こちらのページでは「ノックイン・デュアルカレンシー債(ノックイン順デュアル)」について事例を交えながらポイントを詳細に解説しています。
一般的に『デュアルカレンシー債(2重通貨債)』とは、「払込み」「償還」「利払い(クーポン)」が異なる2種類の通貨で行われる債券のことを言います。
大きく2種類に分類することができ、「デュアルカレンシー債(順デュアル))」と「リバースデュアルカレンシー債(逆デュアル)」が存在します。
- 順デュアル:「払込み」と「利払い(クーポン)」が円建て、「償還」が外貨建て
- 逆デュアル:「払込み」と「償還」が円建て、「利払い(クーポン)」が外貨建て
順デュアルと逆デュアルの詳細については下記も参考にしてください。
「ノックイン・デュアルカレンシー債(ノックイン順デュアル)」は「デュアルカレンシー債(順デュアル)」にノックイン条項が付与された債券で、期間中1度でもノックインレベルを超える円高になると米ドルで償還されます。米ドル償還の場合、為替の含み損を抱えることになります。
ノックインレベルを超える円高にならなければ円建てで償還されます。円建て償還の場合は元本がそのまま償還され、相対的に高い利回りの運用となります。
「ノックイン・デュアルカレンシー債(ノックイン順デュアル)」は仕組債の中でも比較的多く発行される債券です。
下記では「ノックイン・デュアルカレンシー債(ノックイン順デュアル)」の発行事例を使ってポイントやメリット・デメリットを掲載しています。
ノックイン・デュアルカレンシー債(ノックイン順デュアル)の発行事例
債券タイプ
- 仕組債
通貨
- 円(額面100円)
対象アセット(インデックス)
- 米ドル
条件
【ドル円スポットレートが1ドル=110円の場合の条件例】
- 期間:3年
- クーポン:5%
- ノックインレベル:spot-10円(100円)
- 米ドルスポットレート:110円
- 期間中にノックインレベルの100円/ドルより円高にならなければ5%のクーポン、額面100円で償還されます。
- 1度でも100円より円高になった場合、米ドルで償還されます。その際の為替レートは110円でドル転となるため、円高による損失が急に表面化することになります。
- 1度ノックインレベルを超える円高になっても3年後にドル・円レートが110円より円安になっていれば償還される米ドルを円転することによってプラスの利益となります。
- ノックイン型ではないデュアルカレンシー債は、為替の判定が償還時のみとなりますが、ノックイン型は期間中一度でもノックイン価格にタッチすると、外貨での償還が確定します。
- よって、商品性は似ており、良い点(メリット)とリスク(デメリット)はノックイン型ではないプレーンなデュアルカレンシー債とほぼ同様になります。
- プレーンなデュアルカレンシー債(順デュアル )についてはこちらを参照してください:デュアルカレンシー債(順デュアル )【仕組み・メリット・デメリット】
ノックイン・デュアルカレンシー債(ノックイン順デュアル)の良い点・メリット
デュアルカレンシー債(2重通貨債 )と共通の部分も多いので下記リンク先も参照してください。
多少の円高はOK
- 極端な円高にはならないと思うが、多少の円高の可能性は否定できないと思われている方にマッチする商品です。
大きく円安にも動かないときにマッチ
- 円安・円高共に大きく動かないだろうという考えをお持ちの方にもマッチする商品です。
- また、最悪の場合、現在のドル円レートでドルを購入することになっても良いと思えればよりマッチするといえます。(そうであればノックインして現在の為替レートでドル転されても問題ないということになります)
円高リスクを抑えながら高利回り
- 上記の例では10円までの円高リスクを排除しながら5%の利回りを享受できます。
- ノックインしてドル償還になっても、中長期で円安ドル高であれば利益を得られます。また、一般的に円建てより米ドル建ての方が運用手段が豊富で様々な投資先があります。
ノックイン・デュアルカレンシー債(ノックイン順デュアル)のリスク・デメリット
突然損失が表面化する可能性
- 上記の例では、10円以上円高になった場合、突然10円の損失が表面化してしまいます。
- よって、長期的には米ドル高のマーケット見通しを持っていないとノックイン・デュアルカレンシー債(ノックイン2重通貨債 )の投資には向かないということになります。
円安メリットを放棄(リターン限定・リスク無限大)
- 一定の為替リスクを負う商品ですが、円安による為替差益のメリットをすべて放棄した商品設計となっています。
- 円安メリットを放棄する分、上記の例であれば10円までの円高リスクは抑制されることになります。
- 多くの仕組債に共通する問題ですが、リターンは限定、下落リスクは無限大ですので、再投資を継続しているとトータルではマイナスになる可能性が高くなります。よって、ノックイン・デュアルカレンシー債(ノックイン2重通貨債)に投資をする際はマーケット環境を分析して、適切なタイミングを見極める必要があります。
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