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VIX指数の長期チャートと投資への活用法

こちらのページではボラティリティ・インデックスの中で最も代表的な「VIX指数」(ビックス指数)の長期推移とVIX指数を投資に活用する方法について説明しています。

VIX指数は「株式版恐怖指数」とも呼ばれ、何らかのショックで株価が急落する場合に大きく上昇することから、株価下落の保険のような役割が期待できます。

ただし、VIX指数のETFは原油ETFと同様にロールコストが発生する為、長期保有には向いていません。

活用方法としては、マーケット混乱時の短期的なリスクヘッジに限定されます。

詳細は下記をご覧ください。

まず最初に「ボラティリティ・インデックス」についての解説から始めます。

ボラティリティ・インデックス(VI)について

「ボラティリティ・インデックス(Volatility Index)」は株価や債券などの指数を対象とした「オプション」の「ボラティリティ」をもとに算出されています。

よって、「ボラティリティ・インデックス」はいわゆる「インプライド・ボラティリティ」を指数化したものといえます。

代表的なボラティリティ・インデックスとしてS&P500を対象とする「VIX指数」、日経平均を対象とする「日経平均ボラティリティ・インデックス」などがあります。

下記に代表的なボラティリティ・インデックスを掲載します。

  • S&P500:VIX指数
  • 日経平均:日経平均ボラティリティー・インデックス
  • ユーロ・ストックス50指数:Vストックス指数(VSTOXX)
  • FTSE100種総合株価指数:VFTSE指数
  • ドイツDAX30:VDAX指数
  • 日本国債:S&P/JPX日本国債VIX指数

下記ではS&P500を対象とするボラティリティ・インデックスであるVIX指数について掲載します。

VIX指数(ビックス指数)について

S&P500指数のボラティリティ・インデックスである「VIX指数」の算出根拠等はS&Pダウジョーンズ・インデックスのサイトに詳しい説明があります。

下記はそちらの抜粋です。

近い将来における米国株式市場の価格変動(現水準からの上昇及び下落)の推定範囲を予測します。具体的には、VIXはS&P500(SPX)の今後30日間のインプライド・ボラティリティを測定します。インプライド・ボラティリティが高い時には、VIXの水準は高くなり、価格変動の推定範囲は広くなります。インプライド・ボラティリティが低い時には、VlXの水準は低くなり、推定範囲は狭くなります。
株式市場が最も不安定な時にはVlXが最高水準に達するので、VIXは恐怖指数とも呼ばれています。VIXがセンチメント(特に不安)を測定するという意味では、その表現は的を射ていると言えます。

上記には株式市場が不安定な時という表現になっていますが、分かりやすく言うと株式市場が下落する時にVIX指数は上昇します。

ボラティリティのインデックスなので株価が急上昇するようなときもボラティリティが上がり、VIX指数も上昇しそうですが、株価の上昇局面でのボラティリティ上昇はそれほど極端な数字にはならず、結果的にVIX指数が上昇するのは株価が下落する局面となります。

株式というのは「上昇はゆるやかに、下落は急に」が一般的です。

そのためVIX指数は「恐怖指数」とも言われます。

VlX指数が急上昇した事例の一覧(過去最高はリーマンショック時の89)

VIX指数の基準は諸説あるようですが、ノイズもあるので30以下であればとりあえずマーケットは安定していると言えるのではないでしょうか。

これまでの推移をみても30を一定期間上回ってくるとマーケットは混乱していると言え、40を超えるのは数年に1度です。

ちなみに過去最高はリーマンショック後で89まで上昇しました。

VIX指数が40を超えた局面とVIX指数の最高値(日次データ)

  • 1997年アジア通貨危機:48
  • 1998年ロシア危機:49
  • 2001年同時多発テロ:49
  • 2002年(7月~10月)エンロン不正会計事件、米国をはじめとする世界的な景気後退:48
  • 2008年リーマンショック:89
  • 2010年・2011年欧州債務危機:48
  • 2015年8月中国景気後退懸念、原油価格下落:53
  • 2020年3月コロナショック時:85

いずれの際も米国株をはじめとして世界の株式は大きく調整しています。

VIX指数と株式・為替の比較チャート

VIX指数と米国株(S&P500)の比較チャート

VIX指数とS&P500の比較チャートです。(月次データ)

VIX指数とS&P500指数の比較チャート

チャートは月次データで作成していますので、VIX指数はリーマンショック時でも60前後に見えますが、日時データでは89まで上昇しています。

VIX指数はS&P500を対象としたボラティリティインデックスですので当たり前かもしれませんが、VIX指数の上昇時には既にS&P500が下落しており、先行性はあまり認められないようです。

リーマンショックの時などVIX指数が極端に上昇した場合にはその後も、もう一段S&P500が下落しており、このような場合は株式の先行指標として活用できるかもしれません。

VIX指数が一定の水準を超えると株式のウェイトを減らすような運用手法を行っている投資家がいるためこのような現象が起こると考えられます。

また、上記の通り過去のショック時はVIX指数が48~89まで上昇していることから、大きな下落相場ではVIX指数が少なくとも50前後まで上昇しないと底入れしないとも言えます。

この点は覚えておきましょう。

VIX指数とドル円レートの比較チャート

こちらはVIX指数とドル円レートの比較チャートです。(月次データ)

VIX指数とドル円レートの比較チャート

上記のS&P500よりもドル円レートの方がVIX指数は先行指標として機能しているように見えます。

S&P500指数が大きく下落するような局面ではマーケット全体がリスクオフムードとなり、リスクオフによる円買いが起こることでこのような現象が発生していると考えられます。

よって、VIV指数はドル円レートの先行指標としては活用できそうです。

VIX指数への投資を考える

VIX指数ETFは長期保有に向かない(短期のヘッジ目的がベター)

上記の通り、VIX指数は株式市場がショックにより急落した場合に大きく上昇することから、ポートフォリオを保全する保険のような役割が期待できます。

VIX指数に投資するにはETFを(ETN)活用するのが一般的です。

ただし、ETF(ETN)の原資産はVIX指数の先物になりますので、原油などのETFと同様に先物のロールコストの問題が発生します。

VIX指数が20未満であるような平常時は先物は期先に行くほど価格が高いコンタンゴの状態になっています。

この状態で保有しているVIX指数先物を期先の先物にロールすると現在より高い価格の先物を購入することとなりロールコストが発生します。

よって、VIX指数のETFを長期で保有することはお勧めできません。

ポートフォリオ保全に使う方法としては、平常時は保有しないでマーケットが不安定になりかけた場合に短期的に保有するのが良いでしょう。

VIX指数ETFの例

実際のETF(ETN)の投資対象は「S&P500VIX短期先物指数」か「S&P500VIX中期先物指数」となります。

「S&P500VIX短期先物指数」

  • CBOE先物取引所に上場されているVIX指数先物の第1限月の先物を売却し、第2限月の先物を買付ける取引を日次で行い、加重平均した残存日数を1ヵ月に維持する取引を行った場合のリターンを指数化したもの

「S&P500VIX中期先物指数」

  • CBOE先物取引所に上場されているVIX指数先物の第4限月の先物を売却し、第7限月の先物を買付ける(第5、6限月も保有)取引を日次で行い、加重平均した残存日数を約5ヵ月に維持する取引を行った場合のリターンを指数化したもの

「S&P500VIX短期先物指数」と「S&P500VIX中期先物指数」を比較すると、ボラティリティ上昇時の価格上昇率は「S&P500VIX短期先物指数」の方が大きくなります。

一方、先物のロールコストによる減価の大きさも「S&P500VIX短期先物指数」の方が大きくなります。

よって、超短期で保有する場合は「S&P500VIX短期先物指数」、やや長めに保有する可能性がある場合は「S&P500VIX中期先物指数」と棲み分けしておけばよろしいかと思います。

ただし、あまり長期での投資はお勧めしません。

VIX指数ETFの空売りやインバース型ETF(ETN)は極めて危険

最後にVIX指数は変動率が大きいため、くれぐれもショートポジション(空売り)やインバース型の投信は控えた方が良いでしょう。

かつて、「NEXT NOTES S&P500 VIX インバースETN(VIXベアETN)」(2049)というETFが1日で96%下落して、その後償還となりました。

2018年2月5日にVIX指数が前営業日の17.3から37.3と1日で115%上昇したことが要因です。

今考えると、VIX指数が日時ベースで85まで上昇した2020年3月にこのETFが存在していなかったことは不幸中の幸いだと感じます。

ここではVIX指数を例に解説しましたが、他のボラティリティ・インデックスでも基本的に同じ効果となりますので参考にしてください。

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