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銅(Copper)価格は景気や株価の先行指標として有効か?

巷では景気・株価の先行指標として「ドクターカッパー」とも呼ばれる銅(Copper)価格。

こちらのページでは実際に銅価格が株価の先行指標として機能するのかどうかを検証しています。

結論から申し上げますと、常に銅価格が株価の先行指標とはなりませんが「銅価格が下落トレンドから底をつけた後」などは先行指標として有効な場合もあります。

下記では「銅価格と世界株(MSCIワールド)」「銅価格と中国株(中国CSI300)」の比較チャートも掲載していますので参考にしてください。

まず、銅価格についての解説から始めます。

銅(Copper)は身の回りの様々な製品で使用されている

銅は電気伝導性が高く、自動車、パソコン、携帯電話、住宅、産業用機械などの生産に欠かせない存在となっています。

今後、IOTが進化したり、電気自動車が普及すると、飛躍的に需要が高まるとも予想されています。

ちなみに銅の生産量はチリが世界1位で世界シェアは30%以上となっています。

住宅の建設や自動車販売、エレクトロニクス製品の販売が上向く場合、事前に銅を大量に仕入れて生産を増やすことから、銅は景気や株価に先行すると言われます。

巷では景気や株価の先行指標として有効性が高く、ドクター・カッパー(銅)とも呼ばれています

ちなみに銅の国際的な価格の指標となるのはロンドンのLME銅価格です。

LME(London Metal Exchange、ロンドン金属取引所)で取引される銅価格で1トン当たりの米ドル価格で表記されます。

理論的には銅価格が景気や株価に先行するということは理解できますが、実際に過去の推移がどうなっていたか下記に掲載します。

銅価格は株価の先行指標と言えるか検証する(銅価格と世界株の比較チャート)

LME銅価格とMSCIワールド指数の比較チャート

上記はロンドンのLME銅価格とMSCIワールド指数の比較チャートです。

銅価格が株価に対して先行性があるか否かと言われると、答えとしては「先行性はない」と言わざるを得ません。

もちろん、先行性が認められる部分も多くありますが、逆に全く相関性がないと言える部分もかなりの確率で発生してます。

例えば1992年~1993年頃や1995年~2000年頃、2011年~2016年頃は銅価格がかなり大きく下落していますがMSCIワールドインデックスは逆に大きく上昇しています。

これだけ大きく逆の動きになっていると、なかなか先行指標として有効であるとは言い難い状況です。

銅が上昇している局面を見ても株価に先行しているというより、株価と同じような動きになっています。(株価は景気に先行すると言われていますので、そういう意味では銅価格は株価には先行しないが景気にはある程度先行しているとも言えます)

銅が下落している局面でも、先に株価が下落したり、銅が下落しても株価が上昇したりしています。

よって、投資を考える上では銅価格を先行指標として見るのは少し無理があるということになります。

ただし、少し無理があるかもしれませんが1つだけ先行指標として役に立つかもしれない部分があります。

それは銅価格が下落トレンドから底をつけ、上昇に転じた後はほぼ全ての局面で株式市場が上昇しています。

銅価格が下落トレンドから底を付けたタイミングとしては1993年10月、2002年9月、2008年12月、2016年1月があげられますが、いずれもその後、株式市場は上昇しています。

よって、銅価格が下落トレンドから反転した場合には株式に投資するタイミングとして良いということが言えます。

銅価格と中国株(中国CSI300)の比較チャート

中国は銅の最大消費国であり、全世界の消費量の約50%を占めています。

そのため、銅(Copper)は中国株や中国経済の先行指標とも言われることがあります。

下記では銅価格と中国株(中国CSI300)の比較チャートを掲載しております。

中国CSI300指数は上海証券取引所および深セン証券取引所に上場している全A株のうち、時価総額および流動性の高い300銘柄で構成される指数です。

銅価格と中国株(中国CSI300)の比較チャート

2005年~2007年は銅価格が中国株に先んじて上昇しています。

一方、リーマンショック時の下落の際やその後のリバウンド局面では株式がやや先行していますので銅価格の先行性は認められません。

その後も銅価格が先行する場合とそうでない場合がありますが、相関性はかなり高いことは見てとれます。

しかし、これを見る限り、銅価格が中国株の先行指標とは言えません。

ただし、相関性は高いので中国株を分析する上での材料の1つにはなると考えられます。

上記の世界株式(MSCIワールド)と同様に銅価格は株価の先行指標とはならないという結論になりました。

(ただし、株価とほぼ同じタイミングで動いていることから景気の先行指標にはなっているはずです。)

株価の先行指標としては銅も含まれる「CRB原材料価格指数(CRB Raw Industrials)」の方が適していると考えられます。

CRB原材料価格指数(CRB Raw Industrials)は株式の先行指標として一定の先行性が認められています。

CRB原材料価格指数(CRB Raw Industrials)についてはこちらを参照してください!

銅が「ドクターカッパー」として株価や景気に先行するかをまとめました

上記の世界株(MSCIワールド)と中国株(中国CSI300)との比較の結果をまとめると下記の通りとなります。

  • 銅は株価の先行指標とはならない(ドクターカッパーはヤブ医者?)
  • ただし、銅価格と株価が大きく下落した後、銅価格が先に反発した場合は、先行指標となりやすいので株式の買いタイミングとなる
  • 銅は景気には先行する(株価も景気に先行するので銅価格は株価に先行しない)
  • 株価に先行する指標はCRB原材料価格指数(CRB Raw Industrials)の方が適している

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