こちらのページでは2018年11月時点の米国ハイイールド債・新興国国債・投資適格社債を取り巻く環境について忘備録として掲載しています。
同じ分析を2017年9月に行いましたが、当時と比べてベース金利(国債金利)・スプレッドが共に上昇して最終利回りは大きく上昇しています。
最新の米国ハイイールド債・新興国国債・投資適格社債の最終利回りとスプレッドは下記を参照してください。
約1年で米国ハイイールド債・新興国国債・投資適格社債の利回りが大きく上昇
2017年10月4日に「2017年9月のクレジット市場はやや割高か/米国ハイイールド債・新興国国債・投資適格社債」という記事を掲載しました。
その後の1年2ヶ月で米国ハイイールド債・新興国国債・投資適格社債の金利環境がかなり変化しましたのでアップデートします。
前回のタイトルは「やや割高」でしたが、今回は「中立~やや割安」としました。
前回の記事ではベース金利が最低水準で金利上昇リスクがあることと、スプレッドも過去の水準でみるとかなり割高でワイドニング(拡大)するリスクがあるとコメントしました。
結果的にその通りとなり、その後ベース金利(国債利回り)が上昇し、スプレッドがワイドニング(拡大)しています。
米国ハイイールド債・新興国国債・投資適格社債の2017/9/29と2018/11/30のデータを掲載します。
ベース金利(国債利回り)が上昇し、スプレッドがワイドニング(拡大)しているのが確認できます。
その結果、最終利回りの上昇幅は米国ハイイールド債が1.77%、新興国国債が1.70%、投資適格社債が1.28%とかなり大きくなっています。
- 債券のスプレッドについての詳細な説明はこちらをご覧ください:社債のスプレッドとデュレーションについての分かり易くて詳しい説明
下記では2018年11月の米国ハイイールド債・新興国国債・投資適格社債の水準が過去と比較してどれくらいの水準にあるかを確認します。
米国ハイイールド債・新興国国債・投資適格社債の利回りとスプレッド(長期チャート)
2018年11月時点の米国ハイイールド債・新興国国債・投資適格社債について分析します。
米国ハイイールド債・新興国国債・投資適格社債の「最終利回り」と「5年米国債利回りに対するスプレッド」の長期チャートを掲載します。
- 米国ハイイールド債:Bloomberg Barclays us Corporate High Yield Statistics Index
- 米ドル建て新興国国債:Bloomberg Barclays EM USD Aggregate Statistics Index
- 米ドル建て投資適格社債(BBB格):Bloomberg Barclays us Agg Baa Statistics Index
それぞれのチャートの青いラインは最終利回りを表しています。
2017年9月頃はいずれも過去最低水準でしたが、上記でも触れたとおり過去1年程でかなり上昇しており、リーマンショック前にも経験した水準となっています。
灰色のチャートはいずれも5年米国債の最終利回りを表しています。
こちらも過去最低水準から一定の上昇を見せています。
赤い棒グラフは5年米国債に対するスプレッドを表しています。
スプレッドは2018年10月・11月に大きくワイドニング(拡大)しており、2004年~2006年や1990年代の一時期と比較しても高い水準となっています。
ちなみに前回、「2017年9月のクレジット市場はやや割高か/米国ハイイールド債・新興国国債・投資適格社債」で詳しく掲載していましたが、平均格付は米国ハイイールド債がB+~BB程度、新興国国債がBB+~BBB-程度となっています。
上記のチャートから総合的に分析します。
債券ごとに若干異なりますが、2000年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショック、2011年の欧州債務危機、2015年の原油急落などショックが起こった時と比較すると割安とは言えません。
ただし、2003年~2007年のような景気拡大局面の時と比較するとスプレッドは割安となっています。
また、昔のようにベース金利である5米国債利回りが5%を超えて上昇していく可能性は低くなっています。
これらを総合すると2018年11月現在の米国ハイイールド債・新興国国債・投資適格社債は中立か若干割安な水準と言えます。
そして、例えば米国ハイイールド債では5年米国債利回りに対するスプレッド(2018/11/30現在4.41%)が5%を超えてくると、より割安感が出てくると思われます。
米国ハイイールド債・新興国国債・投資適格社債についての商品性や投資のポイントはこちらに詳しく掲載されています!