こちらのページでは空売りにおける「逆日歩」について分かりやすく解説しています。
「誰がどう見ても下がりそう」という銘柄を実際に空売りすると、とんでもない「逆日歩」が発生することがあるので注意が必要です。
「逆日歩」は受渡日ベースなので土日もカウントされます。
また、多くの空売りが殺到し「逆日歩」が急上昇した場合は、買戻しも殺到し、株価が上昇してダブルパンチとなります。
空売りの損失は理論上、無限大になりますので注意しましょう。
詳細は下記をご覧ください。
逆日歩とは【制度信用取引が対象・一般信用取引は対象外】
空売りが増加し、株券が不足した銘柄は、株券を調達する為に追加コストが必要となります。
この「株券を調達する為の追加コスト」が「逆日歩(品貸料)」で、信用取引の売り方が負担し、買い方が受取れます。
ちなみに、信用取引には「制度信用取引」と「一般信用取引」があり、「逆日歩」の対象となるのは「制度信用取引」のみです。
- 信用取引についての詳しい内容はこちらを参照してください:信用取引の仕組みを分かり易く解説
制度信用取引において空売りができる銘柄ということになりますので、いわゆる「貸借銘柄」と呼ばれる銘柄に逆日歩が発生する可能性があります。
通常、信用取引を行う投資家が支払うコストは委託手数料に加えて下記が発生します。
- 信用の買い方:金利(日歩)【買付代金の借入金利】
- 信用の売り方:貸株料【株券のレンタル料】
空売りが増加し、株券不足となった場合、株券を調達する為に追加コストがかかり逆日歩(品貸料)が発生ます。
- 信用の買い方:逆日歩(品貸料)を受取り
- 信用の売り方:逆日歩(品貸料)を負担
もちろん、信用の買い方で逆日歩(品貸料)を受取れるのも「制度信用取引」の場合のみで、「一般信用取引」で買った場合は対象外です。
また「一般信用取引」は「制度信用取引」より貸株料が高くなるケースがあります。
逆日歩は受渡日ベースでカウントされる
上記で出てきた「信用買いの金利(買付代金の借入金利)」と「信用売りの貸株料(株券のレンタル料)」は新規建てから返済の「受渡日から受渡日」が計算期間となります。
それに対して「逆日歩」は「受渡日から受渡日の前日」が計算期間となります。
ちなみに2019年7月より株式の受渡日か短縮され、従来の「約定日を含む4日目(T+3)」から「約定日を含む3日目(T+2)」となりました。
ここでは例として1株100円のA株式を1万株空売りしていると想定します。
そして、逆日歩が0.1円(10銭)発生したと仮定します。
この0.1円(10銭)という数字は、「1株当たり・1日当たり」の逆日歩となります。(ちなみに逆日歩は日々変動します)
よって、この例では1万株空売りしていますので、一日当たり1,000円のコストとなります。
2019年7月の受渡日短縮化以降は土日や祝日を挟まなければ2日後が受渡日となり、逆日歩はその前日までが対象ですので、逆日歩が発生して、買い戻しによりポジションを解消すれば翌日までの分が逆日歩の計算期間となります。
そして営業日だけでなく、土日祝も日数としてカウントされますので、受渡日までに土日や祝日を挟む場合はその分、計算期間が長くなります。
一般的な週で、水曜日に空売りをして木曜日に買戻した場合は受渡し日が金曜日と月曜日になります。
逆日歩の計算期間は「受渡日から受渡日の前日」であるため、金・土・日の3日分の逆日歩を負担する必要があります。
特に連休前は注意が必要です。
ゴールデンウィークや正月などは逆日歩で損失が想定以上に大きくなるリスクがあるので必ず確認する必要があります。
上記の例では100万円の空売りに対し、1日当たり1,000円の逆日歩ですので10日だと1万円のコストとなります。
2019年の10連休となったGWの例です。(こちらは2019年7月の受渡日短縮化前となります)
GW前の4/23 火)に空売りを行い、4/24 (水)に買戻しを行った場合、空売りの受渡し日は4/26 (金)で買戻しの受渡日は5/7 (火)となり、翌日買戻したにもかかわらず11日分の逆日歩が発生することになります。
逆日歩のレート(品貸料)が高い場合、とんでもない損失になります。
誰もが儲かりそうと思うような空売りは高い逆日歩(品貸料)発生に注意
合併買収・増資などのコーポレートアクション時や株主優待のタダ取りなど、「どう考えても空売りをすれば儲かりそう」と誰もが思うような局面は逆日歩に注意すべきです。
理論的に必ず下がると思われるようなケースでも、なかなか株価が下落せずとんでもない料率の逆日歩が発生するケースが多々あるので注意が必要です。(このパターンは結構あります)
そして、高い料率の逆日歩が発生すると、皆が一斉に買戻しを行うため、株価が上昇してしまい損失がさらに拡大するのが一般的です。
株式を買う時も同じですが、誰がどう見ても儲かると思うような局面は意外と上手くいかないものです。
基本的に株価は常に考えられる材料を織り込んで取引されているからです。
さらに、それが小型株であった場合、何日間もストップ高で売れなくなるケースもあります。
逆日歩とキャピタルロスで大変なことになってしまうので小型株のカラ売りにも注意しましょう。
- 空売り比率についてはこちらを参照:「空売り比率」の意味を間違えていませんか?
逆日歩の発生や逆日歩発生の可能性をチェックする方法
空売りをする際は必ず当該銘柄に逆日歩が発生しているか、または発生する可能性があるか確認すべきです。
逆日歩の発生状況はこちらで確認できます。
銘柄コードを入力すれば逆日歩や融資・貸株残高を確認することができます。
いわゆる「貸借倍率(融資残高/貸株残高)1倍割れ」、つまり融資残高より貸株残高が大きくなると逆日歩発生の可能性が出てきます。
よって、逆日歩が発生していないくても融資残高に対して、貸株残高の方が大きい場合は近い将来、逆日歩が発生する可能性がありますので注意が必要です。
また、「一般信用取引」で空売りを行えば、「制度信用取引」と比べて貸株料がやや高めとなるケースがありますが、逆日歩は発生しません。
よって、予想外に高い逆日歩(品貸料)が発生するリスクを回避するために、若干コストが高くなる場合でも「一般信用取引」を好む投資家が近年増えています。
ただし、「一般信用取引」は証券会社ごとに取扱銘柄が異なりますので、取引の可否は個別に確認する必要があります。