「生産年齢人口」はそれぞれの国の経済成長において影響度が大きいと言われています。
世界各国の株式に投資をするうえで、「生産年齢人口」が増加しているのか減少しているのかを確認することは非常に重要です。
景気を占う上では、総人口よりも「生産年齢人口」の方が重要と言われています。
下記では主要国の「生産年齢人口」の推移と、生産年齢人口が今後どのように変化するかを示唆する「生産年齢人口比率」の推移を掲載しています。
「生産年齢人口比率」を確認することで近い将来「生産年齢人口」が減少に転ずる可能性を把握することができます。
詳細は下記をご覧ください。
生産年齢人口とは
「生産年齢人口」は経済活動の中心となる年齢層の人口を表し、具体的には15歳~64歳の人口です。
労働力として経済活動の中心となると共に、日本のように公的年金で賦課方式を採用している場合は高齢者を支える存在としても重要な役割を担っています。
国の長期的な経済成長を考える場合、総人口と同様に生産年齢人口の分析が重要です。
- 総人口の推移についてはこちら:世界の人口推計(人口予測)/人口ランキング
ちなみに、「生産年齢人口」以外の層は「従属人口(被扶養人口)」と呼ばれます。
また、「従属人口(被扶養人口)」は0歳〜14歳の年少人口と65歳以上の老年人口に分けられます。
そして、今後の「生産年齢人口」の推移を予想する上で、総人口に占める生産年齢人口の比率を表す「生産年齢人口比率」も併せて確認することでより精度の高い分析が可能となります。
下記に主要国の「生産年齢人口」と「生産年齢人口比率」の推移を掲載します。
まずは、生産年齢人口の推移です。
主要国の「生産年齢人口(15歳~64歳)」の推移
単位:百万人
出所:世界銀行
既に生産年齢人口の減少が始まっているのは日本・ユーロ圈・中国・ロシアです。
特に日本の生産年齢人口の減少幅が大きくなっていることが分かります。
生産年齢人口が減少すると、その国の経済成長にとってはマイナス要因となるので注意が必要です。
ちなみに日本の生産年齢人口のピークは1994年で、その後一貫して減少が続いています。(移民を含めた総人口は2011年から減少に転じています)
1994年のピーク時、生産年齢人口は8,720万人でしたが、2023年時点で7,280万人まで減少しています。
日本は出生数も長期的に減少傾向であるため、当面、生産年齢人口の減少は続きそうです。
- 日本の出生数の推移はこちらを参照:日本の出生数・死亡数・自然増減の推移 / 日本は人口維持をあきらめた?
ちなみにユーロ圏の生産年齢人口は2010年にピーク、中国の生産年齢人口は2015年にピークとなっています。
ユーロ圏や中国は今後の経済成長がスローダウンする可能性があるので注意しておく必要があります。
タイは2015年以降、横ばいとなっており、近い将来、生産年齢人口の減少が始まりそうです。
一方、先進国にもかかわらず米国・英国・オーストラリアの生産年齢人口は増加基調を維持しています。
総人口と同様に生産年齢人口も減少しないよう移民政策などでコントロールしている効果が表れています。
(人口や生産年齢人口の増減が景気に大きく影響を与えることをよく理解しているのでしょう)
インド・ブラジル・ナイジェリア・インドネシアなどの新興国は当面、生産年齢人口が増加していく見通しです。
多くの新興国の魅力として、総人口と共に生産年齢人口が増加していく点が挙げられます。
生産性(1人当たりGDP)の高まりと人口(および生産年齢人口)の増加で経済規模(名目GDP)が当面拡大する点は長期的に魅力となります。
- 新興国の1人当たりGDPの推移はこちらを参照:1人当たりGDPランキングの推移(1990年・2000年・2010年・直近) / 日本の地位は低下傾向
次に「生産年齢人口比率」の推移を掲載します。
主要国の「生産年齢人口(15歳~64歳)比率」の推移
単位:%
出所:世界銀行
生産年齢人口比率を分析することで、今後、生産年齢人口がどのように変化するのかを予想することができます。
生産年齢人口が増加していても生産年齢人口比率が低下している場合、近い将来に生産年齢人口が減少する前兆である可能性があります。
米国・英国・オーストラリア・タイがこれに該当します。
また、生産年齢人口比率が低下するということは総人口に占める現役世代の比率が低くなるということですので、景気の上でもややマイナスとなります。
ただし、生産年齢人口比率が低下しても、生産年齢人口が増加している間はそれほど大きなマイナス要因とはなりません。
- 主要国の人口ボーナスについてはこちら:主要国の人ロボーナスを分析【人口ボーナス期の定義・人口ボーナス指数の推移】
- 主要国の人口ピラミッドについてはこちら:主要国の人口ピラミッド 2015年・2050年比較
インド・ブラジル・インドネシア・ナイジェリアは生産年齢人口比率も上昇基調である為、人口動態的には当面、追い風の状況が続きそうです。
一方、日本の生産年齢人口比率は1991年〜1992年にピークで69.8%となりましたが、その後は低下トレンドとなっています。
2018年に初めて60%を下回る水準まで低下し、今後も低下が継続しそうです。
この数字を見ただけでも日本において賦課方式の年金制度を継続していくのは厳しいと感じます。(ナイジェリアの生産年齢人口比率が低いのは15歳未満の年少人口が多いことが要因で、65歳以上の老年人口が多い日本とは状況が全く異なります)
最後に、総人口や生産年齢人口の推移は経済の最もベーシックな部分であり非常に重要なデータです。
しかも、将来の予想データですがそれほど大きく外れることはありません。
かなり正確な予想データですので、活用しない手はないと思います。