こちらのページでは2016年時点の投信の保有期間・運用資産残高の変化について忘備録として掲載しています。
まず最初に、関連する日経新聞記事の紹介です。
日経新聞の参考記事【2016/9/17:個人の投信保有7年ぶりに長期化、3年半に】
個人投資家が投資信託を保有する期間が長くなっている。8月末時点の平均保有期間は約3年半と7年ぶりの水準になった。少額投資非課税制度(NISA)の導入を機に長期投資を志向する個人が増える一方、金融庁が頻繁に新商品への乗り換えを促す金融機関への監視を強め、営業姿勢に変化がみられるようになってきた。
平均保有期間は投資信託協会のデータをもとに上場投資信託(ETF)を除く公募株式投信の年間の平均純資産残高を解約・償還額で割って算出した。2013年8月からの3年間で3年半とほぼ2倍になった。直近1年間の解約・償還額が平均残高の3分の1以下にとどまったことになる。
14年にNISAが始まって2年半が過ぎ、個人の投資行動に変化が出てきた。NISAは年120万円までの投資で得た売却益などが5年間、非課税になる。頻繁に乗り換えるとメリットが薄まるため、長期投資を促す効果がある。
NISAが始まってから32カ月連続で資金が流入している投信を調べたところ、上位には国内外の株式や債券に幅広く投資するバランス型投信が並んだ。長期保有に適した分散投資を手軽にできるタイプの投信が多い。
1つの商品を長く持てば頻繁に乗り換えるよりも購入する際の手数料といったコストを抑えることができる。個人投資家は「過去の運用実績を吟味して安心できる商品を選ぶ傾向が強まっている」(セゾン投信の中野晴啓社長)という。
投信の運用会社や証券会社など金融機関の営業姿勢への監視も強まっている。投信業界では既存の商品から新商品に頻繁に顧客を乗り換えさせて販売手数料を稼ぐ営業慣行が長らく問題とされてきた。金融庁は証券会社など金融機関に顧客の利益を最も重視する「受託者責任(フィデューシャリー・デューティー)」の徹底と投信販売の慣行是正を強く求めている。
今年になって新たに設定される投信の規模は小さくなった。1~6月の追加型株式投信の新規設定額は3615億円と前年同期から半減し、半期ベースでは13年ぶりの低水準となった。金融機関は新商品を次々に出して顧客を呼び込む手法を改めつつある。
保有期間の長期化は不安定な相場環境を映している側面もある。株安や金利低下は日本株投信や海外債券投信の運用利回りを悪化させている。東京都在住の個人投資家、溝口正さん(仮名、56)は「新たに投資したいと思える魅力的な商品がない」と話す。
1~8月の株式投信の購入額は前年同期比で約4割減った。大手運用会社は低コストで運用できる商品開発を急いでおり、大和証券投資信託委託は8日、販売手数料はゼロ、資産残高に応じて受け取る信託報酬も最低水準に抑えた指数連動型の投信の運用を始めた。
投信の保有期間(=回転期間?)は長期化
記事の図にもあるように投信の保有期間が3年で2倍と急激な伸びを見せています。
ただしこのデータでは、「平均残高 / 解約・償還額」を保有期間としていますがこれは実際の保有期間を表しておらず、俗にいう「回転期間」と考えた方が正確です。
ただし、実際の保有期間も伸びていることは間違いなさそうです。
理由として記事の中では次の2点を挙げています。
- 2014年からNISAが始まった影響
- 金融庁が販売会社に対する監視と指導を強めている
NISAの貢献度
NISAで購入する投信は長期投資が前提ですので保有期間の長期化に貢献していることは間違いありません。
しかし、日本証券業協会のデータによると2016年3月時点でNISAによる投信購入は4.8兆円と全体の8%でありそれほど大きなインパクトになっていないものと思われます。
(さらにもともと一般口座で投資していた投信を解約してNISA口座で投信を購入したケースが多く残高の増加にもそれほど貢献していないと思われます)
金融庁指導・監視の影響度
金融庁からの監視・指導の強化はかなり大きいようです。
どの証券会社も投信の乗り換え勧誘は最低でも1年を超えないとできないようです。
以前は3か月とか6か月で可能でしたが、金融庁からの指導で長期化しているようです。
また、これも金融庁からの指導によるものと思われますが、どの証券会社もラップ(ファンドラップ)に積極的に取り組んでおり、残高を急激に伸ばしています。
ラップの契約残高は2016年3月時点で5.8兆円と上記のNISAより大きな金額となっています。
日本国内で販売されているラップはほぼ全てがファンドラップですので投信の保有期間の長期化に貢献していると思われます。
- ラップに関する参考ページ:ラップ・ファンドラップ・ラップ型投信・バランスファンドについて
実は影響が大きい含み損の影響
上記のとおり今回のデータは直近1年間のデータをもとに「平均残高/解約・償還額=保有期間」としてしており、解約が減った為、保有期間が伸びたということになっています。
過去1年間のマーケットをみると為替レートは1ドル= 120円/ドルから1ドル=100円/ドルの円高となり、日経平均はピーク時20,000円から現在は16,000円前後まで下落しています。
これにより1~2年前に投資した投信の多くが含み損となっている状況です。
記事内のグラフをみると、投信の保有期間は大きく伸びていますが、投信の残高は過去2年くらいは減少しています。
利益が上がっていれば販売会社の営業マンも乗り換えを勧めやすく、顧客もそれに応じて売買を行いやすいですが、含み損の状態ではなかなかそのようにはできません。
実は投信の保有期間が長期化している1番の要因は皮肉にも「儲かっていないから」かもしれません。
NISA開始以降32か月連続で資金が流入している投信を紹介
記事内の表にあるように低コストのバランスファンド等が販売会社の都合でなく、投資家主体で残高を伸ばしていることは素晴らしいと思います。
少しずつですがネット証券や直販などで投資家が自ら考えて投信を購入する動きが出てきています。
投信の直販専門のセゾン投信は当初、苦しんでいたように見えましたが、かなり軌道に乗ってきたようです。
2本のファンドしか取り扱っていない会社ですが、2本とも32か月連続資金流入は立派です。1,000億円を超えたもの素晴らしいです。
- セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド:1,126億円
- 低コストで世界30か国以上に国際分散投資
- 株式:債券の比率は原則50:50
- セゾン資産形成の達人ファンド:327億円
- 低コストで世界30か国以上の株式に分散投資
- 原則、株式のみに投資するが株式市場が過熱していると判断した場合は一部債券にも投資する場合あり
これらが1兆円になるような時代になれば、日本の金融界も少しは前進したと言えると思います。
投資の初心者の方で、どの投信を選んで良いか分からないという方は、株式と債券に50%ずつ投資する「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」を選んでおけば良いでしょう。
関連ページ
日本の投資信託の歴史はこちらを参照!
様々な資産クラスのポイントはこちらを参照!
バランスファンドについての比較はこちらを参照!