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資産クラスのポイント

CoCo債のポイント【ニッセイ世界ハイブリッド証券戦略ファンドを例に解説】

こちらのページは「ニッセイ世界ハイブリッド証券戦略ファンド(アドバンスド・インカム)」を例にCoCo債のポイントやリスクを掲載しています。

大部分は「CoCo債」全般に共通する内容ですので、「CoCo債」の見通しを分析する上で活用いただけます。

CoCo債のポイントをまとめると下記の通りです。

  • CoCo債はいわゆるAT1債(Additional Tier1債)の一種
  • ドル建てのCoCo債は主に欧州の大手金融機関が発行
  • CoCo債は自己資本比率がトリガー(5.125% or 7%)にヒットすると元本削減や株式転換が行われる債券
  • 普通社債と比較して相対的に高い利回り
  • 金融機関の自己資本比率は上昇傾向でトリガーヒットの可能性は高くない
  • 繰り上げ償還(ファーストコール)のスキップには注意【スキップのリスクを軽減するにはスプレッドが大きい銘柄を選択】

詳細は下記をご覧ください。データや内容は随時、更新しています。

まず最初にニッセイ世界ハイブリッド証券戦略ファンド(アドバンスド・インカム)の商品概要から紹介します。

ニッセイ世界ハイブリッド証券戦略ファンド(アドバンスド・インカム)の商品概要

実質的な運用会社

  • ピムコ(委託会社:ニッセイアセットマネジメント)

投資対象

商品組成上の特徴

  • 3コースあり
    • 為替ヘッジあり
    • 為替ヘッジなし
    • 通貨プレミアムコース

主な販売会社(販売手数料)

  • 楽天証券:5,000万円未満1.65%、2億円未満1.375%、5億円未満0.825%、5億円以上0.22%(IFA一律1.65%)
  • SBI証券:5,000万円未満1.65%、2億円未満1.375%、5億円未満0.825%、5億円以上0.22%(IFA一律1.65%)

信託報酬

  • 2.0185%

CoCo債のポイント・メリット

CoCo債について

  • CoCo債(Contingent Convertible Bonds:偶発転換社債)とは、発行体である金融機関の自己資本比率があらかじめ定められた水準を下回った場合などにおいて、元本の一部または全部が削減される、または、強制的に株式に転換されるなどの仕組み(トリガー)を有する証券。
  • バーゼルⅢに対応した新型の劣後債で、いわゆるAT1債(Additional Tier1債)の一種である。
  • このような特性から、CoCo債は同一発行体の普通社債や劣後債などと比べて利回り水準が高い。
  • さらに、足元ではCoCo債は比較的新しい資産であり、一般的な社債などに比べて取引参加者が少なく流動性の面ではやや劣る。これが発行体の信用力の割にはCoCo債の利回りが高い要因の1つとなっている。(流動性プレミアム)
  • CoCo債を発行するのは欧州や日本の銀行である。米銀が発行するバーゼルⅢ対応の債券はCoCo債形式ではない(優先株や優先証券を採用)。BISの自己資本規制の実務は各国の中央銀行に委ねられていることから対応が異なっている。
  • ドル建てCoCo債の発行体は欧州の大手金融機関が中心

CoCo債のトリガーヒットの可能性は低い

  • 多くのCoCo債の自己資本比率のトリガーは5.125%か7.0%が一般的(ユーロ圏は5.125%でイギリスやスイスは7%となっているケースが多い)
  •  CoCo債の自己資本比率のトリガーは「普通株式等Tier1(CET1)」で判定される
  • 「普通株式等Tier1(CET1)」はTier1からその他Tier1を控除したもの(普通株式等Tier1=Tier1-その他Tier1)
  • その他Tier1は「Additional Tier1」(AT1)とも呼ばれる(そのためCoCo債はAT1債と呼ばれることもある)
  • 主要銀行のTier1比率と普通株式等Tier1比率はこちらを参照:世界の大手銀行のTier1比率と普通株式等Tier1比率(CoCo債で重要)
  • 大手銀行の自己資本比率に関してはリーマンショック以降、規制が厳しくなったこともあり、大幅に上昇しており、CoCo債の元本削減トリガーにヒットする可能性はかなり低いと考えられる。
  • 各行ともリーマンショック並みのパニックで数兆円規模の損失を計上してもトリガーにはヒットしない水準となっている

CoCo債を毀損させるわけにはいかない

  • バーゼルⅡ対応劣後債の時も同様であったが、自己資本規制の為、金融機関にとっては今後もCoCo債は必ず発行していかなければならない債券である。
  • トリガーにヒットし一部削減等が一度でも行われると今後CoCo債を発行できなくなると予想されることから、あらゆる手段を使って回避していくことが予想される

実質的な安全性は格付けの水準より高い

  • CoCo債の格付けは同じ発行体のシニア債より数ノッチ低くなるため、投資適格ではないBB格以下のものも多いが、シニア債ベースではどこもBBB格以上であり、債券の「顔」は非常に良い。

ニッセイ世界ハイブリッド証券戦略ファンド(アドバンスド・インカム)のポイント・メリット

投信で購入することで流動性を確保することが可能

  • 流動性の面に関しては個別の債券(CoCo債)を購入した場合、マーケットが混乱した際に売却しようとすると予想以上に価格が変動してしまうリスクがあるが、投資信託を経由して間接的に購入することでこのリスクは軽減できる。
  • さらにアドバンスト・インカムの場合は社債等にも分散投資し、解約に対する流動性リスクにも配慮している。

アドバンスド・インカムの運用は債券ファンドの雄であるピムコ

  •  ピムコは債券専門の運用会社。
  •  債券のアクティブ運用残高は約200兆円で圧倒的世界No1
  •  マクロ経済予測と高い分析力に定評あり
  •  1987年~2006年までFRB議長を務めたアラン・グリーンスパンが2007年~2012年にかけてピムコと経済分野のコンサルティング契約を結びアドバイザーを務めた
  • 同様に、2006年~2014年までFRB議長を務めたベン・バーナンキが2015年にピムコのアドバイザーに就任した
  • バーナンキ以外では英国元首相・元財務大臣のゴードンブラウン、欧州中央銀行(ECB)前総裁のジャンクロード・トリシェもアドバイザリーボードに名を連ねており米国・英国・欧州という主要債券マーケットのキーマンの情報を運用に活用している
  • ハイブリッド証券に関しても運用会社の中では最高レベルのノウハウを有している

CoCo債のリスク・デメリット

金利上昇リスク

  • アドバンスド・インカムのデュレーションは3年~4年とやや金利上昇リスクがある
  • 一般的にCoCo債のクーポンは固定金利であるため、金利上昇リスクがある

ボラティリティがやや大きい

  • CoCo債は投資適格債やハイイールド債と比較すると市場規模が小さく取引参加者もある程度限定されているため、やや値動き(ボラティリティ)が大きい。

利払いが行われない可能性も

  • CoCo債は一般の債券と同様、クーポン(利率)が定められている。
  • しかし、シニア債の場合は利払いをしなければデフォルトになるのに対し、CoCo債の場合は株式の配当と同様、利払いをスキップしてもデフォルトにはならない。
  • よって、一般的には可能性は低いと考えられるが、利払いが行われない可能性が通常の債券よりも高いと考えられる。
  • 実際に利払いがスキップされるとCoCo債の価格は下落すると考えられる。

繰り上げ償還がスキップされる可能性あり(スキップのリスクを軽減するにはスプレッドが大きい銘柄を選択)

  • CoCo債を含む劣後債は通常、繰り上げ償還条項が付与されており、永久劣後債であっても最初の繰り上げ償還日(ファーストコール)に償還されることを想定して投資家は購入している。
  • しかし、発行後に信用リスクが拡大した場合など、ファーストコールで償還されないケースがまれにある
  • その場合、債券価格は大きく下落する可能性がある
  • CoCo債の発行時より繰り上げ償還日(ファーストコール)時点のクレジットが悪化している場合、繰り上げ償還がスキップされる可能性が高まる
  • その為、同じ発行体のCoCo債でもスプレッドが大きい銘柄を選択することで、繰り上げ償還をスキップするリスクを軽減できる。(CoCo債はスプレッドのステップアップが認められていないので、スプレッドは発行時もファーストコール以降も同じになる)
  • 劣後債の償還スキップについては「劣後債の期限前償還見送りについて考える(スタンダードチャータード銀行劣後債)」を参照(過去に初回の繰り上げ償還をスキップした事例も掲載)

CoCo債の銘柄事例(ドイツ銀行・クレディスイス)

ここではCoCo債の発行事例を掲載します。

実際に発行された銘柄の条件を確認することでCoCo債の理解が深まります。

ドイツ銀行のCoCo債

  • 発行体:ドイツ銀行
  • 通貨:米ドル
  • 発行日:2014/11/21
  • 償還期限:永久債(2025/4/30から5年ごとに繰り上げ償還可能)
  • クーポン:当初7.5%固定、2025/4/30以降は5年スワップレート+5.003%
  • 格付け:B+(S&P)
  • トリガー:普通株式等Tier1比率5.125%
  • ユーロ圈の金融機関が発行するCoCo債のトリガー条項は普通株式等Tier1比率(CET1比率)で5.125%が一般的(BNPパリバ、ソシエテジェネラルなど)
  • ドイツ銀行は2017年頃から経営不振により、何度かCoCo債は下落した。配当のスキップなども噂されていたが、結果的に問題なく、2019年にはCoCo債の価格も回復した。
  • 当該債券についての詳細はこちら:ドイツ銀行の事例でAT1債(CoCo債)の理解を深める

クレディスイスのCoCo債

  • 発行体:クレディスイス
  • 通貨:米ドル
  • 発行日:2019/8/21
  • 償還期限:永久債(2026/8/21から5年ごとに繰り上げ償還可能)
  • クーポン:当初6.375%固定、2026/8/21以降は5年米国債利回り+4.822%
  • 格付け:BB-(S&P)
  • トリガー:普通株式等Tier1比率7.0%(イギリスやスイスなどユーロ圏以外の欧州金融機関が発行するCoCo債のトリガー条項は普通株式等Tier1比率で7.0%が一般的。RBS、バークレイズ、スタンダードチャータード銀行、UBS、クレディスイスなど)
  • 2023年3月、『例外的な政府支援』が行われたとスイス当局が認定したことで、クレディスイスが発行するすべてのCoCo債が無価値となった

関連ページ

日本版CoCo債についてはこちらをご覧ください!

CoCo債と同じく自己資本のその他Tier1にカウントされる米国優先株式(優先証券)についてはこちらをご覧ください!

金融機関が発行する債券の比較はこちら!

一般企業が発行する劣後債についてはこちらをご覧ください!

TLAC債についてはこちらをご覧ください!

債券市場の全体像はこちらを参照!



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