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知識・ノウハウ(為替)

【円高抵抗力がポイント】米ドル10年「5%・120円」と「2.5%・100円」はどちらが有利?

2016年12月25日

外貨投資で大切なのは「為替水準」と「金利水準」のバランスです。

10年満期の米ドル債を購入することをイメージしてください。

下記の2つの条件はどちらが良い条件だと思いますか?

  • 利回り5.0%、1ドル=120円で購入
  • 利回り2.5%、1ドル=100円で購入

ポイントは「どちらが円高リスクに強いか」です。

詳細は下記をご覧ください。

円高抵抗力とは(外貨投資は長期になるほど円高抵抗局が高まる)

米ドルなどの外貨で運用する場合は為替リスクが存在します。

しかし、少しでも円高になると損益がマイナスになるかというとそうではありません。

例えば米ドルの場合では、高い利回りにより米ドルベースで資産が増えた分は円高になっても吸収できることになります。

例えば1ドル=100円の時に5年で2%の債券を購入した場合、5年後にはドルが10%増加しています。

このときドル円レートが約10%円高になっても、円ベースではプラスマイナスゼロとなります。

この約10%のバッファーを「円高抵抗力」と呼んでいます。

ここであえて「約10%」と記載したのは正確に説明すると、5年後にドルベースで1.1倍になっているので損益分岐点は100円/1.1=90.9円となります。

よって、米ドルが5年で1.1倍になった分、9.1%円高になってもリスクを吸収できるということになります

お分かりになると思いますが、外貨で増えた割合が円高抵抗力となりますので、高い利回りのものを長期で保有すればするほど、円高抵抗力は高まります。

つまり、外貨投資は長期で保有すればするほどリスクが減少するということになります。

極端な例ではブラジルレアルを2008年の最高値である1レアル70円で購入した場合、2016年12月には1レアル=35円前後となり為替だけで見ると約半分になっていますが、ブラジルレアルの高金利のおかげで、1レアル=35円でもプラスになりました。これが円高抵抗力の大きな魅力です。

ブラジルレアルの円高抵抗力

10年債投資で「利回り5%・1ドル=120円」と「利回り2.5%・1ドル=100円」はどちらが円高に強いか

このページのタイトルにある「米ドル10年債を利回り5%・1ドル=120円と利回り2.5%・1ドル=100円ではどちらが円高に強いか」という問題ですが、これはどちらも同じです。

利回り5%・1ドル=120円」で運用した場合、ドルベースで50%増えますので、10年後の損益分岐点は120/1.5=80円となります。

利回り2.5%・1ドル=100円」で運用した場合はドルベースで25%増えますので、こちらの損益分岐点は100/1.25 =80円と上記と同じになります。

よって、円高に対する抵抗力は同じと言えます。

実際のマーケットの例で見てみると、2016年11月、トランプ氏が大統領に決まってから米国の10年債は1.5%前後から2.5%前後に上昇しました。

同時にドル円の為替レートは1ドル=105円前後から1ドル=115円前後に円安となりました。

10年債への投資で、「利回り1.5%・1ドル=105円」と「利回り2.5%・1ドル= 115円」はどちらが良い条件でしょうか?

  • 105円/1.15=91.3円(トランプ当選前)
  • 115円/1.25=92円(トランプ当選後)

結果はこちらもほぼ同じになります。

円安になるとドルを買いにくいイメージがありますが、外貨投資では為替だけでなく利回り(金利水準)も見る必要があります。

外貨投資はあくまで為替と金利のバランスが大切です。

例えば、金融機関の営業職員の目線で考えた場合、「円安かつ高金利の時」の外債提案のコツとしては、長め債券を提案し、大きくディスカウントされた損益分岐点レートを提示することです。

「1ドル=110円、期間10年、利回り4%」のドル債に投資した場合のセールストークの例です。

「10年間で米ドルベースでは1.4倍になります。」

「そのため10年後に1ドル=79円まで円高が進んでもプラスマイナスゼロです」
(110円÷1.4=78.5円)

「もちろん今と同じ1ドル=110円であれば40%のプラス、1ドル=100円でも27%のプラスです」

「さらに円安が進み1ドル=120円になれば52%のプラスとなります」

外債投資のシミュレーション

「万が一79円よりも円高になっていた場合、そのまま米ドルで運用を継続し、米ドルを増やしながら円安のタイミングを待つことも可能です」

説明していることは当たり前のことばかりですが、このように説明するとお客様は分かりやすいようです。

投資家の方もこの考え方は是非、覚えておいてください。そうすれば、外貨投資の考え方も変わってきます。

米ドルに限らず、上記で挙げたブラジルレアルをはじめとする高金利通貨も長く持てば持つほど、円高抵抗力が高まり結果としてリスクが低下します。

外貨投資はFXで勝負するのも面白いかもしれませんが、利益を上げるには長期投資がコツです。



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