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2000年4月の30銘柄入替で日経平均は10%は低く見えている

こちらのページでは「伝説」にもなっている「2000年4月の日経平均採用銘柄30銘柄入替」について掲載しています。

今考えてもとんでもない出来事でした。そして、その影響は現在でも残っています。

タイトルの通り、日経平均は2000年4月の銘柄入替の影響で少なくとも10%は低く見えています。

日経平均は1989年12月29日の最高値39,715円(終値ベース)を回復できないまま30年以上が経過していますが、例えば日経平均が20,000円まで回復した場合、実質的な株式市場の水準は22,000円前後の水準まで回復していることになります。

(それでも日経平均のインデックスファンドなどに投資していた場合は22,000円ではなく20,000円のパフォーマンスとなるので問題です)

このような現象が発生した理由を下記に掲載しています。

日経平均の銘柄入替が本格的に始まったのは2000年4月で、いきなり30銘柄の入替を発表

現在、日経平均の採用銘柄は毎年定期的に見直しが行われています。

9月に発表して10月の第一営業日に入替が実施されます。

よって、インデックスファンドはトラッキングェラーを回避する為に、前営業日である9月の最終営業日の大引けの価格で銘柄の入れ替えをする必要があります。

1991年まで日経平均は上場廃止や合併などを除いた、裁量的な銘柄入替を全く行っていませんでした。

1991年から流動性が低い銘柄を除外して他の銘柄を採用する仕組みが導入されましたが、引き続き裁量的な銘柄変更は行っておらず、オールドエコノミー銘柄が多く採用され続け、指数が時代の変化に対応できていないとの批判を受けていました。

この批判に対応すべく2000年4月15日(土)、1度に30銘柄の銘柄入替を発表しました。

実際の指数の入替は2000年4月24日(月)となりました。

除外銘柄はオールドエコノミーの低位株が中心で、新規採用銘柄はハイテクや金融の値がさ株が中心となりました。

この時期はITバブルがはじける直前でIT関連株が活況で、逆にオールドエコノミー株はほとんど上昇しないという極端なマーケット環境であったことも30銘柄入替の判断を後押ししたと考えられます。

30銘柄入替の影響で日経平均は10%以上低く見えている

指数の入替は2000年4月24日(月)ですので、インデックスファンドの入替オペレーションは前営業日である2000年4月21日(金)の大引けの価格が基準になります。

2000年4月15日(土)の銘柄入替発表から2000年4月24日(月)までの間、除外銘柄が売られ、採用銘柄が買われるというバイアスが働きます。

特に今と違い、インデックスファンドや機関投資家の運用担当者も銘柄入替のオペレーションになれておらず、大きく混乱しました。

2000年4月21日の14:55以降は新規採用銘柄にインデックス買いが入り、京セラ・東京エレクトロン・ファナックなどが数分でストップ高まで上昇しました。

最後は買い気配になった銘柄も多く、必要な株数を手当てできすに大きなトラッキングエラーを計上したインデックスファンドも多くあったと記憶しています。

除外銘柄は日経平均から除外される前に下がり、新規採用銘柄は採用される前に大きく上昇し、採用された後は割高に買われた分下落しましたので、日経平均はこの前後で本来の姿よりも低く表現されていることになります。

ちょうどITバブル崩壊のタイミングと重なったため大きく目立ちませんでしたが、この入替で本来より10%以上低く見えている形になっています

指数入替の影響は下記の日経平均のTOPIXの比較チャートと価格推移表で分かります。

下記の日経平均とTOPIXのデータは2000年4月14日(金)を100として指数化したものとなっています。

日経平均銘柄入替の影響①

日経平均銘柄入替の影響②

2000/4/14(金)のNYダウが618ドル安の10305ドルとなりましたので、2000年4月17日(月)の日本株も大きく下落しています。

この日は日経平均とTOPIXのかい離はそれ程大きくなっていませんが、2000年4月17日(月)のNYダウは277ドル高の10582ドルとなり、2000年4月18日(火)の日本株はTOPIXがプラスですが、日経平均はマイナスとなっています。

そしてその後は時間の経過とともにかい離が大きくなっています。

上記でもふれましたが、2000年4月17日(月)~2000年4月21日(金)までは除外銘柄の低パフォーマンスが日経平均のパフォーマンスに悪影響を及ぼし、2000年4月24日(月)以降は新規採用銘柄の低パフォーマンスが日経平均に悪影響を及ぼしています。

この30銘柄の入替で日経平均は10%以上低くなっていることになります。

よって日経平均が20,000円ということは2000年以前の基準で考えれば本当は22,000円~23,000円位になっていることになります。

2000年4月以前からの日本株の動きをみる場合は、日経平均を使うと不正確になるのでTOPIXを使った方が良いと考えられます。

2000年4月、日経平均30銘柄入替時の採用銘柄・除外銘柄一覧

2000年4月の日経平均採用銘柄・除外銘柄

上記にも記載しましたが、オールドエコノミー銘柄が除外されて、新規採用銘柄は値がさのハイテク株や金融株が多くなっています。

一番右の欄に銘柄入替発表前週の株価を記載していますが、除外銘柄と採用銘柄を比較すると大きく違います。

低位株が除外されて値がさ株が採用されたことが分かります。

少なくとも30銘柄を一度に変更するのではなく数年に分けるなど、もう少し株式市場に配慮したやり方があったのではないかと思います。

インデックスとして株式市場の実態よりパフォーマンスが悪くなるのは良いことではありません。

ちなみに米国のNYダウ30種は古くから時代に合わせた銘柄変更が定期的に行われています。

銘柄をみると時代の流れを感じることができます。



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