こちらのページでは「ブルベアファンド」の仕組みや問題点についてまとめています。
ブルベア型のファンドは投資信託だけではなく、「日経レバ」として有名な「NEXT FUNDS日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信」(1570)をはじめとするETFでも一般的となっています。
ブルベアファンドで最も注意すべき点は、投資対象(例えば日経平均など)が上下にジグザグに動いた場合にパフォーマンスがどんどん悪化していく点です。【ブルベアファンドの減価(下方乖離)】
また、ベアファンドではネガティブキャリーコストも考慮すべきです。
詳細は下記をご覧ください。
ブルベアファンドとは
日本株投資で効率的に値幅を獲得する手段としてブルベアファンドの人気があります。
ちなみにブルは「雄牛」、ベアは「熊」のことで、金融界ではブルが「上昇」、「ベア」が下落を表します。
一般的にブルベアファンドと言った場合、先物などを利用して対象となる指数の2倍や3倍の動きをするファンドのことを指します。
ブル型ファンドは純粋に指数の2倍・3倍の動きとなり、ベア型ファンドは指数の−2倍・−3倍の動きとなります。
以前は公募投信のブルベアファンドが一般的でしたが、終値ベースでの取引しかできず、使い勝手が必ずしも良いとは言えませんでした。
現在では日中取引が可能なETFが使いやすく一般的となっております。
例えば代表的なETFである「NEXT FUNDS日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信」(通称 日経レバ)(1570)の場合、日々の騰落率が日経平均の2倍の動きをします。
ここで注意すべきは、あくまで「日々の」騰落率の2倍になるのであって、2日以上離れた日で比較するとちょうど2倍の動きになることはありません。
これは全てのブルベアファンドに共通する問題点です。
特に上下に上昇・下落を何度も繰り返すと、日経平均の2倍のパフォーマンスに比べて、どんどん悪くなっていきます。【ブルベアファンドの減価(下方乖離)】
これはファンド内の先物のオペレーション(取引)で考えると分りやすいので、下記で解説します。
ブルベアファンドの特徴
下記に日経平均と2倍ブルファンドの動きを2パターン掲載します。
- 日経平均が上下に動いたパターン
- 日経平均が連続上昇したパターン
上下に動いた場合はパフォーマンスが悪化していくので注意【ブルベアファンドの減価(下方乖離)】
- 上記の表の見方を説明すると、まず、日経平均の2倍の動きにするため、先物は純資産の2倍保有します。
- 1日後では日経平均が10%上昇したので先物の時価は22,000になりますが、「2倍ブル」の純資産価格は12,000です。翌日も前日の2倍の騰落率にするには先物を24,000保有する必要がありますので2,000買い増す必要があります。
- 2日後はその逆で日経平均が-9.1%となったことで24,000の先物が21,818に下落します。しかし、純資産価格は9,818ですので翌日も2倍の騰落率にするには先物は19,636で足りるため、21,818-19,636=2,182を売却する必要があります。
- このように日経平均が上昇した日は買い増し、下落した日は売却を繰り返していくことになります。
- 日々の先物のオペレーションとしては上記表の中の(A)→(B)に先物残高を修正することになります(上がった日は買い、下がった日は売り)
- 「高い日に買って、安い日に売る」を繰り返していくことになるので、長期で保有すればするほど、日経平均の2倍のパフォーマンスより下に乖離していくことになります。【ブルベアファンドの減価(下方乖離)】
- ちなみに上記の表では「4日後の日経平均」は当初と同じ10,000円ですが、2倍ブルは9,600円に下落しています
連続で上昇・下落の場合にはブルベアファンドは機能する
- 日経平均が連続して上がり続けた場合や下がり続けた場合は、上記で説明したような下方乖離は発生しません
- 逆に日々の騰落率が2倍になることから、連続上昇のケースではいわゆる「複利効果」が発生します。例えば上記のブルファンドの例では「4日後」の価格を確認すると日経平均が+40%(14000)に対し、2倍ブルはおおよそ+90%(19091)となっています。
- よって、上昇・下落のトレンドが出ている場合は、ブルベアファンドで短期的なリターンを取りに行くことは有効と考えられます。
日経平均と日経レバ(1570)の騰落率比較【2014年12月30日~2016年10月31日】
それでは次に、実際のトラックレコードを用いて検証してみたいと思います。
2014年12月30日~2016年10月31日の「日経平均」と「日経レバ(1570)」のパフォーマンスです。
- 日経平均:17,450円→17,425円:−0.1%
- 日経レバ:6,585円→6,085円:−7.6%
「日経平均」はほぼ横ばいですが、「日経レバ(1570)」は−7.6%となっています。
この期間は上下にジグザグに動いたマーケットであったため、長期間保有すると日経平均の2倍のパフォーマンスに比べて大きく劣後しました。(ブルベアファンドの下方乖離)
実際のマーケット環境では、上がり続けることや下がり続けることはありませんので、多かれ少なかれ「ブルベアファンドの減価(下方乖離)」は発生します。
ベアファンドのネガティブキャリーコストには注意が必要
日経平均ベアファンドや債券ベアファンドの場合、株式や債券を空売りするのと同じ経済効果になりますので、債券であれば利回り、株式であれば配当利回りの分がマイナスに計上されます。
株や債券を保有していれば得られるものは売り建てした場合は支払うことになります。
レバレッジの比率が高いベアファンドはその分マイナスの影響が大きくなります。
また、債券の利回りや株式の配当利回りの水準が高い投資対象もマイナスの影響が大きくなります。
ベアファンドは長期で保有した場合、マイナス利回りの影響が大きく響いてきますので注意が必要です。
よって、ブルベアファンドは上記で説明した「ブルベアファンドの減価(下方乖離)」の問題がある為、長期保有には向いていませんが、ベアファンドはより注意が必要です。
短期のトレンドを取りに行くトレードで活用しましょう。
ブルベアファンドの活用事例
ブルベアファンドを活用した投資手法については下記のリンク先をご覧ください。
円高時や金利上昇時はリターンを狙える投資対象が少ないので、貴重な投資手段となります。
ただし、上記で解説した通り、ブルベアファンドは長期投資に向いていませんので、注意してください。
単位型のブルベアファンドであれば「ブルベアファンドの減価(下方乖離)」を回避できる
例えば日本の長期金利が将来上昇すると予想する場合、日本債券のベアファンドが投資候補となります。
ただし、上記で解説した通り、トレンドをもってある程度の水準まで金利が上昇しないとベアファンドは機能しません。
上下にジグザグを繰り返すとベアファンドのパフォーマンスは悪化していきます。
そのため、通常の日本債券ベアファンドに投資する場合、日本の長期金利が上昇を始めた時にトレンドに乗っかるように短期的に投資するしか活用手法はありません。
一方、単位型の日本債券ベアファンドの場合、ファンドへ追加で入ってくる資金はありません。
よって、例えば日本債券2倍ベアファンドであれば、設定時の残高の2倍の債券先物をショート(空売り)し続けるだけです。
一般的なブルベアファンドにおける「日々の」2倍とする必要がなくなります。「高い日に買って、安い日に売る」オペレーションもなくなります。
2021年時点で単位型のブルベアファンドは存在しません。
単位型のブルベアファンドは日本債券に限らず、米国の長期債などでも組成ができるはずです。もちろん、株式でも組成可能です。
- 減価(下方乖離)のないブルベアファンド=「単位型」のブルベアファンド
タイミングによると思いますが、このアイデアを生かす運用会社が現れることを期待します。