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知識・ノウハウ(株式)

「空売り比率」の意味を間違えていませんか?

2018年2月21日

「空売り比率」の意味を勘違いしている人が多いようです。

空売り比率は将来買戻しされるポテンシャルを表すものではありませんので注意が必要です。

また、2013年に行われた空売り比率に関する2つの制度改正の影響で、空売り比率は高くなりやすくなっています。

よって、以前より空売り比率が高くなっていることはおかしな現象ではありません。

詳細は下記で分かりやすく解説しますのでご覧ください。

空売り比率とは(正確な定義は)

2014年以降、マーケットアナリストなどが「空売り比率が高まっているから株式市場は反転する」といったコメントをしているのをよく耳にするようになりました。

おそらくこのようなコメントをしている人は空売り比率の定義を勘違いして「出来高に対して信用売り残がどれくらい残っているか」と解釈しているはずです

計算式にするとこのようなイメージです。

  • (間違った)空売り比率=信用売り残÷1日の出来高×100

たしかに昔はこのような基準でみている人もいたように記憶していますが、少なくとも2008年から東証が日々公表している「空売り比率」はそのような定義ではありません

現在、東証が公表している空売り比率とは1日の売り注文合計(売買代金)に占める空売りの比率です。

計算方法は、まず一日の売り注文を「現物の売り」と「信用の売り(空売り)」に分けます。

合計の売り注文の金額(=売買代金)に対して「信用売り(空売り)」の金額のがそれくらいの割合かを計算します。

計算式にするとこのような形です。

  • (正しい)空売り比率=信用売り金額÷合計売り金額(=売買代金)×100

仮に空売り比率が40%ということは、その日の売り注文の内、40%が空売りで60%が現物の売りということになります。

それでもなんとなく空売り比率が高いと将来買い戻される株式が多くなるというイメージで、株価の底入れの目安になりそうな気もしますが、実際には違うので注意が必要です。

また、空売り比率を「信用売り残/発行済み株式数」と勘違いしている人もいるようですが、そうだとしたら40%とかになるはずがありません。(少し考えれば分かります)

もし、「信用売り残/発行済み株式数」に名前をつけるとしたら「売り残比率」です。

しつこいようですが空売り比率はあくまで空売りの残高とは関係ありませんので注意してください。

次に、2013年以降、空売り比率が高くなりやすくなっている原因について説明します。

空売り比率の上昇は2つの制度変更が原因

まず、空売り比率とTOPIXの比較チャートです。

下記の青い線は東証が公表している空売り比率の推移です。

空売り比率とTOPIXの比較チャート

空売り比率は東証が公表する空売り(価格規制あり)と空売り(価格規制なし)の合計から算出しています。

空売り比率をみると2012年10月頃~2013年10月頃に一時的に低下した後、2013年の後半から大きく上昇しているのが分かります。

2012年10月頃~2013年10月頃に一時的に低下しているのは、アベノミクスにより株価が歴史的安値から反転したことが要因と考えられます。

大底からの回復局面の初期段階では空売りが減少するのが一般的です。(日計りの回転売買でも売りから入る人が減ります)

そして、2013年11月以降は右肩上がりで空売り比率が上昇していますが、この前後で「空売り」に関して極めて重要な制度改正が2つ行われています。

空売りに関する制度変更①:信用取引で1日何回転でも売買が可能に

2013年1月から信用取引の証拠金規制が緩和されました。

従来は「信用買い→売り」「信用売り→買い」で決済しても証拠金を使いまわすことはできませんでしたが、1日何回転でも売買できるようになりました。

つまり信用取引であれば無制限に何度でも売買が可能となりましたので、そもそも売買代金に占める信用取引の割合が増加しています。

これにより「信用売り→買戻し→信用売り→買戻し」を繰り返して行った場合、一日の売り注文(現物・信用)に占める信用売りの割合が高くなることから、空売り比率を高める要因となっています。

つまり、売りから入る回転売買をやる人が増えているということです。1日に何回転もするので空売り比率が上昇します。

これは売りだけでなく買いも同じです。

買いでも一日の買い注文(現物・信用)に占める信用買いの割合が高くなっています。

公表されていませんが信用買い比率(買い注文全体に占める信用買いの比率)を計算すると空売り比率と同様に上昇しているはずです。

空売りに関する制度変更②:空売り規制の緩和

2013年11月5日に空売り規制の緩和が行われました。

従来は50単元超の空売りについて、直近公表価格以下の価格での発注(成行含む)が禁止されていましたが、改正後は当日基準値段から10%以上下落した銘柄以外は規制されないこととなりました。

イメージとしては従来は直近価格より少し上で指値をするしかありませんでしたが、改正後は現物の注文と同様に特に何も気にすることなく空売りの注文を出せるようになりました。

これにより空売りの利便性が格段に高まりました。

この改正も空売りの増加に大きく影響を与えていると考えられます。

ちょうど制度改正の直後から空売り比率が大きく上昇し、その後右肩上がりとなっています。

空売り比率のまとめ

上記の通り、現在、東証が公表している空売り比率は必ずしも将来買戻しされるポテンシャルを表すものではありません。(もちろん、参考になるタイミングもあるとは思います)

2013年以降、空売り比率が大きく上昇している要因として2つの制度改正が影響しています。

1日に信用取引が何回転でもできるようになり、さらに空売りの注文が出しやすくなりました。

これにより「空売り→買戻し→空売り→買戻し→空売り→買戻し」を1日に繰り返すことで、空売り比率が高まっていると考えられます。



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