CDSについて
CDSとは「Credit default swap(クレジット・デフォルト・スワップ)」の略で、企業や国のデフォルトリスクを対象とするデリバティブの一種です。
簡単に言うと「対象先(企業や国)が破綻した時に備える保険」のようなものです。
そして、CDSスプレッド(CDS保証料)は保険料のようなものです。(通常、CDSが〇〇%と言った場合は正確にはCDSスプレッドのことを表します)
リスクが高い対象先(企業や国)のCDSスプレッド(CDS保証料)は高くなります。
- CDSについての詳細な説明はこちらをご覧ください:クレジットリンク債
こちらのページでは国の信用リスクを表す国別のCDSスプレッド(CDS保証料)の推移を掲載します。
何らかの要因で国の信用リスクが高まるとCDSスプレッド(CDS保証料)が上昇します。
通常、ベーシスポイント(bps)で表記されます。(1bps=0.01%)
まずは、米国・日本・中国・韓国のCDSチャートです。
米国・日本・中国・韓国のCDSスプレッド推移
- 2011年~2012年に各国のCDSが上昇しているのは、欧州債務危機で世界的に金融マーケットが混乱したことが要因
- 2013年6月はバーナンキショックで中国・韓国のCDSが上昇
- 2015年はチャイナショックにより中国のCDSが上昇
ただし、こちらの4か国(米国・日本・中国・韓国)のCDSは総じて低い水準で推移しています。
さすがにデフォルトするリスクは低いと考えられているようです。
次に、欧州各国のCDSチャートです。
欧州各国(ドイツ・フランス・イタリア・スペイン・英国)のCDSスプレッド推移
- 2011年~2012年の欧州債務危機の際はイタリアとスペインのCDSは500bps~600bpSまで上昇
- 2018年のイタリアCDSの上昇は新政権誕生により財政再建が後退する懸念によるもの
ドイツ・フランス・英国のCDSは低位で推移していますが、相対的に信用力の低いイタリア・スペインのCDSは高めに推移しています。
特に何らかのイベントが発生すると一時的に大きく上昇する傾向にあります。
ただし、欧州の主要国のなかでは相対的に信用力の低いイタリア・スペインですが、ユーロ圈で3位・4位の経済規模を誇ります。
よって、ギリシャなどとは異なり、実際にデフォルトするリスクはそれ程高くないと考えられます。(ギリシャのCDSについては下記にチャートを掲載しています)
2012年頃、そこに目をつけた投資家がイタリア・スペインのCDSを参照するクレジットリンク債を積極的に購入する動きがありました。
- クレジットリンク債についてはこちらを参照してください:クレジットリンク債
通常、イタリア・スペインはユーロ建て以外の国債をほとんど発行しませんが、クレジットリンク債であればドル建てや円建てでも組成が可能です。
条件は期間5年で5年のリスクフリーレートにCDSスプレッドを加えたものが利回りとなります。
例えば2012年前半の米ドルの5年国債利回りは1%前後、円の5年国債利回りは0%でした。
イタリアのCDSは500bpsですので、イタリアのCDSを参照したクレジットリンク債の利回りは、米ドル建て6%、円建て5%となります。
リスクはイタリアのデフォルトリスクです。
これはなかなか魅力的な条件と感じます。
2018年もイタリアのCDS上昇によりクレジットリンク債を組成する動きがありました。
2018年は2012年より米ドルの5年国債利回り(ベース金利)が3%前後まで上昇していたので、CDSのスプレッドは250bps程度ですが、出来上がりの金利が5.5%となり、米ドル建てで組成すると見栄えが良くなりました。
このようにCDSを使ったクレジットリンク債を組成することで、債券(Bond)としては発行されていない通貨の債券を作ることが可能となります。これはクレジットリンク債の存在意義の1つです。
次は主要新興国のCDSチャートです。
新興国(ブラジル・ロシア・トルコ・メキシコ)のCDSスプレッド推移
- 2014年後半~2015年前半にかけてロシアのCDSが上昇しているが、このころロシアは原油価格下落・地政学リスク・景気低迷により混乱していた。(2014年11月にロシアルーブルは変動相場制に移行)
- ロシアルーブルについての詳細はこちら:ロシアルーブル為替レート(円/ルーブル,ルーブル/ドル)長期推移(チャート・変動要因)
- 2018年にトルコのCDSが急上昇している。エルドアン大統領の強硬姿勢を背景に米国との緊張感が高まったことと、同じくエルドアン大統領が中央銀行に介入姿勢を見せたことがきっかけで金融市場が大きく混乱したことが要因となった。
新興国の場合はCDSの上昇と通貨の下落に高い相関性がみられます。
何らかの理由で国のリスクが高まると同時に通貨も売られるケースが多くなります。
よって、新興国通貨の見通しを分析する上でCDSをインディケーターの1つとして活用することもできます。
最後にデフォルト経験があるギリシャのCDSチャートです。
ギリシャのCDSスプレッド推移
- 2009年10月に財政の粉飾が発覚して以降、ギリシャの債務問題は世界の金融マーケットに影響を与えた
- 2012年3月、国際スワップデリバティブズ協会(ISDA)はギリシャのCDSが損失補填の支払いが発生する「クレジット・イベント(清算事由)」に該当すると発表した
チャートのスケールを見ていただいて分かる通り、とんでもない水準です。
CDSが上昇してもなかなか投資対象にはなりにくいと思われます。