こちらのページでは2017年9月時点の米国ハイイールド債・新興国国債・投資適格社債を取り巻く環境について忘備録として掲載しています。
2017年9月頃はベース金利(国債金利)とスプレッドがともに低水準で米国ハイイールド債・新興国国債・投資適格社債の利回りはいずれも過去最低レベルの水準でした。
- 2018年11月時点の情報はこちらを参照:2018年11月のクレジット市場は中立~やや割安 / 米国ハイイールド債・新興国国債・投資適格社債
米国ハイイールド債・新興国国債・投資適格社債の利回りとスプレッド(長期チャート)
2017年9月時点のクレジット市場の水準を確認します。
代表的なクレジット商品である米国ハイイールド債・新興国国債・投資適格社債の最終利回りと5年米国債対比のスプレッドを長期チャートで紹介します。
まずそれぞれのチャートの青いラインは最終利回りを表していますが、米国ハイイールド債・新興国国債・投資適格社債のいずれもが2017年9月が過去最低水準となっています。
緑色のチャートはいずれも米国5年債の最終利回りを表しています。
赤い棒グラフは5年米国債対比のスプレッドを表していますが、こちらは2004年~2006年や1990年代の一時期と比較すると2017年9月時点の方が僅かですが高くなっています。
クレジット市場の環境を表すのは各債券のスプレッドとなりますので、2017年9月時点ではクレジットバブルと呼ばれたリーマンショック前の2004年~2006年の時より過熱しているわけではないようです。
ただし過去の推移からここから更にスプレッドがタイトニング(縮小)していく余地はかなり限定的と考えられます。
米国ハイイールド債・新興国国債・投資適格社債の利回りが過去最低水準となっているのはベース金利となる米国債の利回りが歴史的低水準であることと、上乗せ金利であるスプレッドが過去最低に近いところまでタイトニングしていることが要因と言えます。
- 債券のスプレッドについてはこちらに詳細な説明があります:社債のスプレッドとデュレーションについて
米国ハイイールド債と新興国国債の比較 / 新興国国債はクレジットの改善で利回りが低下してきた
米国ハイイールド債と新興国国債の最終利回り(青いチャート)を比較すると、2000年以前は新興国国債の方が利回りが高くなっていましたが、現状ではハイイールド債の方が利回りが高くなっています。
例えば1995年3月は米国ハイイールド債の利回りが10.86%に対し、新興国国債の利回りは18.21%でした。
これが2017年9月時点では米国ハイイールド債の利回りが5.46%に対し、新興国国債の利回りが4.5%となっています。
これは新興国が発展することで国の信用力が高まり、国債の格付けが引き上げられたことが要因と思われます。
投信やインデックスの格付データを確認すると2017年9月時点で米国ハイイールド債はB+~BB程度、新興国国債はBB+~BBB-程度の格付けとなっています。
クレジット投資の観点からみると1990年代に新興国国債(米ドル建て)に投資していれば最も大きなリターンを得られたことになります。
高いクーポンに加え、債券価格の値上がり益も大きく享受できたということになります。(もちろん米国ハイイールド債も投資適格社債も過去最低水準の利回りですので債券価格の値上がりを享受できていますが、相対的には新興国国債のリターンが最大となっています)
2017年10月以降のクレジット投資について
現状はベース金利が過去最低水準で今後、金利上昇リスクがあります。
スプレッドも過去の水準からみるとかなり割高な水準で今後、ワイドニングするリスクがあります。
これらを総合すると特にハイイールド債や新興国国債への投資は慎重に検討する必要がありそうです。
景気が回復した場合はベース金利が上がるリスクがある一方、スプレッドのタイトニング余地は限定的です。
景気が悪化した場合はベース金利が低下しますが、それ以上にスプレッドがワイドニングして債券価格が下落すると思われます。
上記のチャートを見ても分かりますが、例えばハイイールド債であれば少なくとも最終利回りで7%以上、スプレッドで5%以上は欲しいところです。
上記で使用したデータは下記のインデックスを使用しています。
- 米国ハイイールド債:Bloomberg Barclays us Corporate High Yield Statistics Index
- 米ドル建て新興国国債:Bloomberg Barclays EM USD Aggregate Statistics Index
- 米ドル建て投資適格社債(BBB格):Bloomberg Barclays us Agg Baa Statistics Index
米国ハイイールド債・新興国国債・投資適格社債の商品性や投資のポイント等はこちらを参照してください!