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新興国通貨のポイント【現地通貨建てエマージング債券ETF(LEMB)を例に解説】

こちらのページでは「iシェアーズJPモルガン 現地通貨建てエマージング・マーケット債券ETF(LEMB)」を例に「新興国現地通貨建て債券(新興国通貨)」について幅広い情報を掲載しています。

ドル建て国債を発行している新興国は約60ヶ国あるのに対し、現地通貨建て(自国通貨建て)国債を発行している新興国は20ヶ国前後しかありません。

発行する国から見た場合、現地通貨安(自国通貨安)で返済負担が高まるドル建てよりも現地通貨建てで国債を発行したいと思うはずです。

その観点では現地通貨建て国債を発行できているということは、信用力において最低限の水準はクリアしていると言えます。

詳細は下記をご覧ください。

まず最初に「新興国現地通貨建て債券(新興国通貨)」のポイントをまとめましたのでご覧ください。

新興国現地通貨建て債券(新興国通貨)のポイントまとめ

  • 高い経済成長率
  • 人口は当面増加
  • 外貨準備高・格付等は改善傾向
  • 現地通貨建て(自国通貨建て)で国債を発行できている時点で最低限の信用力があると考えられる
  • 新興国通貨は原油価格・地政学リスク・高インフレに注意
  • 経済成長が必ずしも通貨高に結びつかない点は注意(通貨が強くなるには『高成長+低インフレ』が必要)

詳細は下記をご覧ください。

iシェアーズJPモルガン現地通貨建てエマージング・マーケット債券ETF(LEMB)の商品概要

実質的な運用会社

  • ブラックロック

投資対象

  • 新興国の現地通貨建て(自国通貨建て)国債
  • ベンチマーク:JPモルガン・ガバメント・バンド・インデックス-エマージング・マーケッツ(GBI-EM)グローバル・ディバーシファイド、キャップ15%フロア4.5%

信託報酬

  • 0.3%

新興国現地通貨建て債券(新興国通貨)のポイント・メリット

新興国の高い経済成長率

  • 過去、新興国は先進国と比較して高い実質GDP成長率となっており、今後も新興国の成長率は先進国を上回って推移する見通しとなっている
  • 先進国と新興国の実質GDP成長率の推移はこちら:世界の実質GDP成長率推移
  • 経済規模が大きくなることで経済の安定性も高まり、通貨にはプラスに働く

新興国の人口は増加

  • 先進国の人口は今後、ほぼ横ばいとなる見通しだが、新興国の人口は当面、増加を続ける見通し
  • 2010年は先進国12.3億人、新興国57.0億人だが、2050年には先進国12.8億人、新興国84.4億人となる見通し
  • 先進国と新興国の人口推移はこちら:世界の人口推計/人口ランキング
  • 人口増加は経済成長にプラスに作用する。結果として通貨の安定性を高めることとなる。

新興国の外貨準備高は大きく増加

新興国の政府債務は健全

  • 先進国と比較して新興国の政府債務対GDP比率は低くなっており健全性は高い
  • 主要国の政府債務対GDP比率はこちらを参照:主要国の政府債務残高(対GDP比)・政府純債務残高(対GDP比)
  • 政府債務に余裕があるということは景気悪化の際の財政出動余地があるということで、その結果として通貨の安定性に寄与することとなる。

新興国の格付けは上昇傾向

  • 新興国は経済成長と共に国の信用力も向上している
  • 主な新興国の格付けの推移についてはこちら:新興国マクロデータ推移
  • 2000年代前半と比較すると新興国のソブリン格付はかなり良くなっている。

自国通貨建て国債を発行できるという事は最低限のレベルはクリアしている

  • 新興国が発行する国債にはドル建てと現地通貨建てがある。ドル建てで発行した場合、償還時に現地通貨が安くなっていると返済負担が大きくなる。(自国通貨が1/2になると返済負担は2倍になる)一方、現地通貨建ての債券は通常、金利が高くなるため利払い負担が増える。
  • 発行する新興国からみれば多少利払い負担が大きくなっても、通貨安による返済負担は影響が大きく回避したいと考えるため、現地通貨建ての債券を発行したいと考えるのが一般的である。
  • しかし、債券を購入する投資家からみると、信用力が低く、あまりに不安定な通貨には投資できないということになる。
  • その為、現地通貨建てで国債を発行できている新興国は20ヶ国前後しかない。一方、ドル建てで国債を発行している新興国は60ヶ国前後ある。
  • これらから現地通貨建て国債を発行できているということは、信用力において最低限の水準はクリアしていると言える
  • 新興国のソブリン格付(自国通貨建て・外国通貨建て)はこちらを参照:世界の国債格付け(ソブリン格付け)一覧

新興国現地通貨建て債券(新興国通貨)のリスク・デメリット

高いボラティリティ

  • エマージング債券とエマージングの現地通貨は共にボラティリティ(変動率)が高く、マーケットが悪化した際には大きく下落する可能性がある

米ドル金利上昇や原油価格下落などに影響を受ける

  • 米ドルが金融引締め(利上げ)局面になると新興国から米国への資金還流がおこることで新興国通貨は不安定な動きとなりやすい
  • 新興国は天然資源が豊富な資源国であるケースも多く、原油をはじめとする資源価格が低迷すると通貨も売られるケースがある。ただし、インドなど非資源国は逆で、原油価格上昇が高インフレを招き、通貨安となるので注意。

政局不安・地政学リスク

  • 新興国は政治が安定してしていない国も多く、これが通貨安につながるケースがある。
  • 他国との衝突など地政学リスクが頻繁に発生する国の通貨も、それを理由に売られるケースがある。

高いインフレ率は通貨の実質的な価値を低下させる

  • 新興国通貨は一般的に高金利であるが、これインフレ率が高いことの裏返しでもある。多くの新興国はインフレ率が高くなりやすい。
  • 購買力平価の理論で考えた場合、インフレになると、その分、当該通貨の購買力が低下することになる。
  • よって、政策金利を大きく超えるインフレ率が長期間続くようなケースは注意が必要。
  • 為替レートと購買力平価の関係についてはこちらを参照:為替レートの予想・分析は実質金利差・購買力平価を活用

経済成長しても通貨が強くなるとは限らない

  • 1970年代~1990年代前半の日本の場合は経済成長と共に円(JPY)が強くなったことから、経済成長すると通貨が強くなると思われがちであるが必ずしもそうなるとは限らない。実際、多くの新興国では高い経済成長にも関わらず、通貨安となっている。
  • 日本の場合はインフレ率が低く推移しながら高い経済成長率を達成したことで円が強くなったと考えられる。低インフレによる経済成長がポイント。
  • さらに経常収支も通貨の長期推移には大きく影響を与える。日本は長期にわたり大幅な経常黒字であったことが円(JPY)が強くなったもう一つの要因である。
  • 経済成長と通貨の関係についてはこちらを参照:経済が成長しても通貨(為替レート)が強くなるとは限らない

リスクオフ時に売られる

  • 新興国通貨は投機的な資金が入りやすいことから、リーマンショックのようにマーケットがリスクオフの状態になると売りが殺到して下落する傾向がある

投資対象が同じ投信(類似ファンド)

  • GSエマージング通貨債券ファンド(ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント)
  • 三菱UFJ新興国通貨建て債券ファンド(三菱UFJ国際投信)



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