベアファンド」「CFDのショートポジション」「日本債券ETFの空売り」等を活用することで直接的に利益を上げることができます。
ただし、これらへの投資にはいくつかの注意点があります。
- 詳細はこちらをご覧ください:日本の長期金利上昇で儲かる商品と投資タイミングを紹介
その他
一般的には金をはじめとするコモディティはインフレに強いと言われますが、これはどちらかというと日本のインフレというよりも、世界的なインフレによる影響が強くなりますので、日本のインフレとは直接関連しないと考えられます。
また、中長期的にインフレが続き、金利が上昇していく局面であれば、当たり前ですが、固定期間の長い債券や定期預金よりも、短い債券や定期預金、または上記に掲載した期間は10年と長いですが変動金利である10年物個人向け国債が良いでしょう。
日本をはじめとした多くの国ではインフレ率より政策金利(短期金利)の方が高い期間が長くなっています。
よって、インフレ対策だけを考えた場合、以外にも預貯金やMMFに預けておけば問題ありません。
ただし、インフレ率が高い時は景気も良く、株式や不動産も上昇しやすいので、お金を増やす事を考えた場合は投資を行う方がベターと言えます。
- インフレ対策についてはこちらも参考になりますのでどうぞ:インフレ対策は預金・債券・MMFで十分可能
物価連動国債は夢のインフレヘッジ商品ではないので注意
物価連動国債に投資する投信は以前から存在します。
そして一旦は延期されましたが物価連動国債を個人向けにも販売する計画となっています。
色々なところで物価連動国債が最強のインフレヘッジだと推薦する人がいますが、おそらく実務的に商品に触れたことがなく、商品性をご存じない方でしょう。(極端に難しい商品性ではないのですが、机上で商品概要を勉強しただけで、おそらくオーバーパー発行されていることを知らない方が多いのではないかと感じています)
- 物価連動国債の商品性についての詳細は「MHAM物価連動国債ファンド(未来予想)/物価連動国債の投資環境」を参照していただければと思います。
ポイントだけお伝えすると、物価連動国債は超低金利環境下ですとインフレが起きないとマイナス利回りになります。
また、元本保証型とも言われますが、これも誤解です。
元本保証型とは「償還時に額面100を下回ることはない」という意味ですが、そもそもオーバーパーで発行されるので、インフレが起きなければ、実質的に元本割れの可能性もあります。
さらに、あくまで固定利付債ですので金利上昇が起こると債券価格は下落します。
参考までに2016/4/14に発行された物価連動国債の条件を掲載します。
- クーポン:0.1%
- 償還日:2026/3/10(約10年)
- 発行価格:104.90円(もちろん償還は100)
インフレが起きなければ単利ベースで-0.39%の最終利回りとなります。(10年で4.9のマイナスと10年分のクーポンが+1.0で合計3.9となり、年率に直すと-0.39%となる)
よって、インフレ対応商品ですが、夢のような商品でもないと思われます。
個人的には同じ国債でもシンプルな10年個人向け国債の方がインフレ・金利上昇ヘッジになると思います。
10年物の個人向け国債は3年債や5年債と異なり年2回見直しの変動金利です。
よって、今後インフレ率が上昇し、金利水準が上がると国債の金利も上昇することになります。
- 個人向け国債についてはこちらを参照してください:個人向け国債