こちらのページでは中国の金利と債券マーケットについて分かりやすく解説しています。
中国の金利・債券マーケットは規制も多く、他の国とは異なる制度が多く存在しますが、徐々に国際化も進んでいます。
政策金利は他国と異なり、1年物の貸出金利が基準となっています。
銀行の預金・貸出金利は2015年に完全自由化されました。
人民元建て債券は従来から発行されていた一般債に加え、サムライ債の中国版である「元建て外債(パンダ債)」や中国本土以外で発行される「オフショア人民元建て債券(香港・日本・ロンドン等)」が発行されています。
詳細は下記をご覧ください。
中国の金利
中国の政策金利は他国と異なる【ローンプライムレート(LPR)1年物】
中国の政策金利は他国とはかなり異なっており、「1年物の貸出金利」が基準となっています。
具体的には2019年7月までは「1年物の貸出基準金利」が政策金利で、2019年8月以降は「中国ローンプライムレート(LPR)1年物」が事実上の政策金利となっています。
「中国ローンプライムレート(LPR)1年物」は最優遇貸出金利で、優良企業に適用する貸出金利の基準であり、事実上の政策金利と位置付けられています。
米国のFF金利、日本の無担保コール翌日物など、一般的には翌日物など超短期のインターバンク(銀行間)金利を採用しており、中国の「1年物の貸出金利」は非常にレアなケースです。
よって、国際間の金利を比較する際は注意が必要です。
他国の短期金利と比較する場合、中国はSHIBOR(シャイボー)翌日物を使うと参考になります。
SHIBORは中国における人民元建てのインターバンク取引金利で、翌日物は最も期間の短い金利となります。
中国の「政策金利」と「SHIBOR翌日物」の過去の推移はこちらをご覧下ください。
中国の預金金利・貸出金利は2015年に完全自由化
銀行の預金金利と貸出金利は規制されていましたが、順次自由化が進められました。
- 2004年10月:貸出の上限金利・預金の下限金利を撤廃
- 2013年7月:貸出の下限金利を撤廃
- 2015年10月:預金の上限金利が撤廃
2015年10月の時点で制度上は預金・貸出しともに金利が完全自由化となりました。
日本も戦後から高度成長期にかけて金利が規制されており、完全自由化されたのは預金金利(普通預金・定期預金等)の規制が完全撤廃された1994年でした。
人民元建て債券は3種類
人民元建て債券は「発行体の属性」「発行市場」「投資家の属性」により3種類(本土の一般債・パンダ債・オフショア人民元建て債券)に分類されます。
- 発行体の属性:「居住者」or「非居住者」
- 発行市場:「中国本土」or「国外(オフショア)」
- 投資家の属性:「居住者」or「非居住者」
本土の一般債
従来から存在する中国本土の一般的な債券市場です。
発行体は中国政府関連や中国企業のみとなっています。
投資家も原則、居住者のみですが、QFII (Qualified Foreign Institutional Investors:適格海外機関投資家)またはRQFII (Renminbi Qualified Foreign Institutional Investors)の投資枠を保有していれば非居住者でも投資が可能となっています。
ちなみにQFIIとRQFIIの違いはQFIIは海外から外貨を持ち込んで人民元に両替し株式や債券を購入するのに対し、RQFIIは海外(オフショア)で保有する人民元をそのまま持ち込んで投資する点が異なります。
QFIIは2002年から、RQFIIは2011年からスタートした制度です。
パンダ債(熊猫債)
非居住者(外国企業等)が中国本土で発行する人民元建て債券はパンダ債と呼ばれます。
いわゆる「元建て外債」です。日本で発行される「円建て外債」はサムライ債と呼ばれますが、パンダ債はサムライ債の中国版です。
従来は非居住者(外国企業等)が中国本土で債券を発行することは認められていませんでしたが、2005年から国際機関等に認められ、2014年からは一般の事業会社にも解禁されました。
ダイムラーが事業会社第1弾として2014年にパンダ債を発行しました。
オフショア人民元建て債券(点心債など)
中国本土以外で人民元建て債券を発行する「オフショア人民元建て債券市場」は2007年からスタートし、第1号案件は中国国家開発銀行が香港で発行しました。
民間企業としては2010年のマクドナルドが第1号案件でこちらも香港で発行しました。
この年にはキャタピラーもオフショア人民元建て債券を発行しています。
ちなみにオフショア人民元建て債券のうち、香港市場で発行される債券を「点心債」と呼んでいます。
2015年には三菱東京UFJ銀行が日本国内で初めて人民元建て債券を発行しました。
日本国内で発行される人民元建て債券の愛称はいろいろ候補があるようですが、浸透しているものはありません。(候補はフジヤマ債やラーメン債のようです)
オフショアで発行した人民元建て債券で調達した人民元を中国国内に持ち込むには、事前に中国当局の許認可が必要となっています。
中国国内に持ち込む前提で債券を発行する際は、事前に持ち込みの許可を受けたうえで発行を行うケースが多いようです。
関連ページ
中国の株式市場についての詳細はこちらを参照してください!